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歌詞カードを手にアルバムを聴くという営みをしたい

 と,いう話。いや「すればいいじゃん」というツッコミはあるでしょうが。

音楽の聴き方はだいぶ変わりまして

 もともとは,アルバムを買う→馴染むまでCDプレーヤーで聴く→スマホに入れる→車や外で聴く,という流れで音楽を摂取していました。一昔前では比較的あるあるだったと思いますが,これを2020年代までやっていたというのはそこそこマイノリティな自覚はあります。

 それで1年半ほど前にその環境がガラッと変わりまして。そう。サブスク導入です。広告に耐えかねてまんまとYouTube Premiamに入った副産物で,YouTube Musicも利用できるようになりました。サジェストが馴染むまではちょっと不便でしたが,ひと月もすると便利さを実感できました。何年遅れだよ,って話ではあります。

 特に便利なのは1曲選んであとは自動で似たようなアーティストや曲でプレイリストを作ってくれる機能です。ドライブとの相性が非常にいい。乗り込んでセットしてあとはおまかせ。再設定の必要がないのは非常に便利です。

 あとは先述のサジェストですね。よく聴いている曲に似た曲や,似たアーティストをおすすめしてくれます。精度はそこそこですが,その中でも刺さるときは刺さるのでかなり助かってます。年末にちょっと紹介した菅原圭やDUSTCELL,最近だとEnpty Old Cityもサジェストで知りました。

 とにもかくにも,敬遠していましたがやはりサブスクは便利なんだなという話です。

サブスクの難点

 とはいえ,サブスクには難点もいくつかあります。よくあるのは一部のアーティストはサブスクに公開されていないことがあったり,逆に公開されていたものが非公開になったり,という話ですね。こればっかりはいかんともしがたいです。サブスク全盛時代になる前に活動終了した方々の曲はどうしても聞けません。たまに事務所の方で公開していることもありますが……。

 あとは先述した1曲からプレイリストを作ってくれる機能なのですが,再現性がなかったり,プレイリストを保存できないのでその徳を逃すと遭遇しない曲があったりと,ちょっとかゆいところに手が届かないところもあります。
 さらに構成についても,基本的にトレンドも加味されるのかどうしてもパワーのある曲というか,強い曲に偏りがちになるという難点があります。イメージとしては小学生がバイキングで好きにとった感じ。最初はそれで全く問題ないのですが,そればっかり聴いているとためにくどく感じるという。

 そういうのがしばらく続くと,「なんだか何聴いてもしっくりこないな~」みたいなことになります。

やっぱりアルバムっていいんですよ

 で,そんなときの対処法が,「アルバムで聴く」ことなんですよ。アーティストで縛られてしまう場合がほとんどという制限はありますが,曲の強さや種類はある程度の幅がありバランスよく構成されていて,聴きやすいものになっているからです。そしてだいたいの場合はテーマをもって構成されているので,一通り聞いた後の読後感みたいなものも味わえます。どこかで強制的に一息つけるという点も意外と重要ではないかと。

 あとアルバムの面白いところは,目当ての曲って10曲中2, 3曲とかが相場だと思うんですが,最終的に一番刺さるのは大抵ノーマークだった曲なんですよね。例えばKing Gnuの「CEREMONY」は「白日」や「Teenager forever」など有名で強い曲がかなり入っているんですが,個人的に一番刺さったのは「ユーモア」とうノーマークの曲でした。

 こんな感じで強い曲あり,思いがけない曲との出会いあり,そしてアルバム全体のテーマや統一感を感じられるという点で,アルバムって非常に完成度が高いまとまりなんですよね。そしてそのテーマ性はアルバムのパッケージや歌詞カードの装丁にも表れているので,それを手にしながら聴くと味わいがひとしお。言ってしまえば公式のプレイリストですからね,クオリティというか満足度は高くて当然といえば当然なんですが。

