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かわいい読書

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装丁がかわいい本の読書感想文。
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2015年4月の記事一覧

本谷有希子『ぬるい毒』(新潮文庫)
私はださくなんかない。卑屈な自意識を持つ主人公の元に突如近付いてきた向伊と名乗る男は、垢抜けた私に驚く笑顔の"悪魔"だった。向伊の思惑に違和感を感じるも、私はぬるい毒に侵され反撃ができない…。自意識が追い詰められる様子を描いた哀しい絶望の物語。

田辺聖子『ジョゼと虎と魚たち』
生まれつき足が不自由でひっそりと生きてきたジョゼと普通の大学生・恒夫のもろくて愛おしい日々…。表題作ほか八編の恋愛物語。恋愛は壊れやすいものだから、人は熱いまま蓋をしようとしたり、冷めきった瞬間を感じたりするのだろうか。 #かわいい読書 #再読

田辺聖子『孤独な夜のココア』

田辺聖子『孤独な夜のココア』(新潮文庫)

20代の働く女性の様子は、40年前からあんまり変わっていない。本書が刊行された昭和53年(1978年)に20代であった女性達は、いまや還暦の年だ。その当時、職場は男性が圧倒的な主導権を握り、ガシガシ働く女性は天然記念物であり、働く女性はいたとしてもみんな腰掛け気分で働いていたのだろう、なんて失礼なことを思っていたが、30代で働く女性を「ハイ・ミス」と

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津村記久子『とにかくうちに帰ります』(新潮社)
ささやかなストレスを日々感じながら仕事をする営業事務の女性たちの物語。傲慢無礼な営業マンへの扱い方を描く「職場の作法」、豪雨の中の帰り道のやるせなさを描いた表題作の2編収録。くつろぎを求めてやまない心理がよくわかる。 #かわいい読書

山田詠美『放課後の音符』(新潮文庫)
17歳・女子高生の放課後は、甘酸っぱい好奇心に満ちている。恋に憧れ、片想いに苦しみ、両想いの幸福を味わう放課後の時間に彼女たちは「いやらしい」が「いとおしい」に変わることを学ぶのだ。彼女たちの成長を描いた8編の物語集。 #かわいい読書 #再読