かつての詩65「永遠の皮肉」

「永遠の皮肉」


猫の背を撫で思うのは
ガリバー旅行記にあった馬の国の話
ピエー ル・ブールの猿の惑星でも良いんだが
馬が人間並みの知性を持って生活する国があって
そこでは人間が野生の猿のような扱いを受けていたっけ
ともすれば
僕らが可愛がる動物たちも
立場を置き換えれば酷い話さ
年老いた男は馬に捨てられ保健所で殺処分
鹿に飼われる中年女は優しい家族に可愛がられ
子供たちは猿の動物実験に痛め付けられる
なんとおぞましく滑稽なことだろう
しかしだ
本質は今の人間の行いそのもので
それがジョナサン・スウィフトの永遠の皮肉

猫の背を撫で思うのは
猫は猫で良かった?
犬は犬で良かった?
人間は人間で良かったか?
すべては形状と生命の速度の問題
それぞれが何を思うかはわかりっこなくて
愛すべき姿だったことだけが救いだった訳でもない
見栄えが良かっただけなんだなんて
人間が人間の世界を築けた偶然の幸運

猫の背を撫で思うのは
生きるこそ想いを抱え
死ぬからこそ想いを伝え
残されるからこそ託された
すべては形状と生命の速度の問題
愛なんてイカれた話は要らない
生きるものたちの渾身の生き様を見ようじゃないか
人間の畏敬の念を以て


Masanao Kata©️ 2014
Anywhere Zero Publication©️ 2014

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?