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【富澤の戦術的価値】18節 松本山雅戦【雑感】

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時間がなさすぎたので、今回は一点突破の振り返りです。読み応え?そんなものは犬に食わせておけばいいのだ(暴言

①スタメン

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②富澤雅也の効用

今節のマンオブザマッチは誰か、と問われれば決勝点を決めた都倉賢、初スタメンでアシストを記録した加藤聖、そして終盤のピンチを片手で防いだ富澤雅也あたりの名前が挙がるだろう。皆MOMに相応しい活躍を見せたが、敢えて1人に絞るなら個人的には富澤雅也を選びたい。それは勝点3に繋がるスーパーセーブを披露したというワンプレーだけではなく、リスクを負ったビルドアップに参加して松本のプレス外しに大きく貢献したという点が戦術的に大きな効果を発揮したように見えたからだ。

富澤雅也は長い手足を活かしたセービングやハイボール処理を得意としているが、最大の特徴はボールを持っても焦らずに顔を上げてパスを繋ぐ能力の高さだろう。松本の村山もそうであったように、ゴールキーパーがフィールドプレーヤーの如くパスを受けて捌くという技術はもはや標準装備になりつつある。

長崎も20シーズン手倉森前期〜中期は足元に定評のある高木和を起用してGKにも足元の技術を求めたが、負けられない終盤にかけてはセービングの安定感に勝る徳重がゴールマウスを守ってきた。吉田長崎は「ボールは我々のもの」という哲学で戦術を落とし込んでいただけにGKには高木和か富澤をスタメンに据えるかと思われたが、失点が嵩んだことでやはり徳重が起用された。松田監督も北九州戦、千葉戦と徳重を起用したが岡山戦以降は富澤がファーストチョイスになっている。

ボールを握りたいチームに足元の技術があるGKを置くというのは、ハンバーガーを頼んだらポテトも一緒に頼むくらい自然な事だろう。しかし現実のピッチはハンバーガー屋ほど単純ではなく、長崎も長らくGKのビルドアップ能力という点で苦心してきた。ボール保持を志向するチームにとってなぜGKの足元が大事かといえば①GKを含めてビルドアップする事で必ず数的優位を作れる②GKに圧力を掛けられても冷静にショートパスを繋ぐことで相手のハードワークを徒労に終わらせる事ができる③単純にボールを保持できる時間が増えるという効果があるためだ。今回、富澤が発揮した戦術的価値は②の部分になる。

富澤は岡山戦から続く4戦連続無失点に大きく貢献しているが、ビルドアップという面ではそこまでリスクを負ってこなかった。余裕があれば4バックにショートパスを繋いでいたが、相手に詰められた場面ではセーフティにロングボールを蹴ることの方が多かった。しかし松本戦では9分と12分の場面で明確に相手のプレスを外しにいった。これはボールを引き取りに行った加藤大、プレスを外せる位置に移動したCBの動きが連動して初めて実現できることだからGK1人の功績ではないが、迫り来る相手を視野に入れながら冷静にパスを繋いだ富澤の技術がなければそもそも成立しないプレーだった。

②プレス外し

富澤への圧力を2度交わされた松本はGKまで突撃するプレスを諦め、ピッチ中央付近に5-3-2のブロックを敷いて長崎のボール保持を迎撃する体制にシフトする。千葉戦、山口戦で5-3-2の攻略法を予習済みだった長崎はセオリー通り松本ブロックを左右に揺さぶり3ボランチの脇から前進を試みる。特に右インサイドハーフに入った鈴木国友はスクランブル起用だったのか守備の面で不慣れ感があり、走ることを惜しまない献身性はあったがマークの受け渡しの場面で(鈴木だけの責任ではないが)ミスが目立った。

松田監督がそこまで見越していたのか、結果的にハマっただけなのかはインタビューからは分からなかったが、米田が離脱した左サイドバックに加藤聖を起用したのは当たりだった。ボールの運び方、付け所はまだ危うさがあったものの惜しみない上下の動き、まさかのロングスロー、そして精度の高いクロスで決勝点のアシストに繋がる活躍を見せた。

さんざん左右に振り回された松本の3ボランチは飲水タイム前後には疲労の色が見え、分かりやすくスライドが遅れていった。ジャブのように効いた左右の揺さぶりだったが、このジャブは富澤によるプレス外しの上に成り立った攻撃だった。もし長崎のGKがプレスに怯んですぐにロングボールを選択するようであれば松本はまだ前方向に力を使えた可能性があるが、深追いが徒労に終わるのであれば最終ラインを越えて圧力を掛け続ける意味はない。その意味で、ある意味終盤のスーパーセーブと同等の勝が富澤のビルドアップ能力にあった。

先制点を上げた後に都倉が2度決定機を迎えたが決めきれず、58分に阪野・田中パウロ・浜崎が投入されてからは右サイドで前進を許し始める。松田監督も鍬先を投入して穴を塞ぎに掛かるが毎熊のプレスバックが遅れたことで数的同数~不利を強いられる場面もあった。松田監督が就任してまだ6試合、クオリティを上げる伸びしろはまだまだありそうだ。

③おわりに

次節はJ2における異端児の1つ、栃木SCとの試合。前線から嵐のように激しくくるマンツーマンプレスに飲まれるチームは少なくない。その栃木に対して富澤を含めたプレス外しを発動するのか、もしかして松本戦はその演習だったのでは…なんてことを妄想しながらカンセキスタジアムに向かいます。


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