第二回アジアプロ野球チャンピオンシップ(APBC)私的総評

皆さんお久しぶりです。MTMです。
11月16〜19にかけて東京ドームで行われたアジアプロ野球チャンピオンシップ(以下APBC)。前回大会から引き続き日本、台湾(チャイニーズタイペイ)、韓国が参加、そして新たにオーストラリアを加えた計4カ国でアジアの頂点を争った今大会は日本の劇的なサヨナラで幕を閉じました。そんな第二回APBCを振り返っていこうかなと思います。


4位 オーストラリア🇦🇺

2023年春、韓国から大金星を挙げたオーストラリア代表。APBC初参加となる今大会はRixon WingroveAlex HallSam HollandといったWBCメンバーに加えJack BushellBrodie Cooper-Vassalakisといった新顔も参戦。残念ながら今大会では1勝も挙げることができず。結果だけを見れば0勝4敗という成績に終わってしまったものの、細かく振り返ると明るい材料は多くありました。

期待の若手達


野手ではLiam Spence。彼はWBCにも選出されていましたが出場機会は日本戦で2打席立ったのみ。今回オーストラリア代表として本格デビューとなったスペンスは全4試合を遊撃手として出場しチーム最高打率の.286を記録。守備でも小園の外野に抜けそうな打球を捕りゲッツーにするなど随所に光るプレーが見られました。3位決定戦にて7回二死満塁から同点タイムリーを放つ勝負強さも◎。現状のオーストラリア代表正遊撃手はLogan Wadeですが今後彼からポジションを奪い取れるのか、注目です。

投手ではKai-Noa WynyardJack Bushellでしょうか。Wynyardはリリーフとして台湾戦と3位決定戦に登板。二試合で4四球と制球面には課題を残していますが、150キロ超えの直球を何度も連発し、最速154キロを記録。現状、オーストラリアで150キロを投げられる存在はすごーく貴重なので来年以降マイナーやABLで制球面を磨き、リリーフエースとして代表チームを引っ張ってもらいたいですね。
そしてBushell。彼は昨年までショートとしてプレーしていましたが、テストを受けそこで143キロを計測。投手転向し今夏にはU-18大会にエースとして出場し、15 2/3回を投げ大会トップクラスの防御率1.50を記録した、異色の経歴を持つ18歳の少年です。

そんなBushellは日本戦に先発。連打を浴び初回にいきなり失点したものの万波、佐藤から連続三振。ストレートは最速146キロを記録し、スライダー・チェンジアップ・カーブ・ツーシームなど豊富な変化球を披露、結果的には2回1失点となりました。
牽制ブーイングや緊張もあった中で「日本トップクラスのバッター二人から三振をとった」という事実は非常に素晴らしい事。今後の野球人生、そして代表のエースとしての活躍を願っています。

一方…

対照的に、WBC経験者のパフォーマンスはあまりよく無かったかな〜と感じます。チームを引っ張る筈のHall、Whitefield、Wingroveという実力者達が絶不調だったのが痛かったですね。Hallは韓国戦でエース・ムンドンジュから同点のホームランこそ放ちましたがその後3試合で僅か1安打のみ。Whitefieldも韓国戦でのバントヒットだけ、Wingroveに至っては大会フル出場も快音響かず。一塁守備でも捕球でまずいプレーが見られました。個人的にこの3人が楽しみだったのですが寂しい結果に終わってしまったのが残念です。

チームMVP、🇦🇺代表公式アカウント

4位に終わってしまったしまったオーストラリアですが、この大会で最も輝いていたのはオーストラリア代表公式アカウントでしょう。
大会開始前から府中での練習の様子や、選手への質問(好きな日本食、東京ドームの感想質問等)、日本語での選出紹介などを投稿。

↑(私がFour'N Twentyのミートパイの写真撮ってメンションしたら公式が反応してくれた)

…と、とにかく日本人向けにアピールを積極的に行ってきました。
そして一番輝いていたのは土曜日でしょう。

今大会で唯一応援の文化のないオーストラリア、そんなオーストラリアの為に応援歌を歌ってほしいとリクエストしたのです。このツイートは反響を呼び、話題になりました。そして19日…

