「たたかう読書」

大学時代、わたしは２年間だけ「新聞奨学生」をしていました。
「新聞奨学生」とは、朝夕刊の新聞配達をして学費を稼ぐ奨学生制度のことです。
新聞約300部を自転車に積み（朝刊は全部積みきれませんが）、深夜の東京・世田谷をぐるぐる配達しておりました。
雨で全身びしょ濡れになったり、新聞のインクが付いて顔が黒くなったり、「苦学生」のイメージにぴったりな生活を送っていました。
理由は、東京に行きたかったから。地元・北海道では知的好奇心を解消しきれませんでした。東京の大学で学び、東京で働く「キャリアウーマン」に憧れ、自身もそうなれるように、新聞配達の道を選びました。
新聞配達の日々は、本当にしんどかった。運動嫌いなわたしは疲労がすぐ溜まり、日々の生活に余裕がなくなり、小さなことにイライラし、従業員さんや学生たちに迷惑をかけ…あまり友好な関係を作れなかったのを覚えています。当時関わっていた人たちには本当に申し訳ないと思っています。

結果として今は大阪で会社員をしております。自分の願う道と方向は違えど、「キャリアウーマン」の階段にはたどり着けているのかな…と思います。
上を見たらキリがありませんが、わたし自身「よくここまで頑張れたなぁ」と自画自賛します（笑）労働と学問の両立ができたのは、学問としていた「文学」に夢中になれたからです。
こんなに面白いものはない。もっともっと学びたいから、働かなきゃ！そう言い聞かせていました。あまりに疲れて辛いときは山田詠美を手に取り、物語世界に没頭してやる気を奮い立たせていました。

「なんでそこまで夢中になれるの？」
「文学部って、将来何になるの？作家？」
なんてことも言われたことがありますが、会社員生活で役立つことがたくさんあります。
活字を読み、文章を理解し、物語世界を想像する。この「想像力」が会社員生活でもすごく大事だ、と上司に言われます。

★想像力を鍛えて、日々の仕事に活用する
★物語世界に没頭し、涙を流したり笑ったりして、ストレス発散をする
★また明日もがんばれるように、本の中の言葉に励ましてもらう

今回は「たたかう読書」です。
世の中には理不尽なことがたくさんあります。「○○だからしょうがない」と割り切るとどうしても疲れてしまいます。
理不尽な日常を生き抜くため、また明日も頑張ろうと思うためにわたしは「たたかう読書」をしています。

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●安野モヨコ『働きマン』（講談社）

働く女性の物語の代表作。週刊誌の編集者である主人公・松方弘子は時に寝食忘れて仕事に没頭してしまう「働きマン」である。
「あたしは「仕事したなー」と思って死にたい」という名言が出るほどの働き様には、女性の生き方・働き方を深く考えさせられる。

●おかざき真里『サプリ』全10巻（祥伝社）

同じく働く女性の物語の代表作。こちらは「恋と仕事」という二大テーマで物語が進む。
「努力が評価されるのは義務教育まで」「疲れた顔した女に仕事頼もうなんて思わないでしょ？」等、数々の名言がちりばめられている。大手広告代理店を舞台にした、「キャリアウーマン」のイメージぴったりの女性が登場する。

●岡崎京子『Pink』（マガジンハウス）

ワニを飼うために売春をするOL・ユミの「愛」と「資本主義」の物語。
「すべての仕事は売春である」と書かれたあとがき含め、いままでの価値観を見直すきっかけとなる一冊。

●綿矢りさ『夢を与える』（河出書房新社）

「夢を与える」職業・芸能人となった夕子の残酷な物語。ダークな世界に惹きこまれてしまう。

●阿仁谷ユイジ『夢喰い王子の憂鬱』（太田出版）
たけしまの読書感想文（https://note.mu/mrn_123_mrn/n/n4f0e0fd8a0b8?magazine_key=m717271433b42）
既出。「夢」について考える一冊。

●林真理子『野心のすすめ』（講談社現代新書）
「やる気スイッチ」を自然と押してくれる一冊。このいかつい眼差しが格好いい。

●山田詠美『メイク・ミー・シック』（集英社文庫）

たけしまの読書感想文（https://note.mu/mrn_123_mrn/n/nd427a6fab6da?magazine_key=m717271433b42）
既出。女性の参考書のような存在。

●千早茜『男ともだち』（文藝春秋）

たけしまの読書感想文（https://note.mu/mrn_123_mrn/n/n2572925b9c86?magazine_key=m717271433b42）
既出。最近物語世界に没頭した一冊。主人公の深みある心理描写も読みごたえがある。

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時にはたたかい、時には休みを繰り返し、日々働いています。

みなさんの「たたかう読書」は何ですか？

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