詩113「氷った男の話」

「氷った男の話」

未来以上の未来を求める時こそ
あらゆる沈黙が目を醒ます

民衆はあの駅前広場で
わからないことを信じるべきだったのか
つまらないことを履き違えるべきだったのか
扉を開く鍵なんてものは常にひとつの存在であった

衝動は冷たい部屋の中で
震える舌を引き抜くべきだったのか
ああ 声が見えないよ
ああ 姿が聞こえないんだ
こんな自分なら溶けてしまえ

未来以上の未来は
つきまとう嫌いに胸が疼いて仕方がない
ラム酒のような褐色の海に浸って
香ばしい甘みの中で溶けてしまうべきだった
もうまっさらに飲み干されたくて


Masanao Kata©️ 2021
Anywhere Zero Publication©️ 2021

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