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あれもこれも発達障害のせいだったのか

先日、発達障害(ASDとADHD)の診断がついて以来、あれこれ調べている。「水瓶座のあなた!」という具合に、「ASDのあなた!」「ADHDのあなた!」と書かれたものを読むのが楽しい。ずいぶんお気楽に見えるかもしれないが、そう思わないとやってられない、という気持ちもたぶんある。自分ではそれが当たり前だと思っていて、誰でもそうなんだと思っていたことが、どうやら違うらしいのである。いざ自覚してみると結構な人生のハンデじゃないか、と思い知らされる。
「手足がごそごそ動く ADHD」、「特定の音が異様に苦手 ASD」、「うるさい場所が苦手 ASD」、「肌が敏感で肌触りにこだわる ASD」、「マルチタスクが苦手 ASD」……検索で全部ヒット。あれも、これも、どれも、自分のクセや苦手なことがいちいち発達障害の症状だそうだ。
【よくある質問】
Q.そんな特徴、誰にでも多少はあるんじゃないの?
A.おっしゃる通りです。この記事で挙げている特徴のうち、“どれかは”誰にでも多少はあると思います。その程度が「多少」ではなく、想像の100倍ヤバいと思っていただけますと幸いです。“どれかは”じゃなくて全部当てはまる!“多少”じゃなくヤバいレベルかもしれない!という方は、お仲間かもしれません。

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さて、そんなこんなで色々と調べる中、3年前にADHDと診断されたユキちゃん(仮名)とのLINEのやり取りが面白かったので、ここに載せてみたいと思います。(※あくまでもユキちゃんが当事者として見聞きした情報であり、専門家の意見ではありません。そのため、これから書くすべてが正しいとは限らないこと、ご了承ください)

私(朝井)=朝/ユキちゃん=ユ

ユ「今だから言えるけどさ、私3年前に自分にADHDの診断がついたとき、朝井さんは絶対ASDだと思ってたよ」

朝「いや、もう色んな人に散々言われてきたし、自分でも薄々思ってたんだけど、病院に電話予約するの嫌で先延ばしにしてた」

ユ「そのへん(先延ばし癖)はADHDの要素もあるんだね」

朝「うん(※この記事自体も実は1ヶ月も公開を先延ばししてます……)。あとADHDの特徴が出てるのは、手足がゴソゴソ動きまくるとか。布団かけてもすぐ蹴飛ばすから10秒で足が出る。外で座ってるとき足がブランブランするとか、無意識に靴ぬいじゃうとか、落ち着かない。でも基本的にはASDのほうが強いとは思う。電話が苦手なのもASDっぽいし。苦手なことでも気合いを入れてすっっっごく頑張れば一応でき……なくもない、けど、電話一本するのにあり得ないくらい甚大なエネルギーを要する。前日から気持ちを整えて、それでもどうしてもできなくて一日無駄にしたこともあったな……。日常に支障をきたすほどかと言われたら微妙なところだから、診断受けるまでは単なる性格なのかなとも思ってた」

ユ「ただ、ASDの中でも朝井さんは孤立型ASDだろうから、比較的生きやすいほうだとは思うよ」

朝「孤立型って何?」

ユ「同じASDにも、孤立型、受動型、積極奇異型、と色々種類があって、孤立型はまさに朝井さんそのまま。他人と関わることに興味がなくて、一人でいることを好む。無表情で、周囲からすると何を考えているのかわからない。強いマイルールを持っている」

朝「私じゃん」

ユ「ソロ活とかはまさに孤立型の典型って感じ。で、受動型はとにかく受け身なの。パクチーが苦手なのに言い出せなくて、パクチー専門店に黙ってついてきちゃうとか、自己主張をしない。優しくておおらかに見える人が多いけど、実際はしんどさを溜め込んでいるタイプ。積極奇異型は他人と関わりたい気持ちは大きいんだけど、人との距離感がうまく掴めなくて、状況おかまいなしにコミュニケーション取りにガンガン行って失敗しちゃう」

朝「3つとも全然違う! 同じASDと言っていいのかってくらい違うのね。積極奇異型と孤立型なんて、人に対する積極性が真逆」

ユ「孤立型はそもそも必要を感じなければ自分から他人に近づこうとしないから、トラブルにもなりにくい。それゆえに人によっては発達障害に見えない場合もあるね」

朝「そういえば、前に仕事関係の人と発達障害について話してたとき、そこそこ付き合いが長いAさんは『朝井さんは絶対ASDもADHDも持ってると思う』って言ってて、仕事以外の雑談とかを特にしたことがないBさんは『全然そんなふうに見えない』って、意見が思いっきり割れたことがある」

ユ「それはたぶん朝井さんに“海賊版コミュ力”が搭載されているからだね」

朝「なんだそれ」

ユ「これは私の友達の孤立型ASDの人がよく言ってるんだけど、『定型(発達障害ではない人)なら当たり前に持っているアンテナが私にはないから、<こういう場面ならこうする>、<こういう相手にはこう対処する>と場面場面で学習して、機械的に対応する能力を身につけることで、定型に見えるカバー力を得た。海賊版コミュ力ROMを入れてる感じ』。つまり、自分の中で対処マニュアルが生成されれば大丈夫、ということだね」

朝「あ~~~!! それあるかも!!! だから仕事以外で接したことがないBさんには私が定型に見えたのか。Bさんはテレビ関係の仕事の人だったんだけど、その番組では立ち位置や役割がある程度決められていて、それを求められている通りにやる、と明確な指針があるからやりやすくて」