この日はBモレル有志によるオーストラリア応援歌&チャンステーマが行われ、非常に素晴らしい雰囲気の中での試合となりました。オーストラリアのニルソン監督は
日本は第2の家。感謝して、この関係を続けていきたい」とコメント。本当にあの応援には野球の素晴らしさがあったと思います。Bモレル有志の皆さん、ありがとうごさいました!
結果として応援希望のポストによりオーストラリア野球は過去最高クラスの注目を集める事に成功。間違いなくオーストラリア代表公式アカウントの大ファインプレーと言えるでしょう。本当にお疲れ様でした。
今後のオーストラリア野球の発展を祈っています!

3位 台湾(チャイニーズタイペイ)🇹🇼

WBCグループAで5位に終わり、残念ながら次回大会は予選から出場する事が決まっている台湾。投手陣に大きな課題を残し挑んだ今大会は統一の火球男古林睿煬やNPB挑戦が噂される曾峻岳、味全の紅色大砲こと劉基鴻などの若手有望株を招集。ただ9月のアジア大会と12月のアジア選手権に挟まれたことや、コンディション不良による辞退者も多くベストメンバーとは呼べない布陣でした。

つまり優勝は古林睿煬

いやーほんとにすごかった まさかあそこまでとは思わなんだ
日本戦に先発した古林は150キロ越えの直球を連発し6回2/3を1失点被安打わずか3、6回途中まで強力日本打線相手に完全投球を見せる完璧なピッチングを披露。中職球迷だけでなく日職球迷にも大きな反響を呼び一時は「台湾のピッチャー」がトレンド入りするほど。森下に甘く浮いたボールを捉えられ被弾こそしたものの、我々の想像の遥か上をいく投球でした。

残る投手問題、そして貧打

やはりというべきか台湾野球長年の問題として挙げられる「投手不足」 正直言ってショートイニングで出てくる投手の球速が150キロ出ず、格上相手から簡単に打たれてしまう姿は、誹謗中傷になってしまいますがまるでお前さん達巨人の中継ぎのようで見ていて辛かったです…。王彦程はもう酷かったね、ノーコメント。

打線の方も中々に深刻。郭天信は4試合全てでヒットを打ち打率.357と気を吐いたものの、チームは日本・韓国相手にはほぼ沈黙。オーストラリアからは計10得点を挙げたものの相手のミスやタイブレークのランナーによるものが多く、ちゃんと点を取れたのは最後の郭天信再見安打ぐらいだったり。
この点はOA枠で廖健富や吉力吉撈鞏冠、林立とかを呼んで力を入れていたら変わっていたとは思いますが、今回の代表で長打を期待できるのが劉基鴻しかいないというのはかなり寂しい。やはり投手野手共に「選手層の厚さ」というのは鍵になってくるなと感じました。

台湾野球の未来

とまぁ色々課題は書いてきましたが、今大会はフルメンバーでなかったのは事実。台湾には徐若熙鄧愷威、鄭宗哲など国内外にプロスペクトを多く抱えており、次回のWBCで全員揃えば相当楽しみな存在になるはず。台湾野球の未来は明るいです。

(↑未来のエース、徐若熙の台湾シリーズでの奪三振集)

ただこれらはあくまでも仮の話で、今回のように故障者が出て出場できない可能性は大いにありえる。どうしても国としての規模が小さいためそう簡単に選手層の強化はできませんが、今後国際大会で結果を出す為にはやはり全体のレベル底上げは必須。長い道のりですが、地道に頑張っていくしかないですね…。加油!

