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金属加工ひと筋の工場は、「高品質・高付加価値」のため何に目をつけた?

前回、新規事業の生み出すために「工場内で行っている金属加工のプロセスを切り分けてみた」とお話ししました。
なぜ、そんな面倒なことをしなくてはいけなかったか?
 
そもそも私たちが新規事業を立ち上げようと思った背景には、これからは従来の「ものづくり」の「つくり(つまり製造工程)」よりも、「もの」の部分、アイデアや仕掛け、製品の哲学、製造の背後にあるストーリーが重視されるのではないかという考えがありました。

※開発当時読み込んだ「MAKERS」

日本では横山興業のような「つくり」を担うメーカーや職人がまだまだ残っている。だからこそ、いま、「もの」にフォーカスする意味がある。

その一方で、「つくり」を担うメーカーとしてリアクティブ(受け身)なビジネスを展開してきた私たちは、プロアクティブな開発マインドに乏しく、既存の溶接やプレス加工といった自動車部品製造技術からのマインドシフトができずにいました。

保有する加工技術から生み出せる製品、という前提条件では、開発できるプロダクトの幅が限りなく狭められてしまう。そうではなく、もっとドラスティックな発想の転換が求めらていると感じていました。

そこで、自分たちが行っているプロセスを一つひとつ要素分解していったのです。

そして、これなら可能性がありそうだと行き着いたのが、「研磨」でした。
 
当社における自動車部品の製造工程において、プレス加工や溶接が売上の柱になっています。研磨という作業は、生産設備が摩耗・破損した際に登場する技術で、いわば「裏方」のような存在。

金型の一部を紙やすりで丁寧に磨く研磨作業

でも、脇役で日の目があたりづらいからこそ、そこに勝機があるように感じました。

金属研磨にフォーカスすると決めたら、さっそく金属加工品市場のリサーチです。

まずは「研磨すれば品質が高まる金属製品」という視点で、開発の参考となる既存のプロダクトを探しました。
 
この時、ヒントになったのが酒器です。

当時、日本酒を好んで飲んでいて、日本酒バーへ足繁く通っていました。そこで耳にしたのが、酒器のこと。

「ビールは陶器のビアタンだとおいしくなる」「錫が日本酒の口当たりをよくする」といいますよね?

「容器の内側が、ドリンクの味わいに働きかける可能性があるのか!」、目からウロコでした。

そこで、まずは容器の内側を磨いてみようということになったんです。
 
量販店に行き、ステンレスのタンブラーを購入。1合サイズにカットし、工場の職人に渡して内側を磨いてもらいました。

BIRDY.試作品第1号です。

幻の日本酒タンブラー

磨き上がったタンブラーを行きつけの日本酒バーに持っていき、試作品と陶器の酒器で飲み比べをしてみたのですが……。
 
そもそも、日本酒をステンレスで飲むことなんてないですよね?
ステンレスVS陶器という、別次元の戦いになってしまい、この飲み比べはあえなく玉砕。

けれども諦めきれない私は、試作品第1号を別の行きつけのバーに持っていきました。

マスターが試作品のタンブラーを使ってウイスキーの水割りを作ってくれ、通常のタンブラーで作ったものと飲み比べてみたんです。

そうしたら……。
 
続く


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