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さよポニの話「きまぐれファンロード(と, Long time no sea)」

 およそ1年ぶりのさよポニの記事です(というか投稿自体が4ヶ月ぶり)。今回のテーマは11月にリリースされたアルバム「きまぐれファンロード」と9月リリースのみぃなのソロユニット「みぃなとルーチ」のアルバム「Long time no sea」の二本立てです。全くテイストの異なる2枚ですが秋の午後にコーヒーを飲みながら聴くにはぴったりの仕上がりになっています。

「Long time no sea」

 まずは時系列順にみぃなとルーチの「Long time no sea」から。全8曲,初回限定盤はさらにボーナストラックが2曲追加されますが全てみぃなが作詞作曲しています。ダイジェスト動画はないですが収録されている「Tonight is the night」が公開されています。

 まずは2分弱の「The brown bunny」からアルバムの幕が上がります。重めのパーカッションと「だいすき」の繰り返しは6曲目の「Tonight is the night」に通ずるものがあります。そして「ハロー,ハロー」の呼びかけとともに2曲目「Sea song」へ。

ひらひら らくちん ワンピース
わたしたちによくあったワンピース

  という歌詞はさよポニではあまりなかった女の子らしい視点を感じます。その後の歌詞はだんだん抽象的になっていってさながら海に向かっているよう。3曲目の「Wild is the wind」はお気に入りの一曲。イントロから続くシンプルなベースと要所要所でアクセントとなるコーラス,そして一気に解放されるサビ,と私のお気に入りポイントをズドンと突いてくれています。シンプルなメロディーと優しいみぃなの歌声が際立つ4曲目「Joy and jubille」を経て衝撃的だった5曲目,「Amelia」につながります。歌い出しの

そんな素敵なことば
わたしもうたってみたい
とうとつな気持ちだって
ことばにして 歌にできる

 の部分は半ばポエトリーリーディングのような変則的なリズムで語るように歌います。みぃなは幅広いテイストの曲をさよポニで歌っていますが,こんなさよポニでも珍しい変則的な曲をみぃなが作ったというのが驚きでした。それに歌詞に関してもひらがなと漢字の使い分けが独特で柔らかい印象を与えています。そして「語るように歌う」時のみぃなの歌声は唯一無二の個性を持っているのですがその魅力も存分に堪能できる一曲です。

 その後には「Tonight is the night」,「More you becomes you」と軽快な2曲が続き,スローテンポな「Bloom of all」で締めます。この曲もみぃならしい歌声が楽しめます。

 全体の印象としては最近のさよポニとは対照的な洋楽的でアコースティックなテイストでさながら70年代くらいの洋楽の銘盤を聴いている気分になります。アコースティックなサウンドとみぃなのソフトなボーカル,ファジーで柔らかい歌詞がセピア色の落ち着いた雰囲気を構築していて,秋晴れの午後におやつとコーヒーとあわせて聴くのにぴったりな一枚です。

 さよポニメンバーのソロユニットは他にもゆゆの「ゆゆとマジシャン」,なっちゃんの「なっちゃんとタント」があるのでこれからの展開も楽しみです。

「きまぐれファンロード」

 続いては前アルバム「来るべき世界」から一年半ぶりの新アルバム「きまぐれファンロード」です。「来るべき世界」の個性あふれる曲たちの重厚な構成から一転,全9曲・約32分とコンパクトにまとまった一枚です。パッケージもカラフルでキュート,「魔法のメロディ」や「青春ファンタジア」以来の学園感のある一枚です。視聴版はこちら。

 アルバムはふっくん+みぃなの「新しい朝の歌」から軽やかにスタートします。2分弱のアコースティックでシンプルな構成は前述の「Long time no sea」やふっくん曲のみで構成された「円盤ゆーとぴあ」の3枚目に通ずるものがあり,ゆるやかにアルバムの世界観へと導入してくれます。そして清々しい朝の空気に誘い込んだ流れで

カーテンのすきま 朝の光が
眠る君のからだをのぼってく

 という歌詞から始まる2曲目のさよポニ新境地とも言えるメグによるパワーソング,「シオン」につながるというのが曲順も表現の一部となるアルバムならではでとてもいいな,と思います。さてこの「シオン」,アルバムに先立って公開されていたダウンロード配信版を聴いた時に衝撃を受けて一曲です。その時のあれこれは流れをぶった切ってしまうので下の方で書きます。

