見出し画像

鑑賞予定コンサート(3月〜4月、東京)

終わってから感想を書くより、行く前に書いて推すのが better なのでは?

人混みが激しくなり、ますますストレス指数が上がった、極めて退屈で不快な東京だが(ネガティブでごめんよ)、そんな東京にも自慢できる点が1つだけある。クラシック音楽の公演数とそのレベルは、アジアでは確実にナンバーワンだ。

3月・4月は以下の5公演を鑑賞予定。
数多くのコンサートの中から選んだ理由や演奏に対する期待度を書く。
「あら!面白そう!」と思ったら、チケットを買ってしまいましょう!
一緒に鑑賞できることを嬉しく思います!


ワーグナー「トリスタンとイゾルデ」

新国立劇場(新宿初台)
3月14日(木)16:00
3月17日(日)14:00
3月20日(水・祝)14:00
3月23日(土)14:00
3月26日(火)14:00
3月29日(金)14:00
詳細

この作品を2020年3月に鑑賞予定だった。熱心に予習して楽しみにしていたのに、コロナパンデミックで中止(涙)私の記憶違いでなければトリスタンはアンドレアス・シャーガーだったはず。ああ、残念。でも、こうしてまたオペラを鑑賞できる日々が戻ってきてよかった。涙が出るほど嬉しい。あの頃は辛かったね。みんな乗り越えて来た。演奏者も鑑賞者も。

というわけでリベンジ鑑賞をする。
ところが、この演奏時間約4時間の超大作が、なぜか同じ3月に新宿の新国立劇場でも上野の東京・春・音楽祭でもそれぞれ上演される(笑)
なぜだ。おかしい。。(笑)
偶然重なってしまったようだ。ありがた迷惑というか何というか・・・
時期を1年ぐらいずらして演奏して欲しかった。

懐に余裕がある人は両方行くのだろう。私はどちらにしようか悩んで結局、新宿の新国立劇場に行くことにした。どちらも良さそうな出演者を揃えている。初生鑑賞なので、それなら演奏会形式の上野ではなく、ステージオペラの新国立劇場の公演を観たいと思った。

ーーーー
2月19日追記:
トリスタン役がトルステン・ケールからゾルタン・ニャリに変更となった。トルステン・ケールは何度か東京でワーグナー作品を歌っているベテランなのだが、ゾルタン・ニャリ Zoltán NYÁRI は名前さえ知らない・・・
その名の通りハンガリー出身。俳優からオペラ歌手に転身。経歴によると、トリスタン役を含め各地でワーグナーオペラを歌っている。しかし、YouTube検索してみても、これといって一発で実力を把握できるわかりやすい動画はない。まあ、オンラインではなくリアルで活躍する私の知らない歌手がいたということだ。うむ、オンライン動画などどうでも良い。それよりリアルでの活動が大事だ。東京の新国立劇場では初登場だそうだ。きっと来日自体も初めてなのでは?ぜひ張り切って歌って欲しい。大成功すれば確実に日本で人気者になるわよ・・・!
ーーーー

4時間の作品をここで紹介することなんて無理だから省略する(笑)

予習をしたのは4年前なので再予習中。イゾルデよりトリスタンというキャラが気になる。第一幕だが、何を考えているか分からない男だ。つまりイゾルデをどう思っているのか。特に何も感じてませんというフリをしながら、何か引っ掛かる言動をする。一見スマートな人のフリをしているくせに、モヤモヤした男だ。それに、その厭世気質、他人とは思えない(笑)

トリスタンは生まれる前に父は戦死、母はトリスタンを産んですぐ亡くなった。(ジークフリートと同じだ。)幼い時から死ぬとは、生きるとは、愛とはということを悶々と考えて来たのだろう。生きることの価値も知っているが、死ぬことに躊躇いもない。だから、豪傑モロルトと対決できる。毒を飲んで罪を償えと迫るイゾルデに応じて薬を飲む。メロートの剣に自ら身を投げる。憂い顔で自殺願望のある美しい姿をした勇者というわけだ。トリスタン伝説が流行った中世の女性たちはそういうところにキュンとしたのかもね。

メロートの剣で瀕死の重傷を負い、故郷に逃げてきたトリスタンの耳に聞こえてきたのは彼が子供時代に聴いた懐かしい音楽である。牧童の吹くチャルメラの悲しい旋律。通常はイングリッシュホルンで演奏する。トリスタンは意識朦朧としながら、愛に飢えていた幼い男の子だった自分を思い出している。


ショスタコーヴィチのヴァイオリン・ソナタ、ヴィオラ・ソナタ、チェロ・ソナタ

東京文化会館小ホール(上野)
3月29日(金)19:00
詳細

ショスタコーヴィチはロシアの作曲家の中で私が一番好きな作曲家♪

クラシック音楽が好きだと言うと、優雅でうっとりする音楽を好んで聴いているのだろうと勘違いされるのが嫌だ。世間一般の人がイメージするクラシック音楽なんてその程度だ。ああ、ガッカリ。

