かつての詩120「思い出だらけ」

「思い出だらけ」

足りないものを足そうにも
前に進めない時もある
未来がないなら過去に
縋るしかないのだが
栄光も挫折も平等に見詰めていたら
もううんざりだ

いつか海の見える丘に登って
夕陽が海岸線の半分まで沈んだ瞬間を見てみたい
それをヘミングウェイと呼ぶことにしようと思ったが
日はまた昇ると言うのに
パパの哀しみもそれでしか言い表せないなんて
言葉という武器よ、さらばだ

今から高台に夕陽を見に行こうか
茜色の儚い光に染まる街並みへ
外に出て空気を吸えば
また一歩
踏み出せるかもしれない

考えれば考えるほど
何故だか急に恥ずかしくなる
この詩さえ足りないものだらけじゃないか
縋るほどの過去でもないし
夕陽と共に
宵闇に溶けてしまいたい
何処かの彼方へ
取るに足らない思い出だらけ
記憶は重くのし掛かり
過去も呪いに過ぎなかった


Masanao Kata©️ 2020
Anywhere Zero Publication©️ 2020

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