ユ「それ、ASDあるあるだよ。指示や目的が明確に決まっているほうがこなせる」

朝「場面ごとに学習するというのも思い当たるフシが……。例えば、感情豊かな人って基本的に自分と思考回路が違うんだけど、最初わからなくて悪気なく傷つけるようなこと言っちゃっても、何度か会ううちにその人の特性がプロファイルされて、うまくやれるようになるみたいなの、よくある。あと、その相手のことを好きか嫌いかは別として、ツボがわかりやすい人は対処しやすい、というのもあるかも」

ユ「それもあるあるだと思う」

朝「そう言われてみれば、小学校の頃ってわりと毎年いじめられた記憶があるんだけど、中学以降はそういうのなかったのも、海賊版ROMにデータ蓄積したからかな……。小さい頃は空気とか全然わからなかったもんなぁ。今は場の空気が凍ってる、とかはある程度はわかるんだけど、もしかしたらこれも経験則で察知しているのかもしれない。経験のない場で察して動いたり、臨機応変に先回りしたりは全くできなくて、とにかくボーッと気が利かない。これは私が会社員に向いてない大きな理由でもある」

ユ「あと、朝井さんの診断結果の面白いところがさ、ASDの人って<言語理解>のIQが高い人が多いんだけど、<処理速度>は低いのね。ところが、朝井さんの場合は<処理速度>も高いからだと思う」

朝「どういうこと? 処理?」

ユ「つまりさ、会話の中でマズいこと言ったとする。言った瞬間にすぐに反芻して、リカバリーができるんだよ。『あ、今いらんこと言ったな』と即座に自己分析して、謝ったり笑いに変えたりといった処理をしているんだと思う」

朝「あ、それわかる。やってる。もちろんうまくできないこともあるんだけど」

ユ「そうそう。だから『空気を読むのが苦手』というASDの特性は持っているものの、ラッキーなことに処理速度が高かったおかげで助かっているんだと思う」

朝「自分ではコミュ力が全然ないと思っているんだけど、一応なんとなくどうにかなっているっぽい(うまくできてはいないけど大失敗しているわけでもない)のは、そういう仕組みだったのか」

ユ「ちなみに、朝井さんみたいに<言語理解>のIQが高い人を言語凸って言うよ。朝井さんは言語凸で処理凸で知覚凹だね」

朝「その凸とか凹とかって、発達障害にどう関係してくるの? 診断結果にも『数値に大きなバラつきがあるため、本人が思ったよりもうまく能力を発揮できないと感じることが予想されます』って書かれていたんだけど、これはどういうこと? 普通はこんなに差は出ないもの?」

ユ「IQって数値が高い=頭が良い、と思いがちだけど、実はこれはほかの数値との差のほうが大事で、発達障害じゃない人だと確か差は15くらいの範囲におさまっているはず。例えば、言語が150で処理が105の人と、言語が105で処理が95の人がいたとする。前者のほうが頭良さそうに見えるじゃん? でも実際は、日常でうまくいかない感じが出るのは圧倒的に前者のほう」

朝「へえ~。なんで?」

ユ「本人の認知は、『一番IQの高い私』になるけど、周囲からは『一番低いIQがその人の本質』というふうに見える場合があるから。全員が全員そう見てくるわけではないけど、そういう人がいる、ってことね。だから、そのギャップに苦しむというわけ。発達障害ではこの落差が大きいほど、二次障害(鬱とかほかの精神疾患)が起きやすいとされているみたいよ」

朝「なるほど。私は一番高いのと一番低いのの差が31だったけど、これは得手不得手の域を超えるほどの差なんだね」

ユ「そうそう。IQが20離れている相手とは、互いに思考回路が違いすぎて話が合わないって言われてて。それが自分の中で30以上も離れてるんだよ。脳ってそれぞれが連動して機能しているのに、そりゃあ生きづらいよね」

朝「そうやって言われるとヤバさがよくわかるね……」

ユ「あと、ASDの人のほとんどは感覚過敏を持っていたり、発達性協調運動障害があったりするよ。触覚や嗅覚や聴覚からの刺激に弱かったり、運動ができなかったり。嗅覚や触覚と協調運動障害の問題のコンボで、水泳が苦手な人も多いね」

朝「ある。あるよ。水泳の授業、嫌すぎて高校のとき見学の皆勤賞だった。プールの塩素も嫌だし、水着のピタっとした感覚が気持ち悪くて嫌。チクチクした布とか、服のタグ苦手ですぐ取っちゃうし、大勢が同時に喋ったら頭ワーッてなるし。特定の音が異様に苦手で、人の鼻歌とか咀嚼音とか子どもの甲高い声とか聞こえてくるとギョエエエエってパニックになる……(※これについては先日病院で、パニックになったときに飲むための薬をもらいました)。あ、もしかしてアクションゲームが苦手なのもそれのせい!?」

ユ「ああ、それはもろに影響受けてると思うわ! マルチタスクも苦手だから、ドラクエみたいなコマンドバトルなら大丈夫でも、FFみたいなアクティブタイムバトルは苦戦するってよく聞く」

朝「ショックだ。それが一番ショックだ。発達障害の症状で一番ショックだ。こんなに毎日ドラクエ10(※DQ10はアクション要素が多い)をやっているのに道理でちっともうまくならないわけだよ!!!」

◆◆◆

一番驚いたのが、同じASDでもタイプによって全然異なること。また、私は生まれてからずっと私なので、「それを不便に思ったこと」がないようなことでも、これも症状だったんだ……そうだったんだ……、というのがいくつもあったこと。そしてこれだけは何度も言いたいけれど、できないことがあるからダメ・劣っている、では決してないこと。そのことを肝に銘じて、発達障害ライフを楽しんでいきたいと思います。

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