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【氣田の効用】第37節 アルビレックス新潟戦【雑感】

①スタメン

長崎は前節から2人入れ替え、大竹とエジガルが先発入りした。少しずつ怪我人が復帰しているものの、戦術的要所である左サイドバックの亀川はベンチ外が続いている。

新潟は前節から4人入れ替え、小島・大本・荻原・鄭大世が先発入りした。中盤の要として重宝されている島田譲は累積警告で出場停止(契約の関係上どのみち出場不可だった)わずかに昇格の可能性を残しながら、前節は21位愛媛に0−3とまさかの大敗を喫した。攻撃の柱だったファビオを契約解除で失い、直近は怪我人が相次いで苦しい台所事情。今節ダブルボランチを組んだ高木・堀米は本来とは違うポジションを務めることになった。

②カイオを消したい新潟の守備

新潟の守備は分かりやすく「攻撃のキーマンであるカイオを自由にしない」という狙いを持って、守備時はトップ下の本間がカイオをマンマーク気味に見る4−4−1−1で陣形を組んでいた。長崎はいつも通り秋野が1列下がる3−1−4−2に可変してボールを回すため、3バックに対して鄭大世1人がプレスに来る展開になった。これは長崎にとっては大助かりで、いかに迫力のある鄭大世といえど3対1では多勢に無勢、長崎の3バックは楽々プレスを交わして左右のセンターバック二見とフレイレがドリブルで持ち上がる形で攻撃を始める事ができた。

例えば二見がボールを持ち上がれば大本は二見を対応するべきか、それとも左の大外に立っている江川を見るべきか迷う事になる。立ち上がりから何度かこの形で左サイドを伺ったが、なかなか江川が2列目を突破するドリブルやパスを出せなかったため効果的な攻撃とはいかなかった。

とはいえ新潟としては思い通りの展開とは言えず、ボールも持ち出してくる長崎の両センターバックに対応する必要が出てきた。ここに蓋をするには新潟の両サイドハーフ(大本・荻原)が縦に詰めてくるしかないが、どうにも上手くいかない。この辺りが先制点の伏線となっていった。

③左肩上がりの陣形で氣田を活かす攻撃

今年の長崎は3−1−4−2の可変システムから横幅と奥行きを有効活用する戦術を落とし込まれている。左サイドから前進することの多い長崎にとって左サイドバックの亀川は戦術的要所だったが、怪我で戦列を離れてもう1ヶ月近くになる。大外の推進力がなければ横幅を取っても行き詰まることが多く、最近の長崎の課題になっていた。

大外の推進力に頼らない前進方法として、左肩上がりの陣形を取って左サイドハーフがドリブルする形をどうやら仕込んでいるようだ。仕込んでいるというか、大外の選択肢が減った分、試合中により顕著に現れやすくなったと言う感じだろうか。そこでキーマンになるのは、今やJ2屈指のドリブラーと言っても過言ではなくなってきた氣田亮真である。

発想としては至極単純で、2トップのエジガルと富樫が新潟最終ラインと駆け引きすることで4バックのうち2〜3人をその場に釘付けにする→右サイドハーフに入った大竹がカイオの列まで降りてくる→新潟陣形を右サイドに寄せつつ氣田は大本の背中・高木の脇で待ち構える→氣田にパスが渡るとあら不思議、ドリブルするコースの出来上がり、という算段である。

この試合の先制点はまさにこの形だったし、前半の飲水タイム明けにも似たようなシーンからカイオのミドルシュートがあったし、もっと言えば前節松本戦の玉田のゴールもきっかけになったのはボランチ脇から始まった氣田のドリブルだった。

富樫の先制点の場面では大本が不用意に秋野→二見へのパスコースを塞ぎに行ったことも仇となっており、立ち上がりから散々有効に使われた両センターバックの持ち上がりが逆に効いた瞬間でもあった。斜めのパスが通った氣田の目の前にはエジガルが引っ張って開けてくれた広大なスペースがあり、ギリギリまで引きつけて大外の江川にパス、前節は前半のみの交代と結果を残せなかった江川だがこの場面ではDFラインとGKの間に絶妙なクロスを通し、飛び込んだ富樫も新潟CBとの駆け引きを制して流し込むだけの状況を作れた。

ボールに絡んだ全員が少しずつ良いプレーを積み重ねたこの得点、個人的には流れの中で決めた得点では今シーズン一番のゴールだったように思う。

④新潟の狙いと凌ぐ長崎

新潟の攻撃は前回対戦時と同じ狙いのようで、アルベルト流スペイン風味なボール前進(曖昧でスンマセンちゃんと見直す時間がなかった…)から最終的には荻原・大本で長崎のサイドバックを晒す形を作って突破を図ることが多かった。特に左サイドの荻原活かしは顕著で、センターバックから何度も対角線のロングフィードが通っていたことからも新潟の狙いは鮮明だった。サイドの一対一で何度かピンチを迎えたが毎熊・江川がギリギリまで対応して、センターバックの二見とフレイレが跳ね返し続けることでことなきを得た。

もう一つ、新潟の最大の武器といえば本間至恩だがこの日は奮わずドリブル数2回、ドリブル成功率0%というスタッツになった。長崎が特別に対応した感じではなく、際どいシュートを1本打ったものの前回対戦時ほどの脅威にはならなかった。理由を推測するなら2つ、1つは中2日で新潟から飛んできたという日程的な影響。前節もフル出場したことを考えればコンディション的には厳しかったはず。もう1つはダブルボランチが不慣れなこともありボールを引き出しに降りてくる回数が多かったこと。これにより鄭大世が前線で孤立するシーンも目立ち、本間至恩の最大の強みであるゴール前でのドリブルを繰り出す機会は限定的になった。

そうこうしているうちに、長崎はまんまと追加点を挙げることに成功。ほぼ左足でしかボールを扱わない大竹がペナルティエリア内でまさかの縦突破を選択したことに早川も驚いたか軽い対応になり、レアな右足のクロスはふんわりした軌道ながらGKの頭上を超え、エジガルが頭で押し込んだ。

リードした後の振る舞いについてはもう散々課題にしてきたが、最後は5バックにするなど適切に対応。2点リードを守って逃げ切りに成功した。互い違いにレンタル移籍している新潟の島田と長崎の加藤、影響度としては新潟の方が遥かに大きかったのかもしれない。

⑤おわりに

一時は自動昇格圏の2位に浮上した長崎、翌日試合の徳島と福岡にプレッシャーを掛けたかに思えたが徳島と福岡は揃って勝利。結局順位も勝ち点差も縮まらなかった。なんだよもう…

特に徳島は金沢相手に3−0から一時は3−3まで追い上げられるという最悪の展開ながら、最後は垣田が勝ち越しゴールを決めて4−3で勝点3を積み上げた。この結果、徳島の勝点は77となり、自動昇格圏内はほぼ確実となった。残る1枠を福岡と長崎が争う形だが、対戦相手的には長崎の方が厳しい。残り5戦、怪我人がいようがとにかく勝ち続けるしかない。

次節は難敵・京都。好調の徳島を2−0で破っているあたり、やはり自力はある。ウタカを中心にしたカウンターは脅威で、半端なパスミスは命取りになる。ヒリヒリした90分になるのは間違いないが、勝ちを祈るしかない…

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