寒山の書斎から。2022.1.~coldmountainstudy的今月のピックアップ。
今年も毎月、新書・文庫をベースに気になる本をピックアップしていきます。今月は個人的には豊作。
(厳密に今月発売のもの・・・の意ではなくあくまで自分が今月購入しましたよ、するつもりですよ・・・ということです。)
池澤夏樹 「終わりと始まり 2.0」 (朝日文庫)
”文学と科学とジャーナリストの眼をもち移動する文化人は、被災地、沖縄、熊本、水俣、ベルリン、ギリシャへと足を運ぶ。苦境の人びとの話に耳を傾け続け、日本の危機、戦争のできる国への変貌を憂える。
「日本文学全集」の個人編集で評判の著者による、コ○ナ禍の今も読みごたえのある、朝日新聞好評連載の名コラム文庫化第2弾。”
朝日文庫は”むくどり”の頃から池澤コラムを文庫化してくれていますね。ファンとしてはありがたい限り。
どういう感じか?せっかくあとがきが引用されているのでそのまま載せておきましょう。好みな方は好み。ピンときたら是非どうぞ。
”一か月を単位として現代史を追ってきた。
明るい話題は少なかった。なんと言ってもこの間の安倍政権というのがひどかった。日本という立憲民主国の品位をとことんまで落とした。更にアメリカには安倍を派手に、大袈裟に、「まさか嘘(うそ)でしょう」級のパロディーにまで拡大したトランプ大統領が登場した。冗談の域を超えた冗談で、しかしこれが現実。そういう五年間だった。それを嘆いても、レトリックを駆使して彼らを揶揄(やゆ)しても、選挙の結果が変わるわけではない。どこまで行ってもぼくたちには言葉しかない。(略)日本についてこうして行きつ戻りつの思考を重ねる。それがこの時代と歩調を合わせて生きるということなのだろう。大義名分を立てて、それに沿って思いを立てるだけなら楽なのだが。”
続いて・・・
岩田徹 「一万円選書: 北国の小さな本屋が起こした奇跡の物語」 (ポプラ新書)
ポプラ新書は普段チェックしないんですが時々こういう外せないのが出るんですねぇ。侮れない。
これはもちろん、本屋的勉強のため・・・が強いです。
”本をどう選び、どう読むか――。
1万人以上に本を選んできた書店の店主が、あなたの運命の1冊をお届けします。
NHKプロフェッショナルほか、さまざまなメディアで話題となった、北海道砂川にある町の小さな本屋さん「いわた書店」の選書サービス「一万円選書」。
1年でわずか3日だけの募集で、常時3000人待ちともいわれている一万円選書を書籍で疑似体験。
【一万円選書とは…】
いわた書店の「特製カルテ」をもとに、1万円分の本を選書し、お届けします!
<カルテの内容>
・これまで読まれた本で印象に残っている20冊を教えてください
・これまでの人生で嬉しかったこと、苦しかったことは?
・何歳のときの自分が好きですか?
・これだけはしない、と決めていることはありますか?
・あなたにとって幸福とは何ですか?
etc.
そのほか何でも結構ですので、あなたについて教えてください。
ゆっくり考えて書いてみてください。”
いつかこんなサービスを提供してみたい・・・というのは本屋共通の願望ではないでしょうか?自分の場合すっごく狭い幅になってしまいそうですが・・・。
次は”田舎系”ですね。
花房尚作 「田舎はいやらしい 地域活性化は本当に必要か?」 (光文社新書)
”「地域活性化は正しい」――これは都会に住む者の勝手な思い込みでは?
