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ショートショートnote杯 表彰式&ゲーム会に参加してきました

こんにちは。文京小噺あらため、刈川メリです。(ペンネームを変えました)

先日ショートショートnote杯で「ゾッとするで賞」を頂き、審査員と受賞者の皆さんがzoomで集う表彰式&ゲーム会に参加してきました。
改めて審査員の皆さま、そしてnoteを読んでくださった皆さま、ありがとうございました。

もちろん自分は受賞者の方々ともはじめましての状態なので、zoomに入室するボタンを押すのにかなり緊張しました。心の中では「よろしくお願いしまあああす!」と叫び鼻血出しているサマーウォーズのワンシーンさながらです。

ぞくぞくと画面が増えていくzoom内。「受賞者」という脳内のフィルターから、ずーっと参加者全員が文豪に見えてました。(のちに「この人たち本当に文豪なんだな・・・」と驚愕するのですが)

田丸さん、晋平さん(勝手に晋平さん呼びですみません)、せきしろさんの和やかな掛け合いから会はスタート。
大賞から順に受賞者のコメントと審査員のコメントがありました。
当たり前のことなのですが、文章を日頃から書く方々って、話し言葉も上手なんですね。皆さんとても謙虚なのに、そこから滲み出る個性と、すらすらと聞き取りやすいコメント。作者の個性を目の前にすると、作品の見え方にまた深みが出るようでした。

ショートショートってなんなのだろう?

話は逸れますが、「ショートショートってなんなのだろう」と考えることが多々あります。

私は昔から生粋の星新一のファンでもあるので、「引き込まれる舞台設定、自然だけどどこか違和感を覚える展開、予期せぬオチ」、そいうったTHE 星新一の世界がショートショートだと思い込んでこれまでやってきました。し、これからもこの考えを軸に私は書いていくと思います。(本来、星新一を語るのにこんな安直な言葉で流すのは冒涜ですが、ご了承ください。)

しかし、今回の賞を通じて、いかに自分のショートショートの視野が狭かったのかを痛感し、これまでにない楽しみ方の幅がグッと広がりました。

例えば大賞を受賞された、ますだななこさんの「君に贈る火星の」。

この作品では、火星を刑務所に見立てている設定が冒頭から描かれます。
もうこの唯一無二のアイデアが出た時点で勝ちルートに乗っかっているのですが、例えそのアイデアを思いついたとしても、きっと自分ならば「火星=刑務所」を“オチ”として最後に持っていき、厚みもくそもない話に濾過してしまって落選していたと思います。

本作品、人によっては感動、人によっては絶望などいろいろな読後感があると思いますが、この作品の凄みというのは、この火星=刑務所というビッグアイデアに包まれながらも、410字の中で「絶望」「希望」「愛情」「後悔」ect...の感情が高速で掻き回される圧倒的なレトリックにあると思いました。
やっとこさ娘が字を書ける年齢になったと思ったら、いつの間にか結婚の歳まで年月が経っている。刑務所の内と外、この壁一枚でどれだけ互いの体感時間に歪みが起きるのか、刑務所がどれほど閉塞的な場所か。読み切ったときには数え切れないほどの感情がごっちゃになっていました。
そして大賞の決め手となったであろう最後の一文。あとで聞いた話ですが、ますださんは現役コピーライターということで、この一文にますだななこさんのプロとしての生業が詰まっていたと実感しました。

もう少しだけ紹介させてください。
続いて、天野弱さんの作品。

ATMでよく跳ね返される「始めからやり直してください」という機械的な声。自分はよく暗証番号を間違えたりする情けない人間なので、何回この説教を聞かされたことか。

そんな煩わしいと思っていたATMの言葉が、いつの間にか自分を支える言葉になっていた、という話。
「始めからやり直してください、夢諦めないでください、頑張って」。こう書くと、あんなにも事務的だった「始めからやり直してください」という言葉の印象が180度変わります。
自分はこれを読んだときにびっくりしました。固定概念がぶち壊される感覚。どうしたらこんな多角的に言葉を捉えられるのだろうと。

語り出すとキリがないのですが、他の受賞作品もそうですし、最終ノミネート作品も然りです。先述した自分の考える「ショートショート」なんて、結局自分が書いていた作品以外になかったのです。どれも410字という制限の中で、水を得た魚のように、それぞれがそれぞれのnoteのページで色んな泳ぎを楽しんでいる。
もちろん、プロのショートショート作家としてお金を稼ぐためには、基本的な構成や文章のメソッドはあるのだと思います。しかし、今回の賞ではそういった正しい(であろう)フォーム、正しい(であろう)経験さえも凌駕する作品がこんなにも多くあるんだなと、これまでの自分の不確かな思い込みをひどく反省&痛感するきっかけにもなりました。
しかし、もうこれだけ百者千様といっても過言ではないフィールドとわかれば、周りの作品に迷うことなく自分なりの作風を突き詰めていこうとも今回の結果を経て決心できました。

