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ホロコーストを疑っている人のために

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かつてナチスドイツが行ったホロコーストを「なかった」という人たちがいます。それらの主張の代表的なものを、ある海外サイトを参考に論破する試みです。
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2021年6月の記事一覧

ヘウムノ絶滅収容所(3):死体処理

註:トップの写真は、こちらからです。キャプションは「ヘウムノ死の収容所への強制移送のために集められた子供たち(1942年9月)」とあります。 前回までの流れは、1942年前半ごろまでには、ヘウムノ絶滅収容所で、ウッチゲットーのユダヤ人で労働不適格者となる10万人がガス車を使って殺されたことまでが述べられました。今回は、森の中の埋葬地に埋められたそれらの死体を焼却処分し、骨を粉砕してその辺に捨てたり、肥料として使ったという話です。 ヘウムノ収容所に特徴的な事実は、定置式ガス

ヘウムノ絶滅収容所(2):ユダヤ人十万人の絶滅

註:トップの写真は、ウッチ(リッツマンシュタット)から移送されてきたユダヤ人が、コウォ(Kolo:ドイツ占領時代はヴァルトブリュッケン(Warthbrücken)と呼ばれた)で侠軌鉄道に乗り換えさせられるところの写真です。ここからポビエルチェ(Powiercie)というところまで行き、ゾンダーコマンドのトラックでクルムホフ(ヘウムノ)まで運ばれたそうです。 ヘウムノ絶滅収容所は、リビジョニストには何故かあまり人気のない絶滅収容所のようで、ガス車や写真については多少話題にする

ヘウムノ絶滅収容所(1):ヘウムノ絶滅収容所の始まりと基礎

トップの写真は、ガス車の証拠写真としてしばしば使用される有名な写真ですが、この車はガス車ではないそうです。今回は以下サイトから、その解説の部分を引用します。 戦後コウォ(ヘウムノ近郊)で発見されたマギルス車のよく知られた写真は、おそらくガス車を示してはいないでしょう。この書簡を参照。 ゴンビンのユダヤ人殺害に関する調査 レオン・ザモスク 日付:1995年8月25日 件名:ヘウムノ、ガス車 レオン・ザモスクより ヘウムノなどで使用されたガス車の写真や図版を探したいと思ってい

ヘウムノ絶滅収容所(序):ゾンダーコマンド・ランゲの安楽死作戦

註:トップの写真は、ポーランドのポズナンにある第七砦跡です。 今回から何回かに分けて、過去に翻訳してあったヘウムノ絶滅収容所に関するHolocaust Controversiesサイトの記事を修正して新たに新記事として紹介して行きます。 最初に翻訳した時は、翻訳の仕方もそうですが、当時の用語などをあまりよく知らず、知識もまるでなかったため、とにかく訳せばいいだろうという勢いだけだったので、改めて読み直すとあまり出来がよろしくありません。ヘウムノ絶滅収容所って、多分あんまり

ホロコーストの隠蔽:秘密主義とコードワード(2):否定派の言い分

前回も述べた通り、否定派はコードワードを認めません。認めたら否定論はおしまいです。ですから、例えば議論などで、「ここに特別処置と書いてある。これが証拠だ!」と示しても、「特別処置が殺害を意味する証拠はない!」とやり返されるだけです。 ですが、実際には証拠だらけです。ポーランドの証言集からどれほどあるか羅列してみましょう。前回紹介したアーヴィン・バーテルは除きます。全員アウシュヴィッツの元囚人です。 ■ズジスワフ・ミチャラク ■ユゼフ・ミクシュ ■ルドウィック・メイヤー

ホロコーストの隠蔽:秘密主義とコードワード(1):隠蔽の証拠

だいぶ前にこんな記事を訳しています。 これ、翻訳処理が下手くそすぎて直したいくらいなのですが、この頃はとにかく沢山知識を得たくて、翻訳がおざなりになってました。で、確かこの記事を訳そうと思ったのは、「コードワード」というタームが気になっていたからだと記憶します。「コードワード」は「疎開」だったり「再定住」だったり「特別処置」だったり、そうした色々な言い換えなのですが、目的は当然、文書の中に処刑だの絶滅だのと言った直接的かつ明示的な言葉を登場させないことで、そうした行為を隠す

アンチ・ホロコースト否定論のマガジンまとめ

このページは今まで書いてきたホロコースト関連記事をまとめたマガジン一覧を紹介するページです。「ホロコーストを疑っている人のために」は登録を忘れていなければ、全ての関連記事が読めますが、順序は追加順になっており、若干読みにくいかもしれません。「アウシュビッツに関する様々な議論」も追加順です。シリーズ自体はもう少し多いので、そちらも今後追加していくかもしれません。

