詩132「循環と場面」

「循環と場面」

私はひどく疲れていた
昨夜はぐっすり眠れたというのに
精神はすっかり削ぎ落され
むき出しの心臓がじくじく疼くようだ
横たわる身体から手を伸ばすと
一冊の本を掴んだ
毎晩のように読んでいる本は
いつもいつも
世界が限られていることを知らせる
今宵も指はこの本を開く――

――私はひどく憑かれていた
昨夜はぐっすり眠れたというのに
精神はすっかり削ぎ落されて
むき出しの心臓がじくじくと疼く
私は身体を横たえて
手を伸ばすと一冊の本が掴めた
毎晩のように読んでいる本だ
いつもいつも
世界が限られていることを教えてくれる
私は今日もこの本に目を通すのだ――

――私はひどく突かれていた
昨夜はぐっすり眠れたというのに
精神はすっかり削ぎ落された
むき出しの心臓がじくじくと疼くみたいに
槍玉の身体は横たわり
手を伸ばせば
一冊の本が手に取れた
毎晩のように読んでいる本
いつもいつも
世界が限られていることを知る
指先はまたこの本を求めていた――

Masanao Kata©️ 2022
Anywhere Zero Publication©️ 2022

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