おわりははじまり
『ねえ、カナ。はじまりとおわりは同時に現れるって知ってる?』
ここは学校帰りにふたりで寄る馴染みの喫茶店。ミホはいつも、私にいろんな発見を教えてくれるの。世界の不思議、映画や恋愛、そして心のこと。
私は、どうしてそんなこと聞くの?とは聞かない。だって、前置きなんていらないこの会話が大好きだから。わかっているから。
『えーと、スタートがあれば、ゴールもあるってこと?』
『そうそう。出会いがあれば、別れもある。問いがあれば、答えもある。すべての物事には、はじまりとおわりが仲良しになっているよね』
『そうね。どんな終わりになるかはともかく、始まりがあれば終わりもある、そういうことでしょ』
『うん。そして、おもしろいのは、おわりがあるってことは、それは、次の新しいはじまりでもあるの。そう考えると、なんだか、この世界の永遠の仕組みがわかる気がしない?』
ミホは、まるで新しい何かを思いついた子どものように無邪気な笑顔を見せた。
『始まりと終わりの連続が永遠ってことかー。たしかに、この世界に完全な終わりってないのかもしれないね。宇宙ですら、終わったら、きっとまた何かが始まる、そういうことだよね』
『うん。出会いとか、私たちの命とか、何かの卒業とか、ぜんぶは繋がってて、それでいて、はじまりが生まれた時点でおわりが生まれ、またはじまりも生まれる。これって永遠でありながら、今すべてがここにあるってことだよね?』
『時間は存在しない。ってやつ?』
『そうそう。永遠に思いを馳せるといつもそう思うの。カナとの、この会話もいつかはおわる。でもそれは私たちが完成させるストーリーでもあるんだよね。なんかね、いますごく嬉しい気持ちなの』
『ミホとの会話がいつか終わると思うと悲しいけど、なくなるわけじゃないのよね、私もなんだか変な気持ちになってきたじゃん。これって尊くて、素晴らしい気持ちだね』
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