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探偵・癸生川凌介事件譚 Vol.9「五月雨は鈍色の調べ」(G-MODEアーカイブス+/Switch)感想


あらすじ

2004年6月、大雨が降りしきる中、生王正生は癸生川探偵事務所へ顔を出す。
事務所内では白鷺洲伊綱が見知らぬ子どもを追いかけていた。
二人は、ひと騒動ありながらも何とか子どもの祖父に迎えに来てもらう事に成功する。
それからしばらくして、「白鷺洲さんっていう探偵助手がいたと思うんですが……」と、一人の男性が事務所を訪ねてきた。
螻川内と名乗る彼が会いに来たのは、伊綱ではなく、今は居ない白鷺洲涼二の方だった。
8年前の約束を果たしに来たと告げる螻川内に、伊綱は8年前の出来事を尋ねる。
螻川内は、1996年の梅雨、今日と同じように鈍色の雨模様の中で起こった出来事について、ゆっくりと語り始めた。

感想(ネタバレなし)

雨という演出が活かされた、とても良い短編ミステリーでした。
良質な短編ミステリーを遊びたい時は、是非800円を出して作品世界に浸ってください。
事件自体は過去の物語として完結しているため、この作品から始めても大丈夫です。
作品が気に入り、気になった要素がある場合は、後から過去のシリーズを遊ぶという形で問題ありません。
Switchだけでなく、Steamでも遊べます。


感想(やや推測できる情報あり)

(明確なネタバレは書いてませんが、内容から推測できることも多いと思いますので、未プレイで自分で遊ぶ予定の人は気を付けてください)

物語は、プロローグとエピローグに2004年の現代パートが入りますが、本編は1996年の出来事になります。

プレイ時間はシリーズ内でも短い方で、自ら積極的に謎解きをしていくタイプの物語ではありませんが、シリーズ得意の時間を使ったちょっとした仕掛けと、表に見える人間関係の反転を活かした物語構成がストーリー上に良い効果を上げていました。

親子の関係と、人を信じるという事についての意味について描かれており、重たい内容ですが、同時に希望も描いていたと思います。

最後の最後、ここまで物語を読んだうえで託されるエンディング分岐に至る選択肢は、物語から感じるプレーヤーの心理を踏まえた、ゲームという媒体を活かしたものになっていました。

過去編でありながら、今まで断片的に描かれてきた事、特にある人物についてハッキリと描いており、シリーズとしても重要な作品だと思います。
事件の黒幕と言える、ある自分については、ここまで遊んできて内容を振り返って「ちゃんと有言実行してた!」と思いました。

涼二の安定感は素晴らしく、彼が視点人物となる過去編をもっと遊んでみたくなります。
癸生川先生は過去の姿は今よりも汚かったですが、中身は変わらず、とても変人だけど間違いなく名探偵で安心しました。

演出面でも、重く切ない話しに呼応するような雨が降り続く描写と、ゲーム中に聞こえ続ける雨音が効果的に機能しており、当時のガラゲーでここまで表現できていたのかとビックリしました。

久しぶりにシリーズを遊びましたが、やはりとても好きなシリーズであることを再確認しました。
次はいよいよ「永劫会事件」になるので楽しみです!

(クリアした日:2023年11月18日)


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