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不妊治療を経て伝えたいこと

不妊治療はよく言われるように、経済的にも精神的にも肉体的にも負担が大きい。それについて体験したことを書いておこうと思う。世の中の情報は、不妊治療の成功体験ばっかりだけど、子供を授からずに不妊治療を終えても楽しい日常を過ごせるよって伝えたい。もう何年も前の事で、ざっくりとしか思い出せないが、誰かの気持ちに寄り添えればと思う。
※これは不妊治療が健康保険適用外だった頃の私の体験談になります。


経済的負担

不妊治療が保険適用外なものが多いので、窓口で支払う金額は全額自己負担で、1回の支払いは万単位になる。不妊治療の助成金があるが、還付方式なので窓口で一度は自腹を切る。そして全額が助成されるわけではない。これから子供を育てていこうと希望している人にとって、産む前からお金が飛んでいく。

さらに不妊治療が本格化し、体外受精、顕微授精へと進んでいくと頻繁に通院しなければならない。仕事をしている女性にとって、月に何日も休暇の申請をすることは難しいだろう。しかも卵巣での卵子の成熟度を確認するためなどで「明日も来院してください」と、何事でもないようにいきなり言われるのだ。治療との両立を諦めて仕事を辞めるか不妊治療を辞めるかを迫られる。仕事を辞めた場合、妻の収入が無くなるので、経済的な損失は大きい。また妻はキャリアが絶たれる。

精神的負担

経済的、肉体的に負担があると精神的にも苦しくなるのは当然だが、それ以上に妊娠できるかできないかという希望と絶望の間で精神を揺さぶられる。私が一番辛かったのは、受精卵を子宮に戻してから、着床したかしていないか、つまり妊娠できたかどうかの結果が分かるまでの期間だった。お腹に入れるまでは確かに生きていたのに、お腹の中で死んだと思うと悲しくて、期待していた分激しく落ち込んだ。毎日の注射でホルモンを人工的にコントロールしているので、気持ちも荒れやすかった。

また、周囲の妊娠、出産の報告がとても嫌だった。自分が落ち込んでいるのに、その気持ちを隠して友人の出産祝いを買い、渡すことが辛かった。他人の祝い事を喜べないことに、自分がこんなに卑しい人間になったんだと、自分が嫌になった。ただ、今から思うと喜べないのは当然の反応だと思う。傷口に塩を刷り込まれているのに、笑顔でプレゼントを渡していた自分のほうが狂気だったと思う。

肉体的負担

個人差が激しいと思うが、私は肉体的にも辛かった。痛みや麻酔に敏感な体質だったので、採卵手術の全身麻酔では看護師によると手術中に吐いたらしいし、目が覚めるのも時間がかかった。目が覚めてからはひどい生理痛のようにお腹が痛くて動けず、麻酔もなかなか抜けきらず意識も朦朧として、一人で帰宅するのは無理だった。夫が会社を早退して私を迎えに来る間に、私より後に採卵手術した人がケロッとして一人でスタコラ帰宅していくのを見た。

採卵前の自己注射も、毎日自分のお腹に注射を刺さないといけないのが嫌だった。注射自体はそんなに痛くないが、この注射で卵巣の卵子を一気に複数個成熟させる。通常は月に一個しか成熟しない卵子を、7個とか10個とか成熟させるので、卵巣も通常の何倍も腫れる。卵巣がその重みでねじれる危険があるので、その間は走ることも禁止され、安静に過ごすよう言われる。ちなみに、卵巣がねじれたら激痛らしく、救急車呼んで、手術ものらしい。

最後に

それもこれも、すべては子供を授かるための負担だと思えばなんとか頑張れた。でも、大変な思いをしても授かるかどうかは何の保証もないのが現実。

私は不妊治療が大変だと言うことを身をもって知ったから、同じ思いをしている人に「頑張って」とか言えない。「友達の妊娠出産を祝いなよ」とか、そんな残酷なこと言えない。

自然に妊娠、出産していく周囲に対して暗い感情を持ったとしても、自分を責めたりしないで欲しい。だってそういう感情が出てしまうのは当然だと思う。そういう時は、無理して祝わなくていいし、疎遠になっても良いと思う。それで関係が終わるようなら、その程度の関係だったまで。自分を大事にして欲しい。

治療中は長いトンネルの中のように感じているだろう。治療が終わっても、そのトンネルをどういう形で抜けるかは人それぞれ違う。自分が思ったような未来がなかったとしても、トンネルの先はいつも明るいよ。自分にしかない人生をちゃんと生きられると思う。

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