2位 韓国🇰🇷

WBCでは3大会連続での1次ラウンド敗退という結果に終わった韓国。先の杭州アジア大会では「世代交代」を目標に掲げ、KBOとしては初めてシーズンを中断せず、リーグトップの選手ではなく若手を中心に代表を構成し見事四連覇。APBCでも大多数の選手がアジア大会の代表メンバーで、3枠使えるOA枠はチェジフンただ一人のみ。KBO初の160キロを計測したムンドンジュや本塁打・打点の二冠に輝いたノシファン、二桁勝利を挙げたクァクビンなど多くのプロスペクトを揃えました。

新世代の台頭

今大会目立ったのは投手陣の台頭でしょう。ムンドンジュ・イウィリ・クァクビンは制球難ではありますが皆150キロを先発として投げる事ができ、それぞれ5回2/3 2失点・6回2失点・5回1失点と上々のピッチング。台湾戦に投げたウォンテインも持ち前のチェンジアップと制球で5回1失点無四球5奪三振の投球と、大会全体を通して一番のパフォーマンスだったなと感じました。

↑(クァクビンが坂倉から奪った三振。sword。)
野手ではノシファンキムジュウォンが打線をリード。ノシファンは大会全試合でヒットを放ち大会打率.359サヨナラを含む4打点とKBOでも見せた持ち前の勝負強さを披露。ベストナインを獲得しました。(欲を言えばもっと長打を見たかった…)
キムジュウォンも全試合でヒットを放ち台湾戦では猛打賞、サイクルリーチの大暴れで打率は.429、小園との争いを制しこちらも大会ベストナインを獲得しました。

↑(ノシファン、豪州戦でのサヨナラタイムリー)

近いようで遠い、1点の差

今大会では対日本2試合とも一点差の大接戦。メンバーが大きく異なるとはいえWBCでの9点差完敗を考えればかなり良化したんじゃないのかなと感じた人もいるかと思います。しかしながらその「一点の差」は点数以上に大きい差があるのもまた事実です。
浮き彫りになったのは対左投手。韓国は隅田・田口・根本・桐敷と対戦しましたが、彼らの成績を合計すると13回6安打1本塁打1打点13三振1四死球となり、特に13回で13三振というのはとても悪い成績。この点は今後の韓国野球界にとっての新しい課題と言えるでしょう。

投手陣も全体的に四死球の多さが目立ちます。出場4国の四死球数はそれぞれ、
豪州🇦🇺22四死球
韓国🇰🇷19四死球
台湾🇹🇼12四死球
日本🇯🇵8四死球
となり、韓国は日本だけでなく台湾よりも四死球数が多いという結果に。球速はかなり高速化していますが、この点において韓国と日本は大きな差がありますね。ただ彼らは皆若いので、次の国際大会ではより制球を磨いた彼らの姿を見れることを期待しています。

対日本8連敗 韓国復活へ向けて

今回日本に敗れた事によってプロ同士の対決における対日本成績は8連敗となってしまいました。
ただ、それでもこの大会で得たものはとても大きいと私は考えます。今回監督を務めたリュジュンイル氏は以下のように述べました。

「しばらく韓日の野球のレベル差が広がっていたが、今大会を通じて基本をしっかりと固めれば対等な試合ができると考えた」

https://news.yahoo.co.jp/articles/c2f10553485a5edce2c83a71478f56ac2416cc76

日本と韓国の間には未だ果てしない差があります。しかしながらその差は「到達不可能ではない差」という事を選手達も理解したはず。この経験を活かすも殺すも選手次第。野球強豪国・大韓民国復活の日はそう遠くないと私は信じています。

1位 日本🇯🇵

うん、なんか言う事あるかな?
本当に強かったの一言ですね。古林睿煬、イウィリ、クァクビンという投手陣の中で序列が上の投手から最も簡単に得点し、投手陣も4試合で僅か4点しか取られなかったりともう圧倒的。凄いですね。

圧倒的な選手層

今大会は次世代の侍を育てるという目的のため、牧以外はWBC代表未経験者でメンバーを構成。U-24という括りであれば佐々木朗希や高橋宏人、村上宗隆等球界トップクラスのメンバーを抜いて戦いましたがそれでも小園、門脇、隅田、根本などが活躍し大会二連覇。もはや恐ろしいですね。
台湾・韓国と比べ選手層の厚さで圧倒する日本、流石は世界一の野球大国です。

