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寒山の書斎から。2022.11.~coldmountainstudy的今月のピックアップ。

今月は冊数多いですね。

まずは何と言っても先のピックアップで予告した沢木耕太郎さんの最新作。

沢木耕太郎 「天路の旅人」 (新潮社)


「この稀有な旅人のことを、どうしても書きたい」。
「旅」の真髄に迫る、九年ぶりの大型ノンフィクション。

第二次大戦末期、敵国の中国大陸の奥深くまで「密偵」として潜入した若者・西川一三。
敗戦後もラマ僧に扮したまま、幾度も死線をさまよいながらも、未知なる世界への歩みを止められなかった。
その果てしない旅と人生を、彼の著作と一年間の徹底的なインタビューをもとに描き出す。
著者史上最長にして、新たな「旅文学」の金字塔。

”沢木×旅”は言うまでもなく期待感が高まります。年末年始、時間の取れる時に一気読みするつもりです。や、彼の作品の多くと同じように意識しなくても一気読みになるか・・・。

次は衝動買いに近いビジネス書。

梅田悟史 「きみの人生に作戦名を。」 (日本経済新聞出版)


【内容紹介】
不安の時代でも、人生は続く。
でも、どう生きていくかは、あなたが決めていい!

◆やってきたことはバラバラでいい!
 やりたいことが見つからない。
 新しいことをはじめようとしても、最初の一歩が踏み出せない。
 何も長続きしない。
 こんな悩みを抱えていないだろうか。
 就活で自己分析に取り組むと、自分のダメさを突きつけられる。普段の簡単な自己紹介でも言葉に詰まってしまう。
 しかし、本当にあなたは何もしてこなかったのか? バラバラかもしれないが、自分の意志や興味に従って行動を起こしてきたものに違いないのだ。

◆自分にしか気づけない「見えない一貫性」
 その時、なぜそうしたのか? 何を思ったのか?
 一つひとつを言葉にして振り返ると、必ずそこに、あなただけの一本の軸が見えてくる。
 本書は、同じように悩み続けてきた著者の経験をもとに、自らを変えた「9マス思考法」による振り返りと、それを再整理する「価値の3階層」という考え方を公開。出来事や行動だけでは説明できない自分軸の存在を知り、言葉という形を与えることで、自分の中に眠る見えない一貫性を見出す考え方を提示する、悩めるあなたに寄り添う一冊。

◆今こそ、人生のオーナーシップを取り戻そう
 自分はこうして生きていきたい!
 自分軸を見出し、言葉として昇華した「作戦名」は、必ず明日へと導いてくれる。新たな一歩を踏み出す勇気を生み出してくれる。
 人生に名前をつけることは、誰かから言われて何かをするのではなく、生き方を自分で決めて人生のオーナーシップを取り戻すことだ。未来は、自分でつくればいいのである。

【目次】
はじめに

第1章 地続きの人生から自分軸を見出す
  なぜ最初の一歩が踏み出せないのか
  地続きの人生から自分軸を見出す
  作戦名のある人生を生きる

第2章 作戦名をつける
  作戦名を検討する具体的な方法
  ① 振り返る
  ② 思いを馳せる
  ③ 自分軸を見出し、再整理する
  ④ 作戦名へと昇華させる

第3章 不安の時代でも、人生は続く
 いい作戦名とは何か
 やさしさによる革命を起こす
 他者の評価から、自らの納得感へ

終わりに 私には、まだやるべき仕事が残っている

自分の生き方、としてはいい加減定まってきてはいるのですが、”作戦名をつける”って見方がいいな、と。さらにいい考えが欲しい。

次は服部文祥さん。

服部文祥 「お金に頼らず 生きたい君へ: 廃村「自力」生活記 (14歳の世渡り術)」 (河出書房新社)


お金を払えば誰かが何でもやってくれる。そんな生活は本当に楽しい? 廃屋を手直しし、シカを撃つ。どこまで自力で生きられるか?

