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フェイクニュース対策は誰の責任?

2024年9月12日のNACK5『Good Luck! Morning!』内「エコノモーニング」では、こんなお話をしました。

今日は「フェイクニュース対策は誰の責任?」ということで、ソーシャルメディア関連のお話です。

現在、日本では自民党総裁選と立憲民主党の代表選が行われていて、連日、政治関連のニュースが大きく扱われています。また昨日は、アメリカで大統領選挙の候補者同士の討論会も行われました。私が見ているソーシャルメディア、特にXでも、政治関連の話題が非常に増えていると感じます。

こうした政治関連の話題が盛り上がっているときに、ソーシャルメディア上で嘘か本当かわからないような噂話や、意図的に相手を貶めるような偽情報などが多く出回るというのは、世界共通の問題となっていますね。そして、そうした偽情報・フェイクニュース対策を強化したい政府などとソーシャルメディアを提供する企業との間で、対立が深まっています。

ブラジルでは2022年の大統領選後にフェイクニュースがきっかけで議会襲撃事件が起きたことがあります。アメリカでトランプ大統領が落選したときと同じですね。そうしたことを受けて、ブラジル政府はSNSへの規制を強めてきました。

さらにブラジルの最高裁判所も偽情報コンテンツの削除やアカウントの削除をXに求めてきましたが、オーナーのイーロンマスク氏はそうしたことは政府による検閲にあたるとしてそれを拒否、オフィスを閉鎖するなど対立を深めていました。そして8月末には最高裁判所がXへのアクセスを禁止、特殊なツールを使ってアクセスする人には罰金を科すということにまで発展しました。

ブラジルというのはソーシャルメディアの利用が盛んな国で、私は以前、調査にも行ったことがあるのですが、Xの利用を禁止されたブラジルの皆さんは、新たなソーシャルメディアを求めて、BlueskyやThreadsといったサービスへ大移動をしているそうです。

一方、日本ではあまり知られていないかもしれませんが世界で10億人近い利用者がいる「テレグラム」というサービスがあります。このアプリを提供している会社のドゥーロフCEOという人も、麻薬取引や児童ポルノや過激な陰謀論といった違法・有害情報への対策に協力しないということでフランス政府と対立を深め、先月、逮捕されたということがありました。

そして日本ではどうなっているのか、ということですが、日本ではまず、災害時のデマという問題が深刻です。8月の台風の際にはどこどこの川が氾濫したといって古い写真や別の場所の写真がシェアされたりしましたし、地震が起きた際には、何月何日にもっと大きな地震が起こると予知したとか、地震は誰かが意図的に引き起こしたんだとか、定番のデマが流れていました。また、政治関連でも、偽情報が流されたり、誹謗中傷なども、たくさん流れています。有名人に成りすまして投資を呼びかける詐欺広告も問題になりましたね。

こうした状況を踏まえて、総務省では「デジタル空間における情報流通の健全性確保の在り方に関する検討会」という会議が昨年の11月から開催されてきまして、9月10日に議論のとりまとめが公表されました。その要点は3つありまして、1つ目は偽情報などが拡散されているけれども、ソーシャルメディアを提供する企業の自主的な取組のみには期待できない状況である、と厳しく指摘しています。そして2つ目に、こうしたリスクは世界的な問題なので、諸外国と連携・協力して対処していく必要があるということを述べています。ですから、今日ご紹介してきたような世界的な潮流に日本も乗っていくということを述べているんだと私は理解しました。そして3つ目には、デジタル空間における情報流通の健全性確保に向けてさまざまな対策を行っていくという提言を行っています。

XやテレグラムのCEOがブラジルやフランスの政府と対立したように、ソーシャルメディアに問題があるとしても、政府がそこに口出しするのは検閲にあたるのでよくないというのがこれまでの常識でしたし、私も政府がこうした対策に積極的になることには抵抗感があるのですが、そうも言っていられないくらい情報流通の健全性が危うくなっているという認識を政府が示した、といえそうです。具体的に対策はこれから進んでいくようですので、
注視していきたいと思います。

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