で、すみません、話は表彰式&ゲーム会に戻ります。

zoomでは大賞から順に紹介されるのですが、作者のコメントにもたくさんのユーモアなり、悩みなり、楽しみなりが垣間みえて本当に勉強になりました。

肝心の自分の順番がきたときは緊張でよく覚えていません。
一番伝えたかった「ゾッとする話がすきだから、ゾッとするで賞は自分にとって大賞くらいに嬉しい」という話ができていたような、できていなかったような。
佳作&時間の関係もあり、審査員からのコメントがなかったので、実際に自分の作品にどんな反応を持たれたのか分からないまま終わってしまいました。勇気を出して聞けばよかったなあ。

そんな感じで一通り表彰式が終わった後、さっそく即興ショートショート大会がはじまりました(ド緊張)。

画面に出されたカードから2枚組み合わせてタイトルを作り、5分で書いてくださいという課題。
晋平さんの「楽しみましょう!」という言葉とは裏腹に、脳内フルスロットル、心臓破裂寸前、みたいな心境でした。

カードはたしかこんな感じ。

「クリスマス」「1分」「部」「二人用」「バス」「振り返ると」「イライラする」

パンっと出されて、1分でタイトル決定、5分で執筆という地獄が始まります。

「1分でタイトル考えてください〜」を晋平さん。

心の中では・・・・
(えーーーー。えーーーー!?)
で20秒経過。

(バス・・・バス面白くなりそう・・・・)
でさらに10秒経過。

(1分バス・・・どんなバスだよ・・・イライラするバス・・・・どんなバス!?)
で20秒経過。

(思考停止・・・・・・・)
でタイムアップ。

すぐさまリスタートされて5分で執筆しなければなりません。

こんな心境で書いた乱文をどうぞ。

「イライラするバス」

遅い、高い、そして目的地にたどり着かない。
こんなイライラするバスの乗車金は片道10万円。
けれどこれを楽しむ人がいる。

このバスは、地位も名誉もそしてお金も手に入れ、
人生にイライラがなくなった人のためのバス。

死ぬほど焦って考えて書いた1作。
時計を見る。2分半。
あれ?時間余った・・・?もう1作やってみるか・・・?

「1分バス」

1分バス。それは、ただ1分だけ乗れるバス。
行こうにもだいたい知っているコンビニか公園にたどり着くのがやっとだ。息子と一緒にバスに乗る。ただ1分だけだけど。

「お父さん、あそこにピンクの建物があるんだね!」
「お父さん、あそこに不思議な形をした雲があるよ!」
「お父さん、ここの道路ってこんなに車が通っているんだね」
「お父さん、信号ってこんなに高いんだね」

たったの1分だけだけど、息子にとっては1日分の新鮮な景色があったようだった。

時計を見る。残り2秒。

「はい手をとめてください〜もうこれ以上書いてはいけません」という晋平さんの声。
もう晋平さんのこと、試験官にしか見えなかった。不合格な気がする。(合否などない)

次々とzoomのチャット欄に参加者の作品があげられる。

怒られるの覚悟で言うのですが、実は最後にチャット欄にあげられた作品を全てコピーしてまして(照)、もちろん本人の許可なしにあげられないのであげないのですが、が、が!とんでもなくクオリティーの高い作品だらけでした。

本当に5分で書いたの?自分だけ5分で、他の皆さん30分くらい書いてた?くらいのクオリティーの差でした。
舞台設定、綺麗な文章、華麗なオチ。これが受賞者か・・・そこからはもうショックであまり覚えていません。

中には500字弱のしっかりと完成されたショートショートを書かれた方などいて、本当にびっくりしました。頭の中、どうなっているんでしょうか。

審査員の方々も書いていたのですが、もうなんというか、これがプロかああああって感じでした。自分、もっと精進します。。

それにしても、改めてこのショートショートnoteというカードゲームには人間の限界突破装置が入っているなと思いました。ぜひ皆さん買って楽しんでください。(実は僕も持ってないので買います)


最後に、この賞で安心するなよという自戒を込めて、
表彰式の日を境に「文京小噺」という名を捨て、「刈川メリ」として心新たに書いていくことにしました。


今後ともよろしくお願いします。

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