地球の生き物(ホモ・サピエンス)としての自由と喜び。
「……満員電車に乗ったり、締め切りに追われたり、本当に必要なのかどうかわからないものを売ったりして、生きていくのが自分にしっくりこないと感じている人もいるのではないだろうか(私だ)。社会人になったら、どこかの企業に勤めたり、起業したりして、経済社会に参加して、お金を稼いで、それで生活を購入して生きていくことに、違和感を覚えている人がいるのではないだろうか(私だ)。生きることが、まるでお金を稼ぐことになっている社会がつまらないと感じている人がいるのではないだろうか(私だ)。」(本文より)

山村の古民家を利用して、手間を惜しまず、ライフラインや食料を自給自足する暮らしを、
一から実践し、試行錯誤している登山家が、自らの体験をもとにまとめた記録。

自給自足は、できます。

【目次】
はじめに 人間だってやればできる
その一 田舎に住処を探す
その二 ちょっと寄り道(生きるとは)
その三 ケモノを狩る
その四 古民家を活用する
その五 沢の水を引く
その六 土間を活用する
その七 文化カマドで脱化石燃料
その八 犬と暮らす
その九 ソーラーで発電する
その十 畑で作物を育てる
その十一 制約と妥協点
ちょっと長いあとがき

服部さんはサバイバルの活動より実はこういう生活寄りの考え・アイディアが面白い。河出書房のこれは、14歳の世渡り術・・・シリーズだったのですね。結構長く続いている。知らなかった。他にも面白い本がありそうだ。

次は”人新生”が人気の斎藤幸平さん。

斎藤幸平 「ぼくはウーバーで捻挫し、山でシカと闘い、水俣で泣いた」 (KADOKAWA)

斎藤幸平、現場で学ぶ。

うちに閉じこもらずに、他者に出会うことが、「想像力欠乏症」を治すための方法である。だから、現場に行かなければならない。(「学び、変わる 未来のために あとがきに代えて」より)

理不尽に立ち向かう人、困っている人、明日の世界のために奮闘する人――統計やデータからは見えない、現場の「声」から未来を考える。

【目次】
第一章 社会の変化や違和感に向き合う
ウーバーイーツで配達してみた
どうなのテレワーク
京大タテカン文化考
メガヒット、あつ森をやってみた
5人で林業 ワーカーズコープに学ぶ
五輪の陰
男性メイクを考える
何をどう伝える? 子どもの性教育

第二章 気候変動の地球で
電力を考える
世界を救う? 昆虫食
未来の「切り札」? 培養肉
若者が起業 ジビエ業の現場
エコファッションを考える
レッツ! 脱プラ生活
「気候不正義」に異議 若者のスト

第三章 偏見を見直し公正な社会へ
差別にあえぐ外国人労働者たち
ミャンマーのためにできること
釡ケ崎で考える野宿者への差別
今も進行形、水俣病問題
水平社創立100年
石巻で考える持続可能な復興
福島・いわきで自分を見つめる