 「シオン」の勢いそのままに324Pの「初恋ペンギン」,マウマウの「それいけジャーニー」とさよポニらしいキュートな曲が続きます。「初恋ペンギン」はPerfumeの「ナチュラルに恋して」っぽさもあるダンサブルな曲,「それいけジャーニー」はサビの合いの手が「ヘイ!! にゃん♡」を彷彿とさせますが,どちらも全体としてテンポも速くなく音数も抑えられているので肩の力を抜いて聴くことができます。

 「シオン」~「それいけジャーニー」という軽快な曲の流れですが続く5曲目,「肖像と白昼夢」は歌詞が

氷がとけるように
急速な夢

だけというほぼインストなふっくん曲で一息つきます。アルバム中盤で短いラジオのジングルっぽい曲を挟むのは「夢見る惑星」,「君は僕の宇宙」でも見られます。これもアルバムという媒体ならではのアクセントなっています。

 仕切り直して6曲目はクロネコ作曲の「昨日のように遠い日々」。スローテンポなAメロからサビでバンジョーが跳ねるような陽気なカントリー調のリズムにスパーン!と変わるギミックはさすがのクロネコ曲。7曲目はなっちゃんの語り歌いから始まる「こどもたちのための星占い」。作詞クロネコ,作曲ふっくん,メインボーカルなっちゃんという珍しい組み合わせです。さよポニとは別であるクロネコのYouTubeチャンネルにあるこの動画のような空気感です。

 前半の山が「シオン」だとしたら後半の山は8曲目の「放課後えんどろ~る」でしょう。放課後シリーズ6曲目はマウマウ作詞作曲,メインボーカルはしゅかの構成。放課後シリーズもだいぶ増えてきましたね。この曲はAメロからサビまでスローテンポで一貫されている,というかサビも露骨に盛り上げたりしていないのでサビはどこ?な曲ですが,それによって個性的なしゅかの舌足らずで甘い歌声が自然に聴けます。

 最後はふっくん作曲の「1095日」でエンディング。365日×3年でさよポニ久々の卒業ソングとなっています。放課後や卒業式の哀愁を描くさすがふっくんといった感じの歌詞とバラードと合唱曲の中間のようなメロディーをゆゆが透き通るような声でしっとりと歌いあげます。「青春ファンタジア」あたりのさよポニらしさが味わえる名曲。

 冒頭でも触れましたが全体を通して音数少なめ,テンポもミドル~スローで統一されていてかなりソフトで聴きやすく,「Long time no sea」同様に肩ひじ張らずに溶け込むように聴けます。このアルバムでは今までにない程にボーカルにおけるみぃなの比率が低い(と,いうよりほかのメンバーがどんどんメインを張るようになっている)ため,それが物足りなく感じる方は「Long time no sea」とローテするのがオススメです。落ち着いた時間を過ごせると思います。

「シオン」

 最後に先ほど触れた2曲目「シオン」についてもう少し詳しく。作詞作曲はメグ,メインボーカルはあゆみんとお気に入りの組み合わせです。そしてこの曲はメグがOfficial髭男dismの「Pretender」に刺激受けて「強い」曲を作ろうとしたとのこと。それもあってかキャッチーなパワーソングに仕上がっています。

 アレンジもクロネコが何パターンもあると言っていただけあってリリース版は厚みがありながらも重すぎずバランスがよく,歌謡曲っぽさもあり,テン年代のアイドルっぽさもあり,とタイムレスな印象となっています。歌詞も

おばけみたいな 髪をとかして
夢の出口でもう少し待ちぼうけ

 なんていうガーリーかつ若干コミカルなものから最後の

いつか教えてくれた 花の名前
忘れないように つぶやいてみる
いつか教えてあげた 花の名前
忘れないように つぶやいてみる
何度も 何度も

 という「別れる人と毎年咲く花を結び付けて思い出す」という叙述的なものまでバラエティーに富んでいますが,全体として前向きなさよならが描かれています。曲も歌詞もいろんな要素が入っていてストライクゾーンを広げているのですが一方で印象が薄まっているかというとそんなことはなく,パワーもあり,初見で聴いてインパクト十分,何回も聴くと散りばめられた要素に気づいてどんどんループするというスキのない曲です。これまでのさよポニにはなかった1曲で新境地を感じさせます。

最後に

 今回はさよポニとみぃなとルーチのアルバムの二本立て,といいつつ配信シングルの「シオン」の感想まで書いたので今年のさよポニのリリースのまとめっぽくなりました。何かとアーティストは大変な年に2枚もアルバムを出してくれたことにはほんとに感謝の極みです。結成当初からリモートで活動している彼らには大きな影響はなかったのかもしれませんが(笑)。

 以上,お納めください。

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