過疎地域に12年住んだ著者が、
現地での調査やインタビューをもとに過疎地域の〝本音と建前〟を鋭く描き出した意欲作。
私も都心で暮らしていたころは、過疎地域の活性化は正論だと考えていた。過疎地域の発展は地域住民の幸せにつながると信じていた。そうした思い込みのようなものが、過疎地域での暮らしを通して少しずつ変わっていった。なぜなら、そこには変わらないことを望む人びとの姿があった。何一つ変わることなく、どこにも飛び立たず、廃れ、寂れ、衰えていくことを望む人びとの姿があった。地域の活性化が叫ばれている昨今の時局を鑑みて、そのような過疎地域の人たちについての研究を進め、過疎地域の活性化は本当に必要なのか、今一度考えてみたかった。”
ふむ、よくあるタイプとは少し違う感じ。
先入観無しで読んでみたいですね。
次は・・・
磯野真穂 「他者と生きる リスク・病い・死をめぐる人類学」 (集英社新書)
あまりに印象的だった「急に具合が悪くなる」で出逢った磯野真穂さんの新著。
今回は”自分らしさ問題”が軸なようです。以下引用。
”生の手ざわりを求めて――。
“正しさ”は病いを治せるか?
“自分らしさ”はあなたを救うか?
不調の始まる前から病気の事前予測を可能にし、予防的介入に価値を与える統計学的人間観。
「自分らしさ」礼賛の素地となる個人主義的人間観。
現代を特徴づける一見有用なこの二つの人間観は、裏で手を携えながら、関係を持つことではじめて生まれる自他の感覚、すなわち「生の手ざわり」から私たちを遠ざける。
病いを抱える人々と医療者への聞き取り、臨床の参与観察、人類学の知見をもとに、今を捉えるための三つ目の人間観として関係論的人間観を加えた。
現代社会を生きる人間のあり方を根源から問う一冊。”
”自分らしさ問題”は自分も時折考えを巡らせますが磯野さんの場合(そのバックボーンから)アプローチが全く違う。今回も自分では思いもしないような側面の考察を読ませてくれるだろうと思っています。
新書、最後は・・・
高桑和巳 「哲学で抵抗する 」 (集英社新書)
”哲学する心を誘う、異色の入門書!
哲学は一部の知的エリートに独占されている高邁な営みでも、心の悩みを解決してくれるものでもない。
では哲学とは何か。
それは「概念を云々することで世界の認識を更新する知的な抵抗である」。
本書では、漁民の反抗、奴隷戦争、先住民の闘争、啓蒙主義、反戦、公民権運動など、いずれも明瞭な抵抗のイメージをともなうものを「哲学」の例として挙げる。
あらゆる哲学は「抵抗」だ。
何を見ても哲学が見える、哲学に見える――。
世界のちょっと変わった見えかたや哲学する心を誘う、異色の入門書。”
最近、本当に多いんですよね。哲学という言葉を使わずも。
哲学をビジネスに活かす・・・みたいな自分からすると「???」な感じなものも出てますがあくまで自分は現状に対し何かをせねばならない、今のままではいけないという思いの発露と捉え、事実数冊を購入・購読していますし、これからも浅学ながら思考を止めずにいようと決めています。
ここからは、読書とは少し違うかな・・・?という感じの。
毎春購入してしまう雑誌ですね。
自分としてはこの号が出るとそろそろ釣りシーズン開幕・・・解禁を意識しだすという。
この雑誌、夏号も出るのですが(春・夏二季刊です。)この気分の高まる春号でなくシーズン真っただ中の夏号は一度も買ったことがない。つまり本当に季節のものという捉え方なんですね。
今年も釣りに向かう気分を盛り上げるにとてもいい出来栄えです。
併せて、横にある文庫。
ずっと読もうとは思っていたんですよ。マイ・ホームリバーですからね。何があったのかは知っておく必要がある。
あわせて今期の千曲川最上流部、妙に水量が少ない。いろいろと憶測はあるのですが憶測するにも過去の事例を知ることは決して無駄ではない。好きだからこそ悪い部分は憎いという感情。
偶然というか、ちょうど本屋として釣りを通じて何かできないか?なんてことに対して答えというかアイディアというかプランというかそんなものが自分の中に固まりつつあって。こちらもいずれ発表できればいいですね。
本と同じく、川への思いも尽きないのです。
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