特別回 アイヌの今 感情に言葉を

学び、変わる 未来のために あとがきに代えて

気鋭の研究者さんが現場で何をして、何を考えるか?これだけで結構面白い取り組み。とくに”人新生”では何度か激しくうなづかされた斎藤さん。どんな内容か愉しみです。

coldmountainstudyでもサンプル本配布を行った「シェ・パニーズ」のアリス・ウォータースさんの最新作も入ってきました。

最大15%還元 本のまとめ買いキャンペーン
オーガニックの母が辿り着いた未来のかたち
半世紀前―カルフォルニア州バークレーの小さなレストランから「おいしい革命」は始まった。
全米に地産地消を広げ、世界中の料理人と教育者に影響を与えた著者の集大成
‐‐‐ “オーガニックの母”アリス・ウォータースが、生涯のテーマであるスローフードの世界観についてファストフードの世界観と比較しながら初めて語る。
私たちは食べることを通じてその世界を生きている。
「何を大切にし、どんな世界をつくりたいのか」
1970年代から人と食と地球に人生を捧げた著者が問いかける。
読み終えたとき、目の前の食事から、忘れかけていた大切なものが見えてくる。
美しさ、働く喜び、シンプルであること……
私たちのこころとからだを解きほぐす滋味あふれる言葉たち。
ほんの少し足をとめて、世界の豊かさを感じてみませんか。
本書「はじめに」より
「この本でお伝えするのは、食べることが人の暮らしと世界にどのような影響をもたらしてきたか、そして、その道筋を変えるために私たちにできることは何かということです。参考文献を並べた学術的なものではありません。すべて、実体験からお話します。食べることは、生きること。これが私の人生を導く哲学なのです。」

こちらはすでにサンプル本を読了しています。ライブラリー蔵書として、また版元応援のパターンだろう!と本書も購入。
この本を読むとオーガニックとかスローフードって別に敷居の高いものでなく(ホンモノを語る人には無駄にハードル上げる人、残念ながらいますよね。この本はその逆です。)むしろ自然な流れなのかな、と。

この秋はヤマケイ文庫の新作も充実。その中からまずは2冊。

谷口ジロー 「野生の中へ」(ヤマケイ文庫)

 


谷口ジローが描く、生命の躍動。
人と動物が野生のなかで、渾然一体となる珠玉の作品集。

樺太の猟師と日本人女性のサバイバルを描いた関川夏央脚本の「西風は白い」(1978年)をはじめ、クマを飲み込む大イトウの怪異譚(ユーカラの森・1978年)、
熊野灘のマッコウクジラ漁師の生き様(枯木灘・1979年)、死にゆく鷹匠とそばを離れないクマタカの物語(鷹・1980年)、
ロッキー山脈の猟師の独白(森へ・1984年)、跡取り息子をクマに襲われた老猟師の失意と執念(山へ・2002年)、
ユーコン川流域で‟北のヌシ”白いヘラジカを探し続ける猟師(凍土の旅人・2003年)と7編を収録。

田渕義雄 「寒山の森から」 (ヤマケイ文庫)


日本を代表する自然派作家・田渕義雄の初期名作を初文庫化!

「自然のなかに身をおかなくても平気で生きていける人がいるように、そうでない者もいる……。
この本は、そうでない側の男が、都会から山へ移動し、そこで自分の心と肉体が感じたままのことを四季折々に綴ったノートであり、また山や森や川と心を通わせるためのフィールドガイドである」

40代を目前に、東京から金峰山北麓に移り住んだ田渕義雄の自給自足的田園生活のはじまりの記録である。
暮らしの喜びや苦労、さまざまなアウトドアの楽しみを軽快な筆致で綴ったエッセイの数々。

原書発刊から25年後の執筆となる単行本未収録の掌編も2編収録する。
解説・樋口明雄。


■内容
【第1章】赤いトタン屋根の家の写真スケッチ

【第2章】小さな森の片隅で コールド・マウンテンの新参者/冬を数える/我が家の二つの薪ストーブ/冬から春へ/野山からの贈り物、山菜/
ハイランドの六月/我が菜園の愚話/イワナ釣り/秋のアウトドア・クッキング/オレゴンの旅/冬の森からの贈り物

【第3章】モーターサイクルの旅/冬の旅/ソフトハウス、又はティピー/ぼくの夏山登山/カヌーイング/村営廻り目平キャンプ場/ロッククライミング/
鳥/夏を割る/沢歩き/マツタケ狩り/フール・オン・ザ・ヒル/冬の岩山のてっぺんで/山小屋でちょっと一泊/雪原のトレッキング/焚火学/犬と散歩/
モーターサイクル/フライフィッシング教書/八ヶ岳から帰ってきた青年/あとがき/特別収録=地付きフライロッダーのジレンマ/秋風と四方山話

