海を知っているか。

そこには雨が降らない。雲がないからだ。
そこには波が立たない。風がないからだ。
そこは暑くならない。太陽がないからだ。

あるのは灰色の砂と、灰色の空と、灰色の水と、俺がひとり。
水の中に魚はいない。砂浜の上に人はいない。ただ、俺がひとり。

そこでは生きていけない。何もないからだ。
その恐怖に立ち向かうことは出来ない。その恐怖の名前は「孤独」と言うからだ。
孤独に打ち勝つことは出来ない。それは「死」そのものだからだ。


海を知っているか。

この問いは存在できない。
聞く者が誰もいないからだ。
そして俺は存在しない。
この海を誰も知らないからだ。

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眠れない夜に

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