【ラストピース呉屋大翔】第6節 大宮アルディージャ【レビュー】

内容は確実に良くなってる。
もう何回も言ってる気がするけど、事実なのだから仕方がない。
それでもリーグは結果が全て、強豪相手とはいえ勝ち点を逃してしまった。

前半は大崩れこそしないもののシュート1本、相変わらずゴールの匂いがしない45分だった。後半の立ち上がりから手倉森監督が修正して良い入りをしたにも関わらず、CKからあっさり失点したのはもったいなかった。重心を下げて一発を狙う大宮をいかに崩すか、という35分間はこれまでと違う攻撃が見られた。

機能しないツートップ

ここまで6試合やって2得点なのだから、攻撃がうまく言っているとは決していえない。その牽引役となっているジョンホ・玉田のツートップは、個人的に機能してるとは言えないかなと思っている。

例えば13分の場面、3バックの脇にロングボールを蹴り込む狙いを持っていた長崎は、島田の好フィードを翁長が収めて右サイドで一対一の場面を作った。この時、ツートップのうち1人でもペナルティエリア内に入っていれば展開は違ったかもしれないが、2人とも全然外側にいる。

どちらかといえば玉田がフリーマン的に動いてビルドアップの手助けをする4231のようなシステムだけど、ジョンホはジョンホでどこかに行ってしまうシーンは開幕からずっと見られる。ツートップなのだから、1人はDFラインと駆け引きしてて良いと思うけど、相手DFからすると裏を取られる心配がないからラインを高く設定できて、守ってても怖くないと思う。現に前半はシュート一歩に抑えた。

24分の場面、左からスローインで入ったボールをジョンホが頑張ってキープする。1秒、2秒…前線で貴重な時間を作ったが誰もボールを受け取りに来てくれない。本当は玉田が受け取りに行くべきシーンだし、玉田がどこかに行ってるなら新里か島田が行っても良い場面だった。審判が立ってる周辺には大きなスペースがあり、スムーズにボールを受け渡しできていたらチャンスに繋がったはず。

最前線にいたり最終ラインまで下がってきたり、右にいたり左にいたりする玉田のフリーロール的な役割は、従来の長崎になかったものだ。手倉森監督になって守備が5バックから4バックに変わったように、攻撃面で一番変わったのはこの役割だと思う。
攻めていてもカウンターのリスクを常に考えてポジションを取っている長崎にとって、玉田がどこにいるのか?は結構大事な要素。個人的に思うのは、長崎の攻撃が一歩遅くなってる理由はそこにある気がする。つまりボールを奪った瞬間にボールと、相手と、玉田がどこにいるのか確認する必要があるわけで、だいぶピントが合ってきたとはいえ、まだ切り替えが遅れてる気がする。
ボールに触れれば簡単には失わないし、信じられないくらい広い視野でパスを出す技術を持ってるけど、玉田のフリーロールとは諸刃の剣でもあると思う(これは完全に個人的な考え)

もう一つ、時間は戻るけど15分、ジョンホが相手ボランチに良いプレスをかけてボールを引っ掛けたシーン。このボールを運べていれば数的同数のカウンターに繋がったが、そのまま自分で運ぼうとするジョンホとボールを回収に来た玉田がぶつかってしまい、チャンスをフイにする。
本当に少しのことなんだけど、逆にボールを失い、逆にカウンターを喰らい決定機を作られる。

この直後、気になるのは2人のリアクション。天を仰いでるのである。良いプレーになりかけた矢先のミス、ジョンホも玉田も「あーもう!」と思うのは分かる。分かるけど天を仰いでる間にも敵はボールを自陣に運んでるわけで、天を仰いでる暇があったら切り替えて守備に行く必要がある。それが全員攻撃、全員守備なのだから。まして直前に決定的なシュートを撃たれて、チーム全体がナーバスになってた時間帯に起きたミス。
2人が天を仰いでる間に、島田はもう身体の向きを変えて守備に向かおうとしている。攻守の切り替えの遅さは、こういうちょっとした部分にも出てると思う。

