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大川橋蔵主演・若さま第10作目『若さま侍捕物帖 お化粧蜘蛛』(1962)紹介と感想+シリーズ総評


あらすじ

深川埋立地の歓楽街。半年前に肥前屋が殺されてからは、唐津屋と越前屋が支配していた。肥前屋は息を引き取る前に、通りかかったお千代とおりょうに蜘蛛の絵が描かれた割符の一つを文字春に届けて欲しいと頼んだ。
そんな深川で、遠州屋小吉は夜桜の辰が率いる一隊に絡まれているところを若さまに助けられる。若さまも独自に捜査を始めていたのだ。
唐津屋と越前屋は肥前屋が持っていた割符を探していた。割符のために三次は文字春の家へ盗みに入るが、若さまと小吉の前で殺される。
若さまは、唐津屋と越前屋へ探りを入れに行き、帰りに夜桜の辰との一悶着が起こる。
どうやら、唐津屋と越前屋の背後には大物が控えているようだ。
割符に隠された秘密とは何なのか。暴力が蔓延する暗黒街を舞台に、若さまの調べは進む。

紹介と感想

大川橋蔵の若さま最終作は、前作とは打って変わって暗黒街を舞台に、若さまと権力者の大掛かりな戦いが描かれます。
開始直後から殺人が起こり、その後も暴力と殺人が留まるところを知らずに押し寄せます。

ミステリー的な興味は肥前屋が持っていた割符の行方くらいで、終始強敵との戦いがメインです。
若さまと仲良くなった者も消されますが、暗黒街で苦しめられている人々は若さまに街の浄化を必死に頼むしかありませんでした。

若さ溢れる松方弘樹が演じる夜桜の辰は、もう一人の主役として活躍していました。
菅貫太郎も若さが溢れており、今回は文字春に惚れているが、拷問に耐え切れず文字春の秘密を唐津屋達に話してしまい、文字春に殺害される哀れな男を演じていました。

映画の最後は、若さまとおいとが二人でのんびり釣りをする場面で終わります。シリーズの最後として、これからもこんな日常が続くことを予感させるような終わり方で良かったです。

最後の作品でも美しい佇まいと殺陣を見せてくれる若さま。
難しいことは考えず、最後の若さまの活躍を無心に楽しめる作品でした。

キャスト

    若さま/大川橋蔵

    おいと/桜町弘子
  遠州屋小吉/田中春男

   夜桜の辰/松方弘樹
    文字春/久保菜穂子
    お千代/松島トモ子
   おりょう/小野恵子
     美音/佐久間良子
    清十郎/菅 貫太郎
 いたちの三次/徳大寺 伸
    五郎八/左 卜全
肥前屋多左衛門/香川良介
  菅野三郎左/柳家金語楼(東宝)
     千太/堺 駿二
越前屋久左衛門/佐藤慶
 唐津屋十兵衛/山形 勲

映画概要

「若さま侍捕物帖 お化粧蜘蛛」(1962)
原作:城 昌幸
脚本:鈴木兵吾
監督:松田定次、松村昌治
時間:84分

シリーズお気に入り作品について

大川若さま全10作の感想の最後に、シリーズを通した話と、特に面白いと思った作品を書いておきます。

大川橋蔵が演じる若さまは、基本的には正義に熱く軽やかな自由人であることは一貫していましたが、50年代と60年代で造形が少し変化したと思います。
50年代は無邪気な若さが前面にでていましたが、後期3作品は無邪気さが少しなりを潜め、重厚さが出てくるようになったと感じました。

この時代の捕物映画シリーズの中でも安定度の高いシリーズであり、どの作品も一定以上に楽しめました。
しかし、中でも以下の4作品が特に印象に残りました。

4作目「鮮血の晴着」と5作目「深夜の死美人」は、1時間程度の尺で捕物ドラマとして過不足なくまとまっており面白かったです。
8作目「若さま侍捕物帖」は豪華な娯楽時代劇としての良さがあり、9作目「黒い椿」はサスペンスドラマ好きとして印象に残りました。

東映・大川橋蔵主演シリーズ作品リスト
01「若さま侍捕物手帖 地獄の皿屋敷」(1956)原作:『双色渦紋』
02「若さま侍捕物手帖 べらんめえ活人剣」(1956)原作:『双色渦紋』
03「若さま侍捕物帖 魔の死美人屋敷」(1956)原作:『おえん殿始末』
04「若さま侍捕物帖 鮮血の晴着」(1957)原作:「五月雨ごろし」
05「若さま侍捕物帖 深夜の死美人」(1957)原作:「だんまり闇」
06「若さま侍捕物帖 鮮血の人魚」(1957) 原作:『人魚鬼』
07「若さま侍捕物帖 紅鶴屋敷」(1958)原作:「紅鶴屋敷」
08「若さま侍捕物帖」(1960)
09「若さま侍捕物帖 黒い椿」(1961)
10「若さま侍捕物帖 お化粧蜘蛛」(1962)


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