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先生と豚

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ある高校生の日常に舞い込んだ非日常を描いた短編ミステリー?ぽいものです。拙い部分もありますが、読んで頂けたら幸いです。
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2020年8月の記事一覧

先生と豚12

先生と豚12

 紅林が捕まったことは誤算だった。柿崎は朝の職員会議でそのことを知った。
 会議で紅林の処分は報告されなかったが良くて自宅謹慎一週間、悪くて少年院に数日拘束されるといったところだろうか。
(まいったな)
 柿崎は軽く頭を掻く。
 共犯者が捕まっても尚、冷静でいられるのは柿崎の性格ではなく紅林の罪状が万引きであることによるものだった。もちろん、この万引きも柿崎の作戦の一部になっていたのだが、まさか高

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先生と豚11

先生と豚11

 翌日、銀行の職員が金庫を開けると現金が詰められていた砂袋が消えてていることに気づき、事件は明るみになった。すぐさま警察が呼ばれ調査等がなされた。当夜警備にあたっていた数人が事情聴取を受け、行員に扮した人物が現れたことが分かり、その人物を犯人であると警察はほぼ断定して捜査に取り掛かる。幸い、犯行の様子は監視カメラに記録されており、それによって犯人は複数いることが判明した。しかし画像が荒く顔までは分

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先生と豚⑩

先生と豚⑩

 甲高い機械音が鳴った。留守電の録音開始音に似ていると紅林は思った。同時にこの音がエラーを表していたら終わりだなとも考える。
幸い、予想に反して扉のロックが外れる音が重々しく響いた。同時に空気が勢いよく漏れ出すような音がした。
(開いた……!)
 紅林は厳ついドアノブを思い切り引いて金庫のなかを見る。非常灯の明かりがついた凡そ二十畳ほどの空間には鉄製の棚にズラリとアタッシュケースが並び、その横に砂

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