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【オト・コク】急救車のミニカーを買売して集収する。

こんばんは、しめじです。

今夜は、ちょっとだけ、言葉の話を。

備忘録? 忘備録?

今日、仕事で見かけたメモに、「忘備録」と書いてあって、びっくりしてしまいました。
今まで「備忘録」だと思って生きてきたので、もしかして自分はずっと間違って使ってきたのか? NOTEの記事のタイトルにも数回使ったけど、そのたびに読んでくださっている方は「この人、国語教師のはずなのに…」とか思われていたのか? とかなり焦ったのですが、手元の辞書をぱっと引いたら「備忘録」と書いてありました。

ただ、「重複」を「じゅうふく」と読むのがだんだん浸透してきたように、「早急」を「そうきゅう」と読むのがだんだん浸透してきたように、「固執」を「こしつ」と読むのがだんだん浸透してきたように、「忘備録」という語も浸透しているのかも、と思って調べてみたところ、こんな記述が。

忘備録(ぼうびろく)は本来は誤記だが(忘れるのに備える記録で備忘録)、和製漢語の造語法としては自然なため(目的語+動詞)、普通に用いられている(Wikipedia「備忘録」)

なるほど。引用もとはWikipediaですが、この記述は出典も示されているので、まあそうなんでしょう。いちいち一次に当たる気は流石にないです。

熟語の構成

「国語教育三大無駄なもの」として挙げられるものとして、(別に三大の形で挙げられているわけではないけれど、よく論われるものとして)

・文節
・書き順
・熟語の構成

なんかがあります。
まあ、文節はちゃんと知識があると、品詞の判断に役立つこともあるので、本当に無駄かと言われると若干議論の余地があると私は思いますが、でもそれ以外の使い道があるかと言われると、ちーんという感じではあるので、学校教育の段階で堂々と文法書の一ページを埋めるほどではない…かも。

熟語の構成は、あれです。

・上の字が下の字を修飾しているもの。(自宅/自らの宅)
・下から上にかえって読むもの。(投石/石を投げる)
・反対の意味の字を組み合わせたもの。(強弱/強いと、弱い)
・似た意味の字を組み合わせたもの。(良好/良く、好ましい)
・上の字が下の字を否定するもの。(未熟/未だ熟さず)

のうちの、どーれだ、っていう、漢検によく出てくるあれです。
あれ、漢検くらいでしか出てこないし、熟語の構成から逆算して何かを考えるケースがない(少なくとも私にはその時が訪れていない)ので、まあ言われてみれば本当に必要か? と思わなくもないですが。

パソコンで文を書く時間の方が長くなって、いざ手で書くと「あれ?」となるようになってくると、案外知っといて損はないな、という気になってきました。
特に、二つ目。下から上に返る、という構造。

さて、漢文の復習。

今まさに漢文学習中の方も、はるか昔に「なんでこんなもん勉強するんだよ」と悪態ついていた方も、私みたいに「漢文ってパズルみたいでスラスラ読めると面白ー」と思っていた方も、思い出してみてください。

漢文の基本的な文の構造ってどうなっていたか。

漢文って、英語のSVOに似た形をとるんですよね。

Sは、Subject。主語です。
Vは、Verb(ヴァーブ)。動詞です。
Oは、Object。目的語です。
ついでにCが、Compliment。補語です。

漢文の場合は、Vの所に述語が入ります。これは、動詞とは限りません。
漢文も、基本的には英語と同様に

主語-述語-目的語

の語順となります。
あるいは、主語-述語-補語です。さらにそこに目的語が加わったり、述語と補語の間に目的語が加わったりもします。

熟語の構成の、「下から上に返る」って、基本的はこの
述語-目的語
述語-補語

の形になってるってことなんですよね。
ちなみに、目的語は、一般的には日本語において「~を」で表されるものです。
補語は、一概には言えませんが、例えば「幸せになる」の「幸せに」とか、「図書館に行く」の「図書館に」、「家へ帰る」の「家へ」など。
「なる」に対しての、「何に?」への答え、「行く」に対しての「どこに?」への答え、という風に、その述語が指す内容をより絞る(あるいは、補う)ための語を補語と言います。

この、下から上に返るパターンの熟語の例を挙げてみます。

及第(第に及ぶ。「第」は、古い中国の官僚試験の合格発表掲示板のことです。これに及ぶ、つまり到達するわけですから、「合格の水準に達している」という意味ですね)
帰宅(宅に帰る)
読書(書を読む)
就寝(寝床に就く)
飲酒(酒を飲む)
求愛(愛を求める)

などなど。
他にも挙げればきりがないですが、「AB」という熟語であれば、「BをA」「BにA」「BからA」という形で読むことが出来ます。

と考えれば、本来は「備忘録」が正しいよね、ということになります。
「忘れることに備える」わけですからね。
ただ、日本語は目的語ー述語の語順をとる言語なので、「忘備」というのも日本で日本語によって生まれた熟語だとすれば自然だよね、ということになるのだそうです。

キュウキュウ車、で焦らない。

この理屈を理解しておくと、便利な場面が一つだけ(私がパッと思いつく限り)存在します。

キュウキュウ車、って漢字で書きたいときに、「救急車」なのか「急救車」なのかで迷わなくて済むということです(笑。

「急(を要する事態の人)を救う」ので、「救急」が正しい、とすぐに考えられます(…まあ、字面見たら「急救車」って違和感あるから間違えないと思いますが)

もしかしたらほかにも語順で悩まなくて済む熟語があるかもしれませんね。

ちなみに、
「あつめること」をさす「シュウシュウ」や、「売り買い」を指す「バイバイ」には、残念ながらこの手が全く通用しません。
一応書いておくと、「収集」と「売買」です。
あと、「トットリ」とかね。「鳥取」か「取鳥」か、書くたびに2秒悩みます。

うーん、やっぱり学校の国語の三大無駄なことからは抜け出せない…のかも。
では、今夜はこの辺で。


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