おすすめのアルバムたち

 ここまでサブスクとアルバムのそれぞれの良さを語ったところで,おすすめのアルバムたちを列挙していきましょう。ちょっとでも引っかかった曲やアーティストがいたら通しで聴いて欲しい……。

さよならポニーテール全般

 はい。いつものです。詳細はこれまでに書いてきたものを参照してもらえればなと。

 ここで書いていないアルバムたちも全部いいのでぜひ一通り聞いていただきたい。

サカナクション 「834.194」

 続いてはサカナクションから「834.194」。

 サブスクでは18曲になっていますが,CDの状態だと「新宝島」,「忘れられないの」などのポップでキャッチーな曲で構成されたDisc1,「グッドバイ」,「ユリイカ」などのスローで内省的な曲を中心としたDisc2,の9曲×2枚組の構成となっています。それぞれのDiscで最後の曲がそれぞれ「セプテンバー-東京 version-」,「セプテンバー -札幌 version-」となっており,彼らの現在の拠点東京と故郷札幌の対比にというテーマの一つとなっています。

 最初はこのテーマをあまり意識せず(というか知らずに)聴きやすいDisc1ばかりを聴いていました。ところがある時ふとDisc2の「ナイロンの糸」を聴きたくなってDisc2を頭から流すと,なぜか妙に沁みまして。私も地元を離れて関東に出てきた身なので,たまに地元に帰りたくなる感じと,たまにDisc2を聴きたくなる感じがラップして,このDisc1-2の構成の意味が実感できたんですよね。

 構成が秀逸なのが第一ですが曲自体もよいのが多く,サカナクションの入り口としてもおすすめのアルバムです。

THE BOOM 「極東サンバ」

 続いてはTHE BOOMより「極東サンバ」を。THE BOOMについても以前ちょっとだけ書いています(かなり前なのでつたなくて恥ずかしいのですが)。

 THE BOOMファンに一番好きなアルバムを尋ねたら真っ先にでるであろう,銘盤です。ファンでない方向けには,「風になりたい」収録アルバムと説明すれば何となく伝わるでしょうか。

 このアルバムの魅力は,当時ブラジル音楽を代表にインドネシアのケチャや沖縄民謡といった南国の音楽を吸収していたTHE BOOMの到達点というところです。アルバムを通しで聴いたときの感想はまさに世界旅行。南国を中心に色々国の音楽を吸収した曲たちは一見統一感はないのですが,どれもしっかりJ-POPに落とし込まれていて,歌詞がかなり日本的なこともあり,どこか懐かしいにおいもあります。

 世界の音楽を吸収し続けたTHE BOOMらしいアルバムです。無人島に3枚アルバムを持っていけるとしたら,極東サンバは当確。

LOVE PSYCHEDELICO 「ABBOT KINNEY」

 続いてはデリコのABBOT KINNEY。

 半洋楽・半邦楽なデリコのアメリカ西海岸感漂うアルバムです。1曲目,軽快なギターイントロから始まる「ABBOT KINNEY」から,5曲目「Shadow behind」まで日本語と英語を行き来する歌詞と軽快なメロディーが続きます。6曲目のインタールード的な「I'm done」で一息ついて次の「Hit a road」で再び駆け上がり,最後は「Have you ever seen the rain?」のカバーで締め,と緩急はありますがリズミカルでカラッとした曲たちでまとまった一枚

 晴れた日の海岸線のドライブならこのアルバムで決まり。

Lucky Kilimanjaro 「DAILY BOP」

 最後はLucky Kilimanjaro から「DAILY BOP」。

 聴いたら踊らずにはいられないダンスミュージックを得意とするLucky Kilimanjaro。曲順が1曲目の「Superfine Morning Routing」から11曲目の「おやすみね」まで一日の流れなっているのが特徴です。なので一日中流していればその瞬間にピッタリの踊れる曲が流れてくるという仕掛けになっています。

 早起きした休日の朝から気分を上げたければこの一枚。お昼は最高のペペロンチーノを作ろう。

 ということで,たまにはアルバム聴いておきたいよね,という話でした。
 以上,お納めください。


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