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古典の文法の話1-5 動詞の活用の「行」の話。

こんばんは。しめじです。

【補筆】4月25日19時半 文面の体裁を整え、最後に練習問題を追加しました。

さて、動詞の活用は覚えられたでしょうか。

今夜は、動詞の活用について、もう一つお話しておきます。ただ、趣味として古文を原文で読めるようになりたい、というだけならそこまで意識しなくていいんですが、高校のテストや大学入試のために勉強するなら問われる知識です。

「四段活用」とだけ答えることはあまりない。

「この動詞の活用について説明しなさい」というような問題が出ることがあります。大抵は、活用の種類、基本形、活用形を答えればOKです(また、この中のどれかだけ聞かれることもあります)。

ところが、この「活用の種類」は、「上一段活用」と答えるだけじゃだめなんです。

「○行上一段活用」のように、最初にそれが何行で活用(何行の音が変化しているのか)をつけて答えます。

例えば、「切る」という動詞は、何行の活用でしょうか。「切る」は四段活用ですね。未然形から順番に、

「切ら」「切り」「切る」「切る」「切れ」「切れ」

と活用しますね。変わる音は「ら、り、る、る、れ、れ」ですから、「ラ行で活用する」と言います。

従って、これは「ラ行四段活用」と言います。ついつい、「きる」の「き」につられて「カ行四段活用」と書く人がいますが、あくまで書くのは「何行で活用しているか」です。

なんですが、これが曲者。

さて、「切る」はラ行四段活用。では、「着る」はどうなるでしょう。

四段以外は一見結構ややこしい。

「着る」は上一段。こちらも未然形から順番に、

「き」「き」「きる」「きる」「きれ」「きよ」

となります。すると、これは何行なんでしょう。「き」は変化していないし、「る」は二回しか出てこないし、「よ」も命令形しかない…。

これ、「カ行上一段活用」になります。「上一段活用=イの段しか使わない」ので、見かけとしては「き」しか出てきませんが、これは「カ行で活用している」扱いです。(だから、私達は「変化」ではなく「活用」というのです)。

何行かの見つけ方としては、六つの活用形の全てに登場する「行」のうちの、最後の一字を見ればいいです。

例えば「過ぐ」なら、「すぎ」「すぎ」「すぐ」「すぐる」「すぐれ」「すぎよ」です。この六つ全てに登場する音のうち、最後の行は「ガ行=ぎ、ぐ」ですね。

だから、「過ぐ」は「ガ行上二段活用」になります。

練習問題

問:次の1~10の動詞の、活用の種類を答えよ。

1 書く(かく) 
2 受く(うく)
3 吐く(はく)
4 似る(にる)
5 蹴る(ける)
6 起く(おく)
7 言ふ(いふ)
8 試みる(こころみる)
9 耐ふ(たふ)
10 経(ふ)
答えは下にあります。








答え:
1 カ行四段活用…後ろに「ず」をつけると「書かず」。四段ですね。

2 カ行下二段活用…後ろに「ず」をつけると「受けず」。「受からず」としたくなるかもしれませんが、この「ら」はどこから出てきたんだ、となってしまいますので、そこは活用表に忠実に考えましょう。

3 カ行四段活用…後ろに「ず」をつけると「吐かず」。1と同様です。

4 ナ行上一段活用...以前、おぼえてしまいましょうと書いた上一段の動詞の一つですね。ちなみに活用表は未然形から順に「に、に、にる、にる、にれ、によ」となりますから、6つ全てに出てくる「に」の部分が活用していると考えます。

5 カ行下一段活用…下一段は「蹴る」だけ!

6 カ行上二段活用…今の日本語の「起きる」か「起こす」のどっちなのかで悩むと思いますが、もし「起こす」だとしたら、後ろに「ず」をつけると「起こさず」となります。「さ」はどこから現れたんだ、となりますので、「起く」は今の日本語の「起きる」に該当することが分かります。
 ということは、後ろに「ず」をつけると「起きず」となります。したがって、とりあえず上二段だとわかります。
 活用表は未然形から順に「起き、起き、起く、起くる、起くれ、起きよ」となりますから、全部に出てくる「お(ア行)」と「き、く(カ行)」のうちの後の方、「カ行」の音で活用していると考えます。

7 ハ行四段活用…ちょっとこの辺から意地悪くなってきました。
語の最初以外の「はひふへほ」は、「わいうえお」と発音する、というのは中学校で習ったと思いますので、「ア行」とか言いたくなるかもしれませんが、活用はあくまで書いてある字の行で判断します。「言う」の後ろに「ず」をつけると「言わず」、古典だと「言はず」と表記します。従って、四段活用だとわかります。

8 マ行上一段活用…上一段活用の説明をした回を見てください。たしか「1-3」で上一段は紹介していると思います。辞書で引くと、「試みる」は「心見る」の意、と書かれています。つまり、活用は「見る」と同じだ、ということですね。
(ただ、若干マニアックですが、時折、「試む」というマ行上二段活用の動詞として書かれている時もあります。まあ、そんな意地悪なの、テストで聞かれることは無いとは思いますが)

9 ハ行下二段活用…今の日本語だと「耐える」ですから、後ろに「ず」をつけると「耐へず」。下二段ですね。

10 ハ行下二段活用…8と同じく、「1-3」でも書きましたが、今の私たちにはなじみのない一文字の動詞です。今の日本語だと「経る」ですので、後ろに「ず」をつけると「経ず(へず)」となります。

さあ、いかがだったでしょうか。時間がかかったなー、という人は、今の日本語でも構いません。手元に古典の教科書があるなら、古典の単語帳があるならもっといいです。とにかく、目に入った動詞の活用を片っ端から説明してみましょう。やればやるほど、早く、正確になります。ある程度は、慣れの問題です。やり方がわかったらすぐにできるようになるか、というとそうではありません。大事なのは、自分で訓練を繰り返すことです。

では、今夜はこの辺で。

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