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#369【東京】触れて、知って、解像度を上げていく

ごきげんよう。Anne(@feifei_anne)でございます。

突然ですが、みなさんは、こんな経験をしたこと…ありませんか?

「とある土地出身の友人ができ、今まで目にも留めてこなかったその土地の情報がよく目に入るようになった」
「名産地と呼ばれる場所で地元の美味を食べてから、野菜や果物の産地を気にするようになった」
「食べ比べや聴き比べなどをしてから、細かな違いに気配りができるようになった」

などなど‥‥上記の例は全て意識的に「知ったこと」によって起きた変化について表しています。

今回は、最近あった”「知ったこと」によって起きた変化”について、改めて実感する出来事があったのでそのお話をしたいと思います。

江戸切子ってお持ちですか?

”江戸切子”と言えば、きっと皆さん頭の中に思い浮かべる赤地か青地のガラスにスラっと入った美しい模様。大切なお酒を飲む際のお供に使っていたり、プレゼントとして選んでみたり、はたまた引き出物などで頂いたことがあったり‥‥少し特別な食器として捉えている方が多いかもしれません。

かく言う私も例外ではなく、素敵ではあるけれど、ちょっぴり高級で普段使いには向かない、手が出しにくい「高嶺の花」のような存在に感じていました。

そんな中、写真コミュニティで知り合ったぶーのーさんのご実家である清水硝子さんへ、江戸切子体験をさせていただけるご縁を頂きました。

MとWのメンバーと共に、清水硝子さんの工房を訪れたとき、たぶん私の江戸切子に対する解像度はSD(アナログテレビ放送の標準画質)程度。江戸切子を見れば「あ、これは江戸切子だな!」と、認識をできるくらいのレベルでした。光を受けてキラキラと輝く文様を、ただただきれいだなあと感心するばかり。

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まずは、ショールームで工房から生まれた数々の切子を見つつ、江戸切子とは?と、簡単なレクチャーを受けたり、体験をする際のガラスの色を決めたりするところから体験は始まっていきました。

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360度どこから見ても美しい!

私は青色を選びましたが、これは難しいぞおと言われ、はじまる前からドキドキ…。この色の濃さが重要なカギを握ってくるとのことなのですが…

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今回体験をするのはコップの底の部分に菊の紋を入れていく工程。
目安となるあたりを引いていきます。そのあたりの引き方からもそれぞれの性格が見えてくると言われ、三者三様の我々は和気あいあいと準備を進めていきました。本当に、線一つ引くにしてもアプローチの仕方が異なってくるのです。面白いものですね。

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線を引き終えたら、工房の中を見学させていただきました。
このもしゃもしゃしたものは磨きに使う機械。模様を入れた後に、しっかりと磨くことによって、透明な模様が浮かび上がってくるのです。(磨かないと、彫った部分はすりガラスのような透明度の低い状態のまま)

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彫ったらすぐに透明になるわけではないのね!と、ほへ~っとなりながら説明を聞きます。

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グラスに下書きの線を入れる作業から職人さんの修業は始まるそうです。
しっかり正確に線を入れ、先輩職人さんのサポートをして、空き時間で練習を重ね……最初から彫りを担当するわけではないのです。

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文様全て、細かに下絵を描くわけではなく、等分の線を引くことによってできる”あたり”を頼りに彫りを行います。江戸切子の柄が幾何学的でパッと一目見ただけでも美しさがすぐに感じられるのは、等分になっていて見ていて心地よいから、という点もあるかもしれませんね。

正確に、速く、美しく

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職人さんと作家さんは違う。というお話を、とても興味深く伺いました。

職人さんは「同じクオリティ」のものを「いくつも」「速く」作成納品します。(一日に数十~数百のお品物を作成されるそうです)
作家さんは「こだわりのデザイン」のものを「時として一点のみ」「時間制限なく」作成納品します。
同じ「江戸切子」であっても、アプローチの仕方が違うのですね。どちらの方がよりすごい、偉い、という話では全くなく、職人さんの作品と、作家さんの作品は同じではない。ということを知りました。

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普段はきっと、リズミカルにどんどん文様が入れられていく機械さんにも、今宵ばかりは少々ゆっくりお付き合いいただいて。初めましての我々がそれぞれ底に菊の紋を彫っていきます。

まずは練習から…

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彫りに使用する円盤が水と共に高速で回転し、そこへガラスを押し付けることによって表面を削っていきます。

一度その前に座り、深呼吸をすればその目は真剣。
息遣いと、削る音と、機械の回転音が工房内に響きます。

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回転するダイヤモンドホイールの目や大きさによって彫れる太さや速さなども変わっていきます。

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工房内には、これから美しい江戸切子となっていく下地状態のグラスから、下彫りが済んだものまで、様々な状態のガラスがたくさん。
ここから、丁寧に作られていろんな人の手に渡っていくのだなあと、ちょっぴり感慨深くもなったり。

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自分自身の体験はというと、とても緊張しました。。。。
頭を空っぽにしてただただ彫りとガラスと機械と私‥‥短時間の中で集中力を最大レベルに引き上げて出来上がったのがこちら。

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普段見るもっと細かい細さと多さの菊は、本当に難しいので私は断念。8菊を綺麗に仕上げることに注力しました。

心地よい疲労感と共に

体験を終えて、工房を後にした私たちは最初のショールームに帰ってきました。

足を踏み入れたその瞬間。
さっきまでアナログテレビ画質だった私の視界が段違いに解像度の変化が起きたように感じました。そう、8K画質くらいに。

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それは何故か。

体験をする前までは、江戸切子に対するイメージは、美しいが少々高級で手が出しにくいもの、でした。
しかし、いざ体験してみると…
その美しさは職人さんたちの努力のたまもので生み出された美であること、生半可な技術では凛とした美しさ・気品をまとうことはできないこと、その美しさを日々自分自身の生活の中で愛でるというのはとても心が豊かな生活になるのでは?という気付きまで…得ることができたのです。

始まる前に、ただただきれいだ~!すご~い!と言ってみていた一つ一つの切子を改めて眺めると、どれほどの手がかけられているかが痛いほどわかるようになっていたのです。片や八の底菊を生み出すだけで精一杯の自分‥‥片や日々寸分たがわぬ柄を彫り続ける職人さん‥‥こ~りゃ江戸切子がお値段張る理由も納得‥‥!むしろ安すぎる…と感じるほど。

もしもどこかで、ビビビッとくる一つと出会ったときには、悩まずにお迎えしてマイ切子としてかわいがるのもよいかも。と、思いました。

もしも、江戸切子職人の切子の作り方を知らなかったら、一生「江戸切子って綺麗だけど高いし自分では買わないかなあ」と思ったままだったかもしれません。
そう思うと、これからの人生においても日々好奇心を持ち続けて、知ることで一つ一つの物事に対する解像度を上げていくのはとても大事だ、この感覚は大切にしていきたいと、改めて強く感じたのでした。

価値観や知識のアップデートの重要さは、物事だけでなく旅やお散歩にも同じことが言えると思っています。日々何となく歩いている商店街、毎年訪れる場所、流してしまっているだけで、まだまだ自分が気づいていないこと、知らないこと、見えていないこと、たくさんあるかもしれません。

そう思うと、いつもの景色がちょっぴりワクワク、違って見えてきませんか?

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色んな価値観、知ると知らないじゃ世界の広さが変わるかも?

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Location:
 東京都 清水硝子
MyPartner(Camera):SONY α7iii / TAMRON 28-200mm F/2.8-5.6
Photo&Text:Anne

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