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恋は不可抗力

君との間に科学的な根拠なんていらないよ
ただただ好きなだけ
君との間に不和が生じると
僕は僕そっちのけで
君との関係を修復しようとする
半ば自動的に追い立てられるように
恋は不可抗力の罠なんだよ

目が合うたび
イタズラに笑うから
上機嫌な君の
薄紅色のくちびる
見つめていたくなる

何をしていても虚しかった僕に
生きる意味を与えてくれた
君と抱き締め合いながら
生きている喜び 咽び泣くくらい
強く 強く 愛していきたいんだ 永遠に

今頃君は何をしているのだろう
春先に煙るにわか雨は
まるで決壊したダムのようで
僕はただ窓の外を眺めている

地下鉄の階段を駆け上がって
カーブミラーの中をいくつも抜けて
ショーウィンドウの中に映り込んで
瑠璃色の空に思いを馳せて
電光掲示板だらけの街の中に吸い込まれて

カフェのテラス席 コートを着たまま
イルミネーション きれいだねと
いくら話しても 話し足りない
君がいなくなると悲しい
叶わない夢だと知りながら
願わずにはいられなかった

桜が舞う季節になったよ
いみじくも吹きすさぶ命
ひなびた町に越したよ
二人の痕跡から逃げるように
あの頃のようには
もう日々を過ごすこともできなくなったけれど

僕は僕なりの不可抗力に
とどめを刺されそうになりながら
薄紅色の季節に消えていく

苦しいからこそ、もうちょっと生きてみる。