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今日も「ゴールの旗」と

おっ、来たな。
今日も、ヤツが現れた。
今日も始まります。

土曜日午前中は、テニスレッスン。
80分のレッスンの最後の10分。
ちょうど試合形式の練習をしている頃、ヤツはやってくる。
ここ半年ばかり、この10分が、私の修行のトキなのである。

「ウサギとカメ」の話は、子どもの頃、誰もが聞いたことがあるだろう。
室町時代後期以降に日本に伝わったこのお話は、明治時代、初等科国語の教科書に採用されたことで、一般に知られるようになったようだ。
で、その教科書には、「油断大敵」というタイトルで掲載されていたそうな。

確かに、「ウサギは油断したから負けてしまったんだよ!だから、油断大敵!いつも気持ちを入れて頑張るのよ!」とか。
「脚力でウサギにはるかに劣るカメでも、地道に頑張れば、最後には大きな成功を収められるんだよ。」とか、そんな教訓を読み取るお話だったと思う。

ところが、最近、違う教訓を紹介するYouTubeを見た。
「ウサギが負けたのは、カメを気にしてばかりで、ちっとも「ゴールの旗」を見ていなかったからだ。」というのだ。
一方、カメは、「ゴールの旗」を見続けていたのだろう。一途に。

ヤツとは、2年くらい前に、関係が壊れた。
それ以前の関係は、極めて良好であった。
コロナ禍で時間を持て余していた私は、彼のプライベートレッスンに週3回ペースで参加していた。
そして、彼のクラスにレギュラーメンバーとして、週2回通っていた。
つまり、週5ペースでテニススクールに通い、そのコーチは、全て、ヤツだったのだ。

2年くらい前のたった1度の、80分のレッスンで、ヤツとの関係が壊れた。
数日後、全てのプライベートレッスンをキャンセルし、ヤツのクラスから他のコーチのクラスに変更した。

土曜日のレッスンの最後の10分。
次のクラスのコーチである、ヤツが、私がプレイするコートのネットの向こう側に現れる。

テニスは、メンタルのスポーツである。
対戦相手との駆け引きの為、思考をフル回転させて、動く。
それでいて、対戦相手にあまり気を取られると、つまらないミスをしてしまう。

土曜日のレッスンの最後の10分。
ヤツが私を見ている。
ヤツも状況がわかっているようで、大概、見ないそぶりをしている。
それでも、私がミスをした直後や、いい動きができた直後に彼を見ると、さっと目をそらすことがある。
ヤツは、見ているのだ。

「ゴールの旗」だけを見ること。
土曜日のレッスンの最後の10分。
ヤツを気にすることなく、プレイだけに集中できるかの修行である。

先月、大きな案件を失注した。
メールでの商談の最終段階、いわゆるクロージングで、私は、とんでもない失敗をしてしまった。
今、一番売りたい案件のお客様である。
2年以上に亘って、ターゲットを絞り込み、DMを送り、改めてサービス内容を充実させてきたのに。。。
新規クライアントの満足、つまり、私にとっての「ゴールの旗」だけを見ていればよかったのに。
最後の最後に、私は、よそ見をしてしまい、おかしな駆け引きをしてしまった。

強烈な教訓を得たのでした。

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