では、どんな音楽が好きなのかというと、例えばショスタコーヴィチのような音楽が好きなのだ。何と言えば良いのだろう。皮肉に満ちたユーモアたっぷりで刺激的な音楽だ。全く飽きずに聴き続けられる。彼が生きた生きにくかった時代を知り、苦しい心境や嘆きを考えながら、ショッキングなのにニヤリとしてしまう。ケタケタしい音が快感。下に1つショスタコーヴィチの作品の音源を載せるので、この作曲家をご存じでないなら、クラシックって退屈そうと思っているなら、ぜひ聴いてみてね。

黒縁メガネをかけた神経質そうな(でも皮肉好きそうな!)顔のショスタコの写真が実はかなり好きなのだ(笑)Tシャツのデザインにしたら良いのではと思って、数年前にアイデアを絵にしてみた↓

M Suzuki | 2020

ただし、彼のコアジャンルである交響曲については、私はあまり知らない(←おい!笑)

室内楽やピアノ作品はある程度聴いてきた。とりわけ、10年ぐらい前に生鑑賞した武蔵野市民文化会館の弦楽四重奏全曲演奏会や、アレクサンドル・メルニコフが演奏する24の前奏曲とフーガの演奏会は、記憶に残るショスタコ体験だった。ピアノ三重奏曲やピアノ五重奏曲も大好き。生演奏で聴いたこともある。

そういえば最近はあまりショスタコーヴィチの室内楽の生演奏を聴いていない。久しぶりに聴いてみようと思って3月のチケットを買った。いつも海外アーティストばかり追いかけて国内の演奏家の皆さんには申し訳ないのだが、このコンサートは国内の実力派若手演奏家たちが演奏する。きっと凄い演奏をするのだろう!楽しみにしている!

下の音源はプログラムにも含まれているショスタコーヴィチのヴァイオリン・ソナタの第3楽章。いいでしょ!刺激的でしょ!このような作品を知ってしまうと、別に交響曲は聴かなくてもいいやと思ってしまう(笑)


バス歌手ルネ・パーぺの歌曲リサイタル

東京文化会館小ホール(上野)
4月10日(水)19:00
詳細

すでに知っている曲であるムソルグスキー「死の歌と踊り」(下記リンクご参照)以外の曲はまだ予習できていない。

鑑賞を即決したのは、憧れの歌手が歌うから。
クラシック音楽はプログラムも重要だが、誰が出るかというのも重要だ。
憧れのルネ・パーぺが私の好きな死神さんの歌を歌うのであれば、都合のつく限り絶対行くに決まっている。

ドイツのバス歌手ルネ・パーぺを知ったのは、2020年初頭に「トリスタンとイゾルデ」の予習をしていた時だった。借りたDVDで妻イゾルデに裏切られる年老いたマルケ王を歌っていた。ゆっくり、しかし熱く、「なぜ、どうして」と語る、その存在感に圧倒されて、すっかり主役カップルであるトリスタンとイゾルデのことなんて忘れてしまった(笑)

その後、コロナ禍の動画ストリーミングで観たムソルグスキー「ボリス・ゴドゥノフ」にも大いにハマった。(バス歌手が主役を歌う数少ないオペラである!)

ルネ・パーぺの魅力が一発で伝わる動画はなかなかない。どうしてもバスの音域だとテノールのように華やかに目立つ役ではないので・・・ やはりオペラの物語の流れを通して(つまり、最初から観て)ようやくこの人の存在感がグッとくるのだ。

というわけなのだが、よろしければ下の動画を参考にどうぞ。ハンガリーのインタビューで、ハンガリー語はわからないのだが、パーぺさんが喋っているのは英語。過去の演奏映像をまとめているので、どんな雰囲気、どんな声で歌っているか少し伝わるはず。

あれれ、新宿でも上野でも「トリスタンとイゾルデ」を上演するのに、なぜマルケ王をルネ・パーぺ様に歌わせないのだ?わかっていないなぁ・・・

パーぺ様は後述の「エレクトラ」でエレクトラの弟オレストを歌う。そちらも楽しみだ!



