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絶叫! パチソンがやって来る!

良さを感じることが出来るという事は非情に贅沢なことである。
今日はそんな話だ。


パチソンと言う言葉を聞いたことがあるだろうか?

略語だが勿論、正式名称などないし、国語辞典を引いても出て来る単語ではない。

パチモノソング、縮めてパチソン。
早い話が有名な曲のパチモノ。演奏や歌手、あらゆるものが本物とは全く違っているのだ。

そんなものあるかいな、と思われた皆さん。
実はあるのだ。いや、昔はよくあった(らしい)のだ。

今現在のシングルCDは大体千円前後。これでも結構お得だと思うのだが、小学生の貧弱な財政事情を考えると結構きつい。
買えなくはないのだが、ポンと買ってしまえばその後1ヵ月はあらゆる駄菓子の誘惑に打ち勝たなくてはならないし、ガチャガチャも我慢せねばなるまい。(勿論、だからこそその一枚を聞き続けて大事にするというのもある。私も初めて買った仮面ライダー555のCDは狂ったように聞いた)

それがアルバムとなれば尚更である。
最低でも2千円弱。普通に買えば3千円はするアルバムなど、そもそもまず購入しようという発想が浮かばない。ウルトラマンも仮面ライダーも、セーラームーンまでもが入った超お得なアルバムなのに、決して自腹では買えない。

そんな時。500円のアルバムが棚の隅にあったらどうするだろう?
見ると、現行のアニメやヒーローの主題歌がわんさと入っている。安い買い物ではないが……小学生でも分かるお得感。(まだ、そのお得過ぎる感が怪しさとは直結しない貴重な時代だ)

財布を開き、500円を払うと意気揚々と帰宅。
そのレコード、あるいはCDをデッキに入れて再生する。
流れ始めた、謎の男の声と気の抜けた様な演奏に絶望した時には既に遅い。

完全なるパチモノを掴まされたという訳である。
この手のレコードは昭和時代、結構な数が市場に出回っていたらしい。
幾多の少年少女の涙をもぎ取っていたこれらのパチソン達はなんとYouTubeで試聴する事ができる。

こいつが何ともいい。
原曲を知っている前提だが、あまりにも違い過ぎる歌い方や妙なアレンジ。
これが癖になって来るのだ。

例えば、有名どころでこれなどどうだろうか?

是非リンク先で聞いてほしい。

**

『ゲゲゲの鬼太郎』

お分かりいただけるだろうか?
酷い、そんな一言で片づけてしまってはあまりにも勿体ないこの感じ。
本当の妖怪が歌っているのでは、と疑いたくなる。
近所のおっちゃんが子供を必死で喜ばせようと変なアドリブを入れていると考えると涙もちょちょぎれるというものだ。

次はこれ

『スパイダーマン』

念のため言っておくが、なんとその昔日本の東映があのを実写化しているのだ。巨大ロボを操縦するスパイダーマンやスパイダー星人の登場などかなり原作からかけ離れているが、壁を華麗に登るスパイダーマン、軽口を叩きながら戦うその姿は非常にかっこいいし、未だに全然見劣りしない出来になっている。(地獄からの使者と言えば伝わる?)

本物の主題歌は渡辺宙明先生の超かっこいいサウンドのイカす曲なのだが、パチソンになればこの通りだ。
だれだ、歌っているのは。アレンジなのかやけくそなのかよく分からない。
昔、ビルに勝手に登って捕まる自称スパイダーマンみたいなおっさんがいたが、その人の曲か?

最後はこれだ

『デビルマン』

いや、おまえが誰だよと突っ込みたくなる一曲だ。
上記二つもそうだが、この手のパチソンはなぜか妙にアレンジを入れてくる。もちろんアレンジがいけないとは言わないが、これは・・・・・・と首をかしげられても仕方ない。
特にこいつは一番気持ちいい部分、デビルマンの能力を解説するパートをアレンジしているもんだからすごく気持ちが悪い。

悪魔の曲とはよく言った物だが、これは確かにデビルの曲だろう。


さて、ここまで紹介したパチソンの数々は著作権が厳しくなったりしたせいで徐々にその姿を消してしまった。
まあ、本人歌唱ものが結局子供は一番聞きたいだろうから、仕方ないと言えば仕方ない。


先日、とあるショッピングセンターに行った。
別段用事は無かったのだが、内接しているCDショップの前を通りかかった際に一つの棚に目がとまった。
閉店セールで在庫処分の棚。
電車を延々と撮したDVDや演歌のCD、B級映画が並ぶ中、ふとこれを見かけた。

「えっ・・・・・・」
思わずそんな声が漏れそうになる。
値段はセール特価で100円(定価は1200円、申し訳ないが定価なら買わない)

ぽっちゃりピカチュウと妙にパースの崩れたコナン君。
後ろに並ぶゴーゴーファイブを見る限り、恐らく2000年前後に発売されたものだと推測。(最初、後列右端に居るやつはミクロマンかなと思ったが、どうやらトランスフォーマーのようである)

題字やフォントもいい味を出している。

曲のラインナップを見るとこんな感じ。

充実の選曲。
当時大ヒットした「だんご三兄弟」でがっちりキッズのハートを掴み、ゴーゴーファイブでテンションは爆上げ、おどるポンポコリン、年中夢中I want You、めざせポケモンマスターと一瞬の休まる暇も無く、曲がエンドレスで続く。
家族のドライブにはこの一枚で十分事足りるに違いない。

そしてなにより、期待していた文字がしっかり記載されている。

『オリジナル歌手本人の歌唱ではありません。』

キタコレェェェ! じゃあ誰やねんと言い無くなるこの感じ、これこそ現代のパチソン!
まあ、予め教えてくれるだけまだマシなような気もする。
(当たり前だが、著作権の許可も取得しているのでコピー品やパチモノではない。一応念を押しておく)

こんな素晴らしい物を見つけて、買う以外の選択肢があろうか!
もち、即決で購入。

(ある意味では期待を込めて)早速CDを再生した。

が。

悲しいというか、ホッとするというか。

普通に聞けた。
オリジナルを聞きなれているので違和感は否めないが、別バージョンだと言われればさほど気にはならない。

普通の、所謂廉価版のCDというのが正直なところだ。


手元に残ったCDを見て、改めて思う。
贅沢な感覚だと。
本来ダメだとされている物に価値を見出すのはそれなりの贅沢だ。

普通に聞けるものが手に入ってガッカリしている自分はよっぽどだ。
このCD、未だに自分のウォークマンに入っている。しかし、別段聞こうとは思わない。
普通に聞けるから。
贅沢な趣味だと思う。

1つ。
1つだけ、言いたい。

ジャケットのこいつ。

**誰だお前!!

だんご三兄弟じゃなくて、だんご兄弟やんけ!!!**


PS:このCD、アマゾンで調べてみると幾つか種類が出ており、今でも買える。試聴したい人は心して購入して欲しい。充分聞けるから。


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告知ですカクヨムで小説の連載を始めました。タイトルはズバリ、『薔薇のカルペディエム』女の子のペアが巨大ロボに乗り込み、怪獣と戦いながら成長して行く、王道熱血ロボット小説になってます。今の所、noteに載せる予定はないのでよろしければこちらから、ご覧くださいませ。

『薔薇のカルペディエム』


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