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新卒1年目、副業風俗嬢。

コロナ禍でも友人や後輩に恵まれ、充実した大学生活を過ごした。第一志望群から内定をもらって、充実した社会人生活を過ごせると信じていた。

大学では結婚を考えられる恋人もできた。社会人になり、実家を出て、会う頻度を増やせるのが楽しみだった。


生きがいも生活も崩れた


新人全員が集められ、会社指定の課題合格を目指す研修期間中に、体調を崩した。入院をして、休職をした。

1日30個以上の薬を飲み、毎月1万円以上の医療費を払う。給料の代わりになるらしいという傷病手当金は、給料よりもずっと遅く振り込まれるらしい。

これからの人生において医療保険に入れないことがほぼ確定した。残業が常態化した会社で、持病を抱えるわたしに責任が重い業務を任されることはないことを考えると、大幅な昇給もほぼないだろう。


まず、キャッシュフローを立て直さないと、生活が破綻する。


新卒1年目なんて、人の役に立たないもの。新人は、できない仕事が多くて当たり前だ。

わたしは技術職なので、なおさら、技術を身につけるまで何もできない。お客様と接するのは上司だけで、人の役に立っている実感も湧きにくい。

そのうえ、持病の都合で残業が禁止されている。食物アレルギーがあるから誰かと食事をするのは気を遣うし、服薬の都合でお酒は飲めない。

大学時代の友人や後輩と会おうにも、何をしたらいいのかわからない。持病の話をしたら、引かれてしまいそうだ。


人との繋がりが欲しい。人に向き合い、人の役に立ちたい。


源氏名の世界で生きる決意


趣味がギャンブルと旅行の恋人と別れよう。わたしの生活が破綻しそうってときに、恋人を見ていたら心が壊れてしまいそうだし。

せっかくだから、絶対に復縁しないぞ、とお互いに思えるような理由を作ってしまおう。

身体は弱くても、心は強い女になりたい。大きな持病を抱え、結婚を前提に交際していた相手と別れる覚悟を決めた今このときから、失ったら困るものなど何もない。


大学を卒業して就職したわたしが、大都市で見かけるあの大音量のトラックが有名な求人サイトで会員登録するなんて、予想していなかったけれども。

こうしてわたしの、平日は技術と向き合い、土日の半分はお客様と性に、土日のもう半分は病気と向き合う生活が始まった。


店舗の部屋の中で、40分以上かけてお客様に向き合うのは、全然苦ではなく、むしろ楽しい。

恋人と別れてから、お客様の「かわいい」「綺麗」という言葉に、何度も何度も救われた。

わたしの生活と精神の安定は、平日の日中は会社で働くわたしの生活に合わせて予約を入れ、また会いに来てくれる、本指名様によって成立している。


不可思議な生活を楽しみ、記録する


週末に源氏名を名乗る生活を始めてから、男性にとって本指名の風俗嬢の役割について、興味が湧いた。

何度も会いに来てくれる人。
わたしを「女神」と言う人。
人事として、転職の相談に乗ってくれた人。
接客中に泣いてしまっても、また来てくれた人。

この業界には、可愛い子やスタイルの良い子、愛嬌がある子やシフトに入れる子は、たくさんいる。
それでも、わたしを「えっちなおねえさん」ではなく、ひとりの人間として本指名している人たちがいる。

そんなことが起こる世界だなんて、わたしは知らなかった。


大学時代の専攻が社会学だったこともあり、恋愛にも性愛にも、家族にも風俗街にも、もともと探求心を持っていた。

技術を身に着けて自由な働き方ができるようになったとき、貯めたお金で大学院に行って「不思議」を明らかにできたら、きっと楽しい。


恋人ができる、または、会社で昇進するまで。
不可思議な生活の記録をここで、つけてみます。
少し離れた位置から、こっそり覗いてください。


このアカウントを見つけてしまった本指名様は、わたしが源氏名を名乗らなくなったときに、色々とインタビューをさせてください。

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