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8. “姿勢” と “関節疾患” の危険な関係

7合目まで登ってきたみなさんは、良い姿勢になる方法が分かってきたのではないでしょうか?そんなところで、今回は少し怖い話をお話ししようと思います。

今、姿勢が悪いなぁ…というあなたがそのまま60歳、70歳になったらどうなるか、股関節、膝関節の行末についてお伝えします。

悪い姿勢を続けていくと、関節に影響をもたらす疾患になり、痛くて、歩けなくて、好きなスポーツや旅行どころか家事もろくにできない…ということになりかねません。

この8合目を読んだ方はぜひ、周りの姿勢の悪い人にも姿勢改善を勧めてあげてくださいね!
めんどくさいし、別に姿勢悪くても困ってないからまぁいっかぁ、と思っているそこのあなた!って感じで。

人生100年時代!?

まず、これを見てください。

平均寿命と健康寿命

引用:健康日本21(第二次)の推進に関する参考資料. 厚生労働省.

健康寿命とは「健康上の問題で日常生活が制限されずに生活できる期間」のことです。つまり自分で歩いて身の回りのことができる状態です。
現代の平均寿命は80歳を越えていますが、実は最後の約10年は健康でなく介護が必要な状態であり、その原因の21%は関節疾患と言われています。

歩けなくなる関節疾患って?

変形性関節症(Osteoarthritis, OA)を聞いたことがありますか?整形外科領域では最も頻度の高い疾患であり、中でも “膝” の関節症の有病者数は世界で2億4000万人、日本でも2530万人と推定されています。

変形性関節症は、その言葉の通り、関節が変形してしまっている状態です。関節の隙間のクッションの役割をする軟骨がすり減り、骨同士が衝突し、変形していきます

最初は少し痛いかな?くらいでも、次第にあしに体重をかけることが辛くなり、歩けなくなります。

歩けないとあしの筋力が落ちて、運動量が落ちて体重が増加し、ますます関節への負担が増えて変形が進行していきます。

痛くなって出かけられなくなると、気分も落ち込みイライラ、友達と遊ぶのもいやだ…、そして病院に受診し「末期の変形性関節症」と診断されると、人工関節という大きな金属を入れる手術を勧められます。

こちらは国際的な変形性関節症に関する学会 Osteoarthritis Research Society International, OARSI が2019年に発表したポスターの一部です。

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変形性関節症は現代の最新の医療でも “痛みを減らす” ことはできても “治す” ことはできないと書かれています。人工関節に “入れ替える” ことはできても、関節を “元に戻す” ことはできないのです。

じゃあ、どうしたらいいの?(涙

できることはひとつ!変形性関節症にならないこと!です。

再び OARSI のポスターです。

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一番下の段の手術が必要な方は “かなり少数” です。真ん中の段のように “何人か” は薬や治療の効果が期待できる可能性があります。

では、一番上の段の “すべての人は、エクササイズや体重管理の教育を受けるべき” とあります。病気になってからじゃ治らないから、ならないように自分で学んで予防してね!てことです。

では、自分でできることって?

関節疾患と姿勢って関係あるの?

変形性関節症の予防方法をインターネットで調べると、太ももの筋力をつけよう、体重を増やさないようにしよう、の2点がよく書かれています。あれ、姿勢と関係があるのか?て思いますよね。

実は、姿勢が関節にもたらす影響はとっても大きいのです。

まずは、股関節との関係

股関節は寛骨(骨盤の一部)と大腿骨(ももの骨)で構成されており、大腿骨の頭は球体になっています。

股関節は家で例えるなら、寛骨が屋根、大腿骨が柱、筋肉が壁です。ちなみに屋根は大きな上半身を支えているので、とっても重たいです。

左図のように安定している状態がいい姿勢で、どこも頑張る必要ないし、傷みません。ところが姿勢が悪く、骨盤が倒れていたらどうでしょう?(右図

8. “姿勢” と “関節疾患” の危険な関係.001

屋根がグラグラと不安定なのを助けるために柱や壁が頑張ります。一方の壁が引き伸ばされて壊れていき、一方は縮んで硬くなっていきます。柱の頭全体で屋根を支えていたのに、支える範囲が少なくなり、一部で重たい屋根を支えます。

この状態が続くと、壁である筋肉の損傷、柱である大腿骨の頭がすり減りが生じ、変形性股関節症を作り上げていきます。

次は、膝関節との関係

膝関節は大腿骨(ももの骨)、脛骨(すねの骨)、膝蓋骨(お皿)で構成されています。

先ほどの家で例えると、大腿骨が柱上、脛骨が柱下、柱上と柱下の隙間には半月板(クッション)が挟まれており、膝蓋骨が留め具としましょう。

左図が安定した状態、右図が姿勢が崩れてクッションが潰され柱上と柱下がぶつかって削れていく状態です。

8. “姿勢” と “関節疾患” の危険な関係.002

姿勢が悪くなるとガニ股になりO脚になる人、あるいは逆に内股になりX脚になる人がいます。O脚になると膝の内側が痛くなり、X脚になると膝の外側が痛くなります。もちろん留め具である膝蓋骨も傷めてしまいます。この状態が続くと変形性膝関節症になります。

まとめ

以上から、予防として筋力を鍛える = 壁を強くする体重を減らす = 屋根を軽くするのももちろん大切ですが、いくらその2点をクリアしても、安定感のある位置で支える = 良い姿勢を保つことができなければ関節を傷めてしまうことがお分かりいただけたでしょうか。

また、今回は股関節と膝関節の話をしましたが、悪い姿勢は首や腰にも負担がかかっている状態でもあり、頸椎ヘルニア、腰椎ヘルニア、脊柱管狭窄症などの背骨の疾患をもたらし、将来的に痛みや痺れを伴うリスクもあります。

最後にもう一度言います。変形性関節症は治せません。予防しか方法はありません。どうですか?これを読んでもまだ悪い姿勢を続けますか?

今より若い日はありません!今一度、自分の姿勢を見直して、一緒にトレーニングに励みましょう♫

現在地… 8合目だっちゃ☆☆☆☆☆☆☆☆

Reference
1. Yoshimura N. [Epidemiology of osteoarthritis in Japan : the ROAD study]. Clin Calcium. 2011 Jun;21(6):821-5. Japanese. PMID: 21628795.
2. Osteoarthritis Research Society International (OARSI)

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