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【9割の看護師&MSWがしらない⁉︎】認定医療ソーシャルワーカーが解説する退院支援の最重要スキル

この記事では「退院支援が上手くいかない看護師・医療ソーシャルワーカー(以下MSW)の共通点」について解説します。

私は、救命救急センターが設置されている病院で医療ソーシャルワーカー(以下MSW)として働いている社会福祉士7年目です。

社会福祉士取得後、最速で認定医療ソーシャルワーカーと救急認定ソーシャルワーカーを取得しました。

毎月5,000PV以上のソーシャルワーク関連のブログX (フォロワー1,500人以上)などを発信しています。

退院支援は、置かれている地域、社会資源といった前提条件や環境の特殊性によって大きく異なります。

「退院支援の成功体験」はタイミングや個人の力量等が影響するため再現性が低いですが「失敗談」は共通していることが多いため、再現性が高いです。

当記事は「退院支援はこうやるべきだ!」といった理論や概念的な内容ではなく「スムーズに退院支援を行う看護師やMSWってこう働いてるよね」といった「個人の働き方」にフォーカスを当てた内容です。

書籍や論文に掲載されることが少ない「経験」「体験」に基づいた記事になるため「エビデンスがないものは認めない」と考える看護師や社会福祉士の方には不向きな記事となっています。


退院支援は病院経営と表裏一体

診療報酬による入退院支援のシステム化に伴い、多くの病院が退院支援に重点を置いています。

退院支援の表面は「早期に退院して患者の廃用を防ぐ」等の「患者の利益」ですが、裏面は「平均在院日数を短縮してDPCⅡ期以内で病床を稼働する」といった「病院の利益」と表裏一体の関係です。


「退院支援において、重要なことは?」と聞かれたらどのように答えますか?

  • 社会資源を活用する「知識」

  • プレゼンテーションやネゴシエーションの「技術」

  • ○○さんや××病院なら対応してくれるといった「人脈」

無論、全て重要です。上記はほんの一例で、挙げ続ければキリがありません。

多くの方が考える重要なポイントは「早期退院」に紐づく知識や技術が思い浮かんだと思います。


では、「世界で一番早い乗り物に求められる必要なパーツ」を知っていますか?

  • 高性能なエンジン?

  • グリップ力あるタイヤ?

  • カリスマ的ドライバー?

  • 空気抵抗を考えたボディライン?

上記は全て間違いです。これらはあくまで「スピード」を出すためのパーツです。



答えは「ブレーキ」です。

どんなに高性能でスピードを出せる乗り物でも、制御するブレーキが脆弱の場合、大きな事故につながります。


的確なタイミングで“戦略的撤退”の決断ができるか

予定していた退院支援計画の変更は、多くのリソースを費やします。

的確なタイミングで退院支援計画を再評価する判断能力(ブレーキを踏む技術)が欠如していると、状況に応じた退院支援(アクセルをベタ踏みすること)はできません。


退院支援計画に則って支援していく過程で、患者の状態や退院先の都合やキャパシティで予定していた退院先に退院できなくなる場合があります。

「退院支援計画をどのタイミングで変更するか」

ルールを設けている病院は少なく、行き当たりばったりの対応になっていることがほとんどでしょう。

退院支援の計画内容の変更になった場合について明記されています。

当該計画を患者又は家族に交付した後、計画内容が変更となった場合は、患者又は家族に説明を行い、必要時、変更となった計画を交付する。

厚生労働省資料より抜粋

病院の都合(ベッド逼迫、入院継続対象外、移動手段の確保等)と退院先の都合(責任者不在、人員不足、経営状況等)を総合的に判断して計画を変更します。
※クライエントの都合(意向、ADL、金銭等)は記事内容と論点が異なるので割愛します。


ブレーキを踏むことはMSW自身を守る行動

チーム全体で立案した退院支援計画に沿って支援したことに対して「ここまでやってきたし…」が理由でブレーキを踏めなくする心理が働くことがあります。

これは、サンクコスト効果と言います。

サンクコスト効果
既に費やした時間やお金、労力などの取り戻せないコストに対して、非合理的な判断をしてしまう心理現象。
例:自分の価値観に合わない映画を観ていても「お金を払ったんだから最後まで観よう」となるような現象。

ブレーキを踏まなかったチーム全体の責任は、事実上MSWが背負うことになります。MSWの身はMSWで守りましょう。


「退院支援計画を変更したら平均在院日数が長くなるのでは?…」という不安に解答します。

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