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銭形平次捕物控10「七人の花嫁」(1932)+大川橋蔵・主演 第14話 紹介と感想

野村胡堂『銭形平次・青春篇』講談社, 1996, p266-297


あらすじ

祝言の席で次々と拐かされる花嫁。
八五郎に利助、平次までもが、その目の前でさらわれてしまった。
平次はお静との祝言を早めて犯人を見つけ出そうとするが、お静まで拐かされてしまう。
果たして平次はお静を見つけ、事件を解決することができるのか。

紹介と感想

平次二十七歳、お静十八歳の時に起こった年明けの事件です。
利助との和解も描かれる、初期平次の完結編とも言える内容となります。

ミステリーとしては、読者が謎解きをするような内容ではありませんが、平次が何に気づいたかはしっかり明示してくれます。

今作の見どころは、やはり、ここまでの総決算として、お静が過去の事件を振り返って母親を説得したり、捕物の場面で利助が駆けつけたりという連作物語としての盛り上がりにあります。

単発で見るより、初期の話を読んだ後に観ることで面白さが増幅するタイプの話になるので、事前に九話目まで、少なくとも第一話「金色の乙女」と第六話「復讐鬼の姿」を読むと、より楽しく読めると思います。

この後、平次は永遠の三十一歳となり、利助は身体を壊して縄張りを娘のお品へ譲り、ライバルとしては万七が登場する、お馴染みの世界観になっていきます。

「銭形の兄哥、もう大丈夫だ。利助が来たぞッ」
「親分、八五郎が参りました」

野村胡堂『銭形平次・青春篇』講談社, 1996, p296
多勢に無勢で押され気味の平次を助けに駆けつける利助と八五郎

映像化作品

映像化は二つあります。

沢村国太郎・主演 「七人の花嫁」(1932)
大川橋蔵・主演 第十四話「七人の花嫁」(1966)

マキノ正博監督の沢村国太郎主演映画は残念ながら未見。

また、長谷川一夫・主演『銭形平次捕物控シリーズ』の第13本目に「八人の花嫁」(1958) という題名の作品がありますが、花嫁が複数出てくる事とお静が捕まる要素はありますが、内容は映画完全オリジナルのシナリオになります。

大川橋蔵・主演 第十四話「七人の花嫁」(1966)

大枠は原作の流れを躊躇していますが、お鶴とお光に姉妹設定をつける事で、主犯の変更や、そこに至る人間ドラマの変更と、結構大きな変更が目立つ内容となっています。

物語の前半で平次の失敗まで描かれます。シリーズ全体でも珍しいくらい、失敗した平次が町の人に責められ馬鹿にされる様子が描かれます。
その後、お静の方から花嫁の身代わりになることを決め、物語の中盤にはお静が川へ流したものを平次たちが見つける事になります。

捕まっているお静のカッコよさも目立つようになっており、平次とお静はお似合いの夫婦であると分かります。

終盤になると万七の出番が増え、平次と一緒に張り込みをするなど、初期の中では万七の存在が目立つ話でもあります。

ゲスト

 お鶴/根岸明美
 お光/新城みち子
軍兵ヱ/宮口二郎
肥前屋/永野達雄
 お仙/壬生恵子

大川橋蔵版レギュラーキャスト(当話出演者のみ)

 銭形平次/大川橋蔵

  八五郎/佐々十郎
   お静/八千草薫

三輪の万七/藤尾 純
   清吉/池 信一

   お弓/鈴村由美



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