ブルックナーのミサ曲第3番

東京文化会館大ホール(上野)
4月13日(土)14:00
詳細

今年はブルックナー生誕200年の年である。
昨年末にアムステルダムで鑑賞した交響曲第3番に続き、初鑑賞となる作品を聴いてみようと思った。ミサ曲はオペラや歌曲と比べると予習しやすい(笑)

予習音源はベルリンフィルのデジタルコンサートホールの動画
(下の動画はその抜粋)


リヒャルト・シュトラウス「エレクトラ」

東京文化会館大ホール(上野)
4月18日(木)19:00
4月21日(日)15:00
演奏会形式で上演
詳細

このオペラのストーリーを簡単に説明しよう。まず作品が始まる前の話だが、母は愛人と共謀して夫である王様を殺害。そして作品が始まる。子供が父の仇として母と愛人を殺害。おしまい(笑)簡単でしょ?(笑)

こんな血生臭いストーリーを作ったリヒャルト・シュトラウスは酷いって?いやいや、これはギリシャ神話をベースにした物語である。脚本を書いたのはシュトラウスではなくホフマンスタール。

クラシック音楽を追いかけているとギリシャ神話とも出会える。そんな音楽ジャンルは他にない。さあ、あなたもクラシック音楽の世界に行ってみましょう!(誘惑)

実は「エレクトラ」の動画は過去に2〜3回観たことがあるのだが、あらすじを読んでも字幕を読んでも私のおバカな頭ではイマイチ理解できず、音楽はカッコいい(というかグロテスク)のだが、飲み込めなかった。同じリヒャルト・シュトラウスの同じグロテスク系のオペラ「サロメ」はすぐに好きになったのに、なぜだろう。

そんな時は、思い切ってチケットを買って生鑑賞するのが良い。わざわざお金を払ったからこそ、しっかり予習して作品を理解しようと頑張る。無料で手に入るものが常にベストとは私は思わない。

3月4月の公演で最後に鑑賞を決断したのがこの公演だった。他の公演の予習で手一杯だから諦めようとしていたのだが、次の機会がいつあるかわからないし、作品の上演時間としては比較的短い(約2時間)のだから、何とか頑張ってみようと思った。

先日、ちょうどロンドンのロイヤル・オペラ・ハウスの「エレクトラ」作品解説イベント動画を見つけたので観てみた。他の作品でもよくお世話になっているが、音楽監督指揮者のアントニオ・パッパーノの解説が好きなのだ。

「エレクトラ」は強烈な音で始まる。そこだけでゾクゾクする。この最初の数音は殺された王様アガメムノンを表すライトモティーフ(動機、リズム・音程)なのだ。エレクトラ(王様の娘)が父を思い出して歌うソロでも、このライトモティーフで「アガメームノン」と歌っている。

気になる音が他にもある。父の復讐を果たしたらダンスを踊るんだと言うエレクトラのダンスの音楽だ。実際に母と愛人が死んだ後にもこのワルツが演奏される。耳に心地よいワルツのようで、アブない予感を感じさせる奇妙な音楽。

アントニオ・パッパーノの解説を聞いてから、
(1)冒頭の数音(アガメムノンのライトモティーフ)
(2)エレクトラが歌う「アガメームノン」
(3)エレクトラの復讐達成ダンス
の音楽が耳から離れない。。頭の中で何度もリピートしてしまう。

ちょっと聞いてみて!(音楽が耳から離れなくなっても知らないけど。笑)

(1)冒頭の数音(アガメムノンのライトモティーフ)


(2)エレクトラが歌う「アガメームノン」


(3)エレクトラの復讐達成ダンス


と言うわけで、チケットを買ってから予習に気合いが入って、だいぶ作品にのめり込んできた。やはりオペラライフを楽しむなら、生鑑賞を目指すのが一番だ。

そこのアナタも、音楽が耳から離れなくなってしまったら、もう生鑑賞するしか解消方法はないのでは?なんちゃって。


ご覧の通り、鑑賞予定5公演のうち4公演が「東京・春・音楽祭」のコンサートやオペラである。

約1ヶ月にわたり春の上野で開催されるこの音楽祭は、世の中の厳しい状況にも関わらず、今も一生懸命パワーアップしているイベントである。世界の大物アーティストと向き合ってコミュニケーションを取り、日本に招いている。

子供っぽい退屈な東京で、大人が本当に楽しめる数少ないイベントとして、「東京・春・音楽祭」は非常に貴重な存在であり、クラシック音楽ファンとして熱心に応援していきたいと思う。

ただし、私はすでに憂鬱でならない!

先日、所用のために上野に行ったのだが、まだ桜など咲いていないのに、激しい人混みでウンザリしてしまった。休憩できる飲食店が1つもない。どこにでもある普通のカフェチェーンでさえ入店待ち。こんな不快な場所には二度と行きたくないと思ったのだが、音楽ファンである限り、東京文化会館を避けることはできない。

ああ、桜の季節が恐ろしい!!
音楽のために3月・4月に4回も上野に行かなければならない!!
悲劇だ!!

目をつぶって、心を無にして、何とか会場まで我慢してたどり着くしかない。ああ、トホホ。日本大嫌い。東京大嫌い。コンサートがあるから仕方なく東京に住んでいるのだが、いったい他の人はなぜこんな不快な東京に集まるのだろう。わけわからない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?