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オープンイノベーション ~イノベーションはゼロから生み出せるのか~

前回の記事では、なぜ今「イノベーション」が重要なのかというテーマで、
・経済発展におけるイノベーションの重要性
・企業活動におけるイノベーションの重要性
・ユーザー主導のイノベーション
について考えてみました。

しかし、イノベーションが重要だということ自体は、以前からずっと言われ続けてきたことです。
そこで今回は、どのような環境からイノベーションが生まれるのかについて考えてみたいと思います。

オープンイノベーション

かつては、ITというのは、既存の業務を効率化するためのツールという扱いであり、IT産業自身も、既存産業を下支えする産業という構図でした。
しかし、IT ――もはやITという言葉さえ古い、より広い意味で―― デジタル・テクノロジーの急速な進化は、その構造を大きく変えています

これまでもスピードという時間軸は重要でありましたが、デジタルの世界での時間軸は、極端に短くなっています。
企業が大きくなればなるほど、既存事業での短期的な施策が優先されるため、将来を十分に見通せない段階で、新しいデジタルビジネスへのリソースの投入を決断するのは困難です。
それでも、この急速な産業構造の変化に、企業はついていかなければなりません。

そこで、オープンイノベーションという手段が重要になってきます。
自社だけでなく、他社、大学、自治体といった異業種・異分野の持つ技術やアイデア、サービス、システム、ノウハウ等を組み合わせ、速く、大きく成長するのです。


イノベーションを生むエコシステム

前回の記事で、イノベーション(市場の競争均衡を撹拌する非連続的な変化)こそが経済発展の駆動力であるという、シュンペーターの経済理論を取り上げました。

彼の代表的な著作『経済発展の理論』では、5種類のイノベーションが登場します。

1)新しい生産物または生産物の新しい品質の創出と実現
2)新しい生産方法の導入
3)産業の新しい組織の創出
4)新しい販売市場の開拓
5)新しい買い付け先の開拓

実は、元々の本の中では「イノベーション」という言葉は使われていません。
代わりにシュンペーターは、「新結合(neue Kombination)」という言葉を用いています。

ここで敢えてこうした表現をしているというのは、非常に面白いことです。
つまり、シュンペーターにとっての「イノベーション」とは、単にゼロからからイチが生まれるようなものではなく、
むしろ、既存のイチとイチを組み合わせることによって新たな産業構造が生まれることを指しているということでしょう。

であるとすれば、やはり自社のリソースだけでイノベーションを起こそうと試みるのはナンセンスだと言えます。

企業活動を、より広い視野・視点・視座で俯瞰し、事業を取り巻く新たなエコシステム(生態系)を構築しなければなりません。
そして、外部と協調しながらも競争をする中で、自社のコアコンピタンス(他が真似できない、自社の核となる独自の強み)を伸ばし、新たな価値を創造することが大切なのです。

進化をしているのは、テクノロジーだけではありません。
それを利用する顧客の考え方や行動も、大きく進化しています。

企業は、ただ新しいことをするというだけでは不十分です。
顧客がワクワクするような体験を提供しなければ、決してイノベーションは起こせないでしょう。

重要なのは、WHAT(何をするか?何を作るか?)よりも、WHY(なぜやるのか?なぜそれが必要なのか?)から始めることなのではないでしょうか。