【解説】樋口明雄

谷口さんの漫画は”絵”として深く見ることができますね。「孤独のグルメ」や「散歩もの」などの町の描写もいいですがそれが自然となるとまた格別。
田渕さんの方は初期の名作、単行本”まま”の表紙も嬉しい。
我が店名の由来でもある彼の表現、初期だけあっていろいろな初めての気付きに溢れている。当地の事を知りたい方に自信を持ってお勧めできる本です。

残り3冊は先日、北極冒険家・荻田泰永さんと絵本画家・井上奈奈さんのトークを聞きに上田「nabo」に出かけた際購入してきたもの。


良い本屋ではやはり買ってしまいますね。

まずは荻田さんのお勧めであり、自分も敬愛する哲学者・内山節さん。

内山節 「時間についての十二章」 (農文協)

直線的に過ぎていく「時の矢」としての時間と循環する時間―その違いをとおして、山里の暮らしとその変容から、時間という「存在」をとらえる。全集収録にあたり補章「過去・現在・未来の関係について」を書き下ろし。「労働と自然」「『真理』が価値を失った時代に」の二編もあわせて収録した。

こちらは全集の内の一冊。
内山節さんもそう、内田樹さんもそう・・・なのですが既に何冊も読んでいますので、内容は大体わかる。
それにもかかわらず読んでしまうのはやはり読むごとに気付かされる(しかもいい点で)ことが多いから。
内田さんは実際、桑田佳祐や山下達郎の曲作りを例に、作品ごとに「極端に変えない」ことを意識している、そしてそれは読者に対する感謝の念であると記していますね。

次は言葉について考える一冊。

三木那由他 「言葉の展望台」 (講談社)

いま、あなたとの会話で起きたことは、いったい何だろう?

マンスプレイニング、コミュニケーション的暴力、会話の引き出し、言語的なポリティクス、アイデンティティと一人称、人々をつなげる言葉、誠実な謝罪と不誠実な謝罪……。難しくて切実で面白い「言葉とコミュニケーション」を、「哲学」と「私」のあいだのリアルな言葉で綴るエッセイ。

【目次】

プロローグ コミュニケーション的暴力としての、意味の占有

そういうわけなので、呼ばなくて構いません
ちょっとした言葉に透けて見えるもの
張り紙の駆け引き、そしてマンスプレイニング
言葉の空白地帯
すだちかレモンか
哲学と私のあいだで
会話の引き出し
「私」のいない言葉
心にない言葉
大きな傘の下で会いましょう
謝罪の懐疑論
ブラックホールと扉

「会話を哲学する」(光文社新書)はすでに持っているのですが、未読。逆にnaboの店頭でパラ見して気になってしまったコッチを先に読む事になりそうです。(実店舗の魅力ですね。)

今月最後はやはり最近個人的に注目している書き手さん。

藤原辰史 「歴史の屑拾い」 (講談社)


歴史をどう語るのか。
こぼれ落ちた断片の生が、大きな物語に回収されないように。
戦争体験者の言葉、大学生への講義、語り手と叙述……。
研究者である自身に問いかけながらの試行錯誤と、思索を綴るエッセイ。


【目次】
プロローグ ぎくしゃくした身振りで
1章 パンデミックの落としもの
2章 戦争体験の現在形
3章 大学生の歴史学
4章 一次史料の呪縛
5章 非人間の歴史学
6章 事件の背景
7章 歴史と文学
エピローグ 偶発を待ち受ける


歴史、個人的に苦手な視点。子供の頃はあんなに歴史ものばかり読んでいたのに・・・「縁食論」(ミシマ社)などで何度も頷かされた藤原辰史さんなら歴史に対するとっかかりをどう書くのかな?と。
個人的にはチャレンジ?な一冊です。

や、充実の内容です。これで年末年始・長い冬も安心?

いやいや12月もいろいろ目をつけてあります。

ライブラリーではこれらすべて実際手に取ってみることができますよ。貸し出しも行っています。

薪ストーブで暖かいライブラリー、宜しければぜひお出かけください。


http://www.coldmountainstudy.com/
coldmountainstudy@gmail.com 

coldmountainstudy  店主:鳥越将路

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