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ささかわの読書感想文(その2)

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「超おもしろかった」本の読書感想文、その2。
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2016年2月の記事一覧

桐野夏生『ハピネス』

桐野夏生『ハピネス』

桐野夏生『ハピネス』(光文社文庫)

若々しくて、綺麗で、セレブで、おしゃれで、ハッピーなママライフ。

桐野夏生『ハピネス』は、女性誌に頻出しているこれらの言葉を体現するような人たちが暮らす、東京都・江東区の五十二階建てのタワーマンションが舞台の物語である。

このタワーマンションに暮らす専業主婦の有紗は、娘の花奈と二人でタワマン生活を謳歌している。夫は海外に単身赴任しており、有紗の実家は新潟と

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藤原美智子『美しい朝で人生を変える』(幻冬舎文庫)
スタイリストとして活躍する著者が40代にして決意した「朝型生活」の効果を語ったエッセイ。朝活をすることで一番感じるのは、朝早く起きて充実した時間を過ごせた!という達成感だと語る。自分をもっと好きになれる朝活のススメに納得の一冊。

羽田圭介『スクラップ・アンド・ビルド』

羽田圭介『スクラップ・アンド・ビルド』

羽田圭介『スクラップ・アンド・ビルド』(文藝春秋)

羽田圭介『スクラップ・アンド・ビルド』は現代社会の現実と、皮肉と、ずるさを多分に感じられる物語である。

「もうじいちゃんなんて、早よう寝たきり病院にでもやってしまえばよか」(11頁)

二十八歳の孫・健斗は八十七歳の祖父のこの台詞を毎日のように聞いている。新卒で入った仕事を辞め、アルバイトで食いつなぐ健斗はフルタイムで働く母のサポートのた

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吉田修一『パーク・ライフ』(文春文庫)
日比谷公園を真上から見ると、人体解剖図のように見える。人間は汗のように公園の門から流れ出ていく…。営業マンの「ぼく」の視点から「流れ出る」人間の風景が切り取られる物語。「ぼく」の心象風景と実際の風景が融合する場面がすごく好き。芥川賞受賞作。

本谷有希子『異類婚姻譚』
「ある日、自分の顔が旦那の顔とそっくりになっていることに気が付いた。」結婚6年目、専業主婦としてゆるやかな日々を過ごす「私」はある日から夫と融合していくような感覚を味わう。同時に夫の顔も人間ではない「異類」に見えてきて…夫婦の結びつきを描く芥川賞受賞作。