サマセット・モーム『諜報員アシェンデン』

『月と六ペンス』で知られる元MI6の諜報員だったサマセット・モームが、自身の体験を基に描いた1928年のスパイ小説が面白くない訳がない。
主人公である小説家アシェンデンは、Rという人物から英国諜報機関の諜報員にスカウトされる。
時代は第1次世界大戦とロシア革命の渦の中、中立国であるスイスのジュネーブを拠点にアシェンデンは欧州の水面下を暗躍する。
冒険小説みたいな派手な立ち回りなどないが、知恵と度胸と忍耐の心理的駆け引きからは娯楽としてのスパイ小説でない文学としてのスパイ小説たる姿が映し出される。
時代に呑まれ、国家に翻弄され、欲望に振り回される人間たちの悲哀の狭間で、アシェンデンは諜報員として、また小説家として、その目に何が見えたのだろうか。


英国諜報員アシェンデン (新潮文庫) https://www.amazon.co.jp/dp/4102130292/ref=cm_sw_r_cp_apa_i_QVtvEbSV4ZXEF

諜報員アシェンデン (グーテンベルク21)
https://www.amazon.co.jp/dp/B00AQRYPI0/ref=cm_sw_r_cp_apa_i_M8uvEb6T619F6



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?