輝く新侍達


第二回大会MVPとなった門脇誠。全試合でヒットを放ち決勝ではサヨナラタイムリーを打つなどルーキーとは思えない本当に素晴らしい活躍を見せました。これでいて今季DELTAのUZR合計が全選手で一位という卓越した守備力も持っており、非常に恐ろしい選手です。
森下翔太もルーキーながら大活躍。日本打線が打ちあぐねていた古林睿煬から先制ソロを放つと続く韓国戦・決勝でも大暴れ。10打席以上立った選手の中で打率.455は大会トップです。

投手陣では根本悠楓が獅子奮迅の活躍。清水達也から教えてもらったフォークを駆使し、2試合合計5回7奪三振被安打1無失点の投球で日本の優勝を支えました。

素晴らしい選手達とクソみたいな運営

今回の大会で日本は圧倒的な力を見せつけ再びアジアの頂点に立ちました。一方で大会運営側に残念な点がいくつか。
まず一つはグッズ販売の点です。「アジア」プロ野球チャンピオンシップと名乗っておきながら台湾・韓国・オーストラリア関連のグッズがないというのはありえない話。APBCはアジアの野球を盛り上げる目的で各国連盟によって作られた大会。日本関連のグッズしか展開しないというのは主催者としてあまりにもホスピタリティ精神に欠けていると思わざるを得ません。
また内野席の一部を「応援ステージシート」とし、台湾・韓国の応援団・チアを呼んだにも関わらず現地の応援スタイルである「内野席での立ち応援」を禁じた事にも納得がいきません。各国の応援文化に対して大変敬意の無い姿勢だと思います。もしどうしてもダメなら事前に応援団・観客に知らせておくのが最低限の義務のはず。16日は立ち応援を黙認し、17日韓国ファンに対して警備員が注意→18日以降内野立ち応援全面禁止という運営側の一貫性の無さも良くないです。

今回の大会運営の姿勢は「NPBのNPBによるNPBのための大会」としか感じられません。これはあくまでも国際大会ですのでNPBには次回以降機会があればちゃんと他国にもリスペクトを持ってもらいたいです。

今後のAPBC

少しだけAPBCの今後について。
今回は🇯🇵🇰🇷🇹🇼🇦🇺の4カ国での開催となりましたが、やはりまだまだ少ないです。
この大会には「プロ野球」がついているので実現するかどうかわかりませんが、杭州アジア大会で初めて日本の社会人代表を倒した中国代表は是非見てみたい。他にもフィリピンタイニュージーランドあたりも参加国の候補として名前は上がってきますし、baseball unitedが次回開催される時までに軌道に乗っていればAPBCにBU選抜として加えたりする事もアリ。とにかくこの大会をより価値あるものにする為に、より多くの国が参加できることを願っています。
そしてこれはAPBCだけでなく色々な大会に言えることなのですが、主要国際大会における日本依存からの脱却。これも重要です。
アジア圏における国際大会をほぼ行ってきた日本ですが、より国際大会の色を強めていく為には他国での試合開催は必須。しかしながらキャパの大きさや収益・気温を考えた時結局東京ドームの開催になってしまうというのがこれまでの現状でした。
しかし今年の冬から台北ドームが開業。台北ドームの開催であれば東京ドーム規模の国際大会開催も不可能ではなくなります。また韓国では今後立て続けにドーム開業が予定されており次回大会はそちらで開催するのも案としては考えられますね。
というより、もしもNPB運営側が今後も今回の様な姿勢で国際大会を開催するつもりならもう日本で開催すべきでは無いです。野球界にとってマイナスでしかありません。

最後に

最後まで読んでくださりありがとうございました。
今大会は各国ともに大変素晴らしい戦いを見せてくれたました。
やっぱり野球っていいな、と思わせるそんな大会でしたね。まだ第二回大会、ここからどんどん拡大していきゆくゆくはアジア全土を巻き込んだ大きなイベントになっているといいなぁ…なんて妄想もしたり(笑)。野球国際化の機運が高まり始めたのは結構最近の事、今後もこの様な大会を恒常的に開催し、野球の輪をどんどん広めていければいいなと考えてます。
とにかく次回大会も非常に楽しみですね!

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