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後楽園(63/100)

お疲れ様です。

日中は小春日和でも陽が落ちた途端にやっぱり冬だったと身を縮めます。

私は改札を出て目を疑いました。目の前をすごいスピードのオレンジ色の物体がまっすぐ上に向かって飛んで消えました。消えた後に微かに人の叫び声が残りました。

視界が広がると白く組まれた鉄筋。それは後楽園遊園地のジェットコースターでした。それにしてもこんな大きなものに今まで気づかなかったものかと自分に驚きました。それとも最近出来たものなのでしょうか。私はジェットコースターの類は苦手です。苦手というよりも乗りません。絶対に乗りません。乗りたくありません。

娘が子供の頃に一度この遊園地にきました。ドンチャックに怯える娘を無理やり並ばせて写真を撮らせました。その腹いせか急にジェットコースターに乗りたいと言い出しました。私はどうせ身長が足りないだろうと思い承諾しましたがどういう技を使ったのか乗れてしまいました。

その時が私の初体験でした。上からバーが降りてベルが鳴り、ゆっくりと動き出しました。ガタ、ガタン、ガタ、ガタンと徐々に高くなっていき、娘の呼びかけにも答えられなくなりました。そんなに高くまで昇らなくてもよいではないか。きっと最新のものより高くはなかったでしょうがその時は大気圏を出てしまうと感じました。そして一瞬の沈黙のあと一気にジェットコースターでした。口から裏返ってしまうような恐怖のなか、されるがまま有無も言えず一回り。

無事に着地できたときの放心状態はありません。係員に促されてコースターを降りる際に足が震えて立てずに転び、手と顔を擦りむきました。娘はこのあと気分が悪くなり泣いていましたが、本当はお父さんが泣きたいくらいでした。

強がりさ 平気な顔は 父だから
     実はパンツが 濡れているのさ

失礼しました。


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