マガジンのカバー画像

人生

16
運営しているクリエイター

#詩

2020年6月1日 / 花火

花火のニュースを見て、井上靖の詩を思い出した:

若いころはどうにかして黄色の菊の大輪(たいりん)を夜空に打揚げんものと、寝食を忘れたものです。漆黒の闇の中に一瞬ぱあっと明るく開いて消える黄菊の幻影を、いくど夢に見て床の上に跳び起きたことでしょう。しかし、結局、花火で黄いろい色は出せませんでしたよ。
―― 老花火師は火薬で荒れた手を膝の上において、痣(あざ)のある顔をうつむけて、こう言葉少く語った

もっとみる