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ダイヤグラムと関数のはなし

≪関数とダイヤグラムの関係≫

 小学校5年生くらいになると、y=ax なんて関数が出てきたりして、グラフを書かされたり、なんだかよくわからんなあ、という子どもたちが出てきたりするのではないでしょうか。
 大好きな電車のことはよくわかるけど、算数の関数は苦手という子どもたちには、両者は身近な話題であることを感じてもらえるとよいのかなあと考えたりします。
 早速、ダイヤグラムと関数の関係について、一緒に考えていきましょう。

 ダイヤグラムとは、何度か触れているように、鉄道の走る距離と時間をグラフ化したものです。
 算数の関数でいうところの、x軸が時間(単位:h(時間(hourのh)))y軸が距離(単位:㎞)を表しています。
 そして肝心の、aは算数では傾きという表現をしますが、ダイヤグラムでは速度(単位:㎞/h(時速))を表します。

距離と時間の関数

 上記の表では、1時間(x(h))経過する間に、100㎞(y(㎞))進んだことになります。
 したがって、この列車の時速(a(傾き))は a=y ÷ x = 100 ÷ 1 = 100 となり、時速100(㎞/h)であることがわかります。
 ちなみに、余談ですが、速度を求める公式(距離÷時間)がわからなくなってしまったという場合も、速度の単位(㎞/h)を見れば、距離÷時間となっていることがわかります。
 このことから、ダイヤグラムでは、a(傾き)が大きい(グラフの傾斜がきつい)ほど、列車の速度が速いことになります。
 したがって、以前、「ダイヤグラムと時刻表のはなし」の中で触れた、速度の遅い列車が速い列車に追い付かれてしまうという現象は、傾きの緩い速度の遅い列車に傾きのきつい速度の速い列車のグラフが交わってしまうということです。
 実際にそのようなことが起こってしまわないように、速度の遅い列車は程よいタイミングで待避施設のある駅で、速度の速い列車に追い抜かれるよう待避をすることになります。ダイヤグラムを見る上では、重要なポイントになります。

≪ダイヤグラムからわかる列車の速度のはなし≫

 実際の時刻表からダイヤグラムを書き起こし、列車の速度比較をしてみましょう。
 比較するのは、JR東海道本線(JR京都線)の新大阪-京都間で、新大阪-京都間ではノンストップの特急サンダーバード号と、主要駅各駅に停車する快速列車の比較を行います。
 先に説明しておきますと、一口に速度といっても、速度の種類があることに注意が必要です。
 まず一般的に思い浮かぶのが、列車が走行している時に、一番スピードが乗っている時の速度です。これは、言葉通り、「最高速度」と言います。
 現代の列車では、特急電車であろうが、普通列車であろうが、最高速度に多少の差異はありますが、そこまで大きな差はありません。しかも、最高速度の比較は単に車両の性能比較であり、わざわざ時刻表を繰ってダイヤグラムを書き起こしてまでしなくても、車両の性能表をどこかで確認できればよい話であって、時刻表の話とはなんら関係のない話となってしまいます。
 私たちが比較したいのは、「表定速度」と呼ばれる速度の話です。これは列車が駅に停車している状態から加速して、表定速度を測定したい目的の駅に到着するまでの距離と時間から算出する速度のことで、間に、他の駅に止まったり、徐行したりした時間も含めて計算する速度のことで、わかりやすく言えば、「平均速度」のことです。

早速比較してみましょう。
 比較するのは以下の2列車とします。
 ●特急サンダーバード13号(4013M) 大阪発金沢行
 ●快速列車(738T) 上郡発野洲行

 比較する区間は新大阪駅を出発してから京都駅に到着するまでの間とします。新大阪から京都までの距離は21㎞です。
 まず特急から計算します。
 新大阪9時46分発[①]、京都着10時9分[②]。かかった時間は23分です。
 表定速度は 21(㎞) ÷ 23/60(h(時間)) = 55.2(㎞/h)

 次に快速列車を計算します。
 新大阪9時43分発[①]、京都着10時21分[②]。かかった時間は38分です。
 表定速度は 21(㎞) ÷ 38/60(h(時間)) = 33.3(㎞/h)

 ノンストップの特急のほうが20(㎞/h)以上早いことがわかりました。ダイヤグラムの傾きも、早い特急のほうが急角度であることがよくわかります。
 ちなみに、ダイヤグラム上で茨木駅の手前で両列車が交差しているので追突してしまっていますが、この区間は複々線となっており、同じ方向に進む列車用に2本のルートが確保されています。
 早い列車が外側を走りますが、走行しながら遅い列車が追い抜かれる様子が観察できる箇所となっています。

 こんな視点から時刻表を眺めると、ただの時刻の羅列が走っている列車のイメージになり、なんだかワクワクしてきます。
 みなさんもそんな楽しみ方をしていただければ、電車に乗っている時間が少し楽しくなるかもしれませんね。

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