後半から修正された役割分担

流石に手倉森監督も前半の出来を見て修正したんだと思う。ロッカールームを見たわけじゃないから分からないけど、選手が自主的にやったのかもしれないけど。ジョンホの動きが決定的に変わって、相手DFラインの裏を取ることを第一として動き出したのである。

前半は一本も繋がらなかったけど、なんなら開幕から5試合でも数える程度しか繋がってないけど、48分と50分と、たぶんあともう一回ジョンホの裏抜けにシンプルなロングボールが出始めた。ラインを下げざるを得ない大宮、すると玉田や澤田が活きるスペースが生まれ始めたのである。
簡単に相手を押し込む解決策であり、なんで前半からそれをやらないんだと言いたくなるけど。よし、良い流れだなと思った矢先にCKから失点したものだから観てる側からしてもガックリきたし、選手や監督はましてガックシきただろう。

大宮のDFラインとMFラインの間に(バイタル)スペースが開き始めたのを感じた手倉森監督は、より狭い局面で活きる吉岡を投入した。失点して、前から行かざるを得ない事情があったものの、長崎の攻撃はみるみる活性化していった。

攻撃のラストピースになりえる呉屋大翔

鈴木武蔵の引き抜きは想定外だったと言われている。かなりの額の移籍金を設定していたけど、FWの玉突き移籍に巻き込まれ、J1札幌に引き抜かれた。武蔵個人としてはそのまま好調を維持して日本代表に選出されるまでになったのだから、移籍は成功だったといえる。ただし成功だったのは鈴木武蔵個人の話であり、長崎としてはかなりの痛手だった。

でもその補填には動かなかった。たぶんハイロがその役割を担うつもりだったのだろうけど、ルヴァンですら出場できない事を見るに、コンディションは上がってこないのだろう。玉田、ジョンホ、長谷川の獲得と畑の復帰、さまざまなタイプのFWを揃えたけど唯一足りなかったのは鈴木武蔵のような「裏に抜けるタイプ」だった。

案の定、開幕から5試合を見るに足元で受ける技術は向上してるけど、相手と駆け引きして裏でボールを受ける回数は本当に数える程度しかなかった。その状況を受けて、裏への抜け出しに定評のある呉屋大翔を緊急補強したんだと思う。

古今東西、ラインブレイカー(死後?)は怪我に泣かされる事が多いポジションで、呉屋もその1人だった。期待に応えてくれるか少し心配だったけど、呉屋は途中投入されてから10分でその価値を証明したと思う。それまではジョンホがやっとの思いで裏抜けしていたのに、呉屋は2度も3度も相手の裏でボールを受ける。

呉屋自身がシュートチャンスを迎えることはなかったが、澤田や吉岡、なにより玉田がライン間で活きだしたのは呉屋がプレッシャーをかけて相手ラインを押し下げたからに他ならない。

磯村と吉岡が迎えた決定機はこれまでにはなかった形だったし、本当に数センチの差で得点できるところまでたどり着いた。

手倉森監督の我慢

最近のインタビューで「我慢」という言葉をよく使う手倉森監督。ツートップについてはかなり我慢してジョンホと玉田を使ってる気がするけど、起用法に一つ光明が差した後半だったと思う。

開幕から6試合ですでに3敗。例年、自動昇格するチームは年間10敗以上することはない。次の試合が4日後のアウェイ柏である事を考えれば、是が非でも勝っておきたい試合だったけど、惜しいところまでたどり着いたけど、結果は負けてしまった。

どうにも後ろに重かったチームのケツを叩き、プレスとブロックのバランスを取り、速攻と遅行のバランスを少しつづ改善し、右サイドの機能不全を解消し、ツートップの役割を整理し…本当に少しづつ前進してるだけに、報われてほしい。柏はJ2ではダントツの戦力を有する、圧倒的な昇格候補。だけどJ1定着を目指すなら避けては通れない相手で、本当は引き分けでも御の字だけど、勝利を目指さなければならない戦いになる。

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