ホロコースト否定論者の筆頭格マットーニョ論文を自分でやっつけてみよう(4)

今回で、マットーニョの当該論文の論破は完了ですが、今回は蛇足みたいなものですね。マットーニョはこれ、わざとやってんじゃないかとほぼ確信に近く思ってます。プレサックがよほど憎たらしいのでしょう。 それくらい、プレサックが1989年に発表した『アウシュヴィッツ ガス室の操作と技術』は修正主義者たちにとってはショックを与えたのだろうと思います。この本を否定しなければ、修正主義は崩壊する、くらいに受け止めた人も多かったのではないでしょうか。 ですので、私は最初、ホロコースト否定論

ホロコースト否定論者の筆頭格マットーニョ論文を自分でやっつけてみよう(3)

マットーニョ論文を前々回と前回で見てきましたが、ネット、というか一般の否定派は、マットーニョの論理の誘導に引っ掛かって、「アウシュヴィッツ・ビルケナウの火葬場の図面に書いてあった死体置き場はやはり書いてあるとおり死体置き場だったんだ! ガス室じゃなかったんだ!」と納得してたりするのでしょう。 その理屈が単なるハリボテ理論に過ぎないことを見抜けない限り、説得力はそれなりにあるとは思われます。ネットの素人さんのお話を見ていると、当時の文書資料を豊富に使って論証しているところに魅

ホロコースト否定論者の筆頭格マットーニョ論文を自分でやっつけてみよう(2)

今回が実は本題です。これを翻訳しようと思った理由は、この話があるので、一応きちっと論破しておこうと思ったのです。 と言うのは、この話は、例のYoutubeにある動画も使ってるし、その影響で、ネットの素人否定派さんがどうも結構使いまくっているようなのです。私がみただけですけど、4例ほど確認してます。 正直、あまりに馬鹿馬鹿しい話なので、ずっと無視してたのですが、ネット否定派さんはマットーニョの戯言に全然気が付かないようなのです。火葬場の設計上の死体置き場がガス室に使われなか

ホロコースト否定論者の筆頭格マットーニョ論文を自分でやっつけてみよう(1)

さて、今回は、いつものHolocaustControversiesブログサイトなどの海外サイトには解説のないマットーニョによる否定論記事の翻訳をします。目的は一応別にあるので、その為に訳すのが第一目的ですが、ある程度の知識は必要かもですが、じっくりよーーーく読めば、否定論者が非常に姑息な手段を使っていることが読めるというものです。 本来は、我々の方でも色々と資料収集が必要なのですが、そんなの素人にはほとんど無理な話ですので、とにかく騙されないようじっくりと読解に挑戦してもら

ポーランドの戦争犯罪証言記録サイトに見る殺人ガスの証言証拠(5)

ひとまず、ポーランドの証言集の翻訳は今回で終了です。しかし何度も言ってるように、非常にこの証言集は貴重であり、今まで知らなかった情報も数多く提供してくれ、さまざまな発見がありますので、できたら今回訳したガス関連以外も含め、全部訳したいのですけどね。多分、他も含めたら数千件はあると思われるので、流石にそれは無理だとは思いますが、ホロコースト否定派は、「証言なんか信用できない」と言いますけど、証言でしか得られない情報はたくさんあるのです。 ところで、否定派は、「正史派は「多数の

ポーランドの戦争犯罪証言記録サイトに見る殺人ガスの証言証拠(4)

証言集の翻訳を続けるかやめるか悩んだ末に、今回を含めてあと2回だけ、つまり全部で26ページ分あるうちの5ページ分、人数の割合にして、約500人中100人程度ですから、20%分だけ翻訳することにしました。翻訳しない残り80%は非常に勿体無いですが、もしかすると今後断続的に翻訳するかも知れません。それくらい少なくとも私自身にとっては非常に資するものがある証言集です。 その大半が、全く知らなかった人や内容がほとんどであり、かつ様々な発見もあります。どうにかして、それらの発見内容を

ポーランドの戦争犯罪証言記録サイトに見る殺人ガスの証言証拠(3)

普段は、ホロコースト否定論への対抗意識ばかりが強いのですが、今回の翻訳シリーズは、気分的には否定論への対抗意識はあるものの訳していてなんだかいろんな発見があり楽しいですね。今回も色々発見があります。というか、囚人の証言を訳していると、今まで思っていたアウシュヴィッツ収容所のイメージが少しずつ違って見えててきた気がします。そこには確かに生の人間がいたんだ、と。当たり前のことなのですけどね。 毎度の如く長いですが、はっきり言いまして、おそらく日本語では本邦初公開の証言ばかりです