見出し画像

生命科学のフィルタで企業理念を覗き、人事データで科学する

企業理念、最近はミッション・ビジョン・バリューなどと言われているが、あまり好きじゃない。というか、意味の違いがよく分からない。たいていの企業には、何かしら設定されている。ただ、社員として、あまり気にしたことはない。

辞書の上でのそれぞれの意味は知ってる。でも、どんな得があるのか分からない。会社のメリット、従業員のメリット、どちらにせよ分からない。なので当然、ミッション、ビジョン、バリューを、どのように作ればよいかなんて、分からないし、興味がない。

生命科学のフィルタで覗く

でも、生命科学のフィルタを通して眺めると、なんとなくヒントが見えてくる、気がする。「1つの会社」を「1つの生命体」に置き換えて考える。従業員の集合体が会社、細胞の集合体が生命体。あくまでも類似の概念として。もちろん単細胞生物とかもいるけど、話がそれるので、その点はいったん置いておこう。

生命体のミッション:遺伝子を引き継ぐ

生命体のミッションは、遺伝子を次世代に伝えること。まあ、他にもあるんだろうけど、これに仮定する。遺伝子を末永く伝えていくことは、遺伝子の複製と、遺伝子に基づくタンパク質の生成によって実現される。生命体の形とか機能(目で敵を見る機能とか、血液を運ぶ血管の機能とか)が維持されて、繁殖が可能になる。

つまり、タンパク質の合成や分解のプロセスが、生命体のミッション、つまり遺伝子を次世代に伝えることに貢献する。会社のミッションは「人々の暮らしを豊かに」的なあれだが、生命体でいうと、こんな感じだろう。

生命体のビジョン:進化・適応

生命体のビジョンは、進化の過程で環境に適応し続けること。自然選択と突然変異によって、より適応力の高い遺伝子が次世代に引き継がれ、生物に多様性が生まれたり、生存戦略が変化したりする。

具体的には、生物の形が変わったり、機能や行動が変わったりして、環境変化に対応していくということ。会社のビジョンは「10年後には世界トップクラスの●●企業に」的なあれ。

生命体のバリュー:細胞間のシグナル伝達や相互作用の掟

生命体のバリューは、細胞間のシグナル伝達や相互作用の掟。複数の細胞が連動して機能するためには、細胞間のコミュニケーションや、協調性が必要。生命体が、全体として、効率的に機能するために、そりゃ大事だわな。

具体的には、ホルモンや神経伝達物質といったシグナルによって、細胞間で情報が伝達される。細胞同士だったり、細胞が集合した臓器同士だったりが、調和しながら生きている。会社でいう、「寛大であれ」とか「でっかくいこう」的な、あれ。

各細胞に明確に刻まれるDNA

生命体においては、「生存する」というミッションや、「進化・適応」というビジョンに向けて、各細胞が活動する。各細胞が同じDNAコードを保持し、それに基づくタンパク質が生成され、各細胞が機能する。互いに作用し合う。 

生命体における「細胞間のシグナル伝達や相互作用の掟」というバリュー。これは物理法則。静電気的、あるいは構造的な相互作用の物理法則に従う。この法則に基づき、細胞間での物質の輸送やシグナル伝達が、安定して行われる。

だとすると、会社でいうミッション・ビジョンは、ワードの策定や、浸透させるアクションは当然のことであり、これに加えて、従業員がミッション・ビジョンを参考にしながら仕事できることが理想系といえる。細胞がDNAに基づいて活動するように。

つまり、従業員が業務を行うための設計書となるレベルの言葉(別に動画でも音声でもいいと思うけど)が、効果的なミッション・ビジョンに必要と言える。これによって、従業員が明確な目標に基づいて行動し、企業の目的に貢献できる。従業員は、目指すべき方向を理解できる。

バリューは、従業員同士、あるいは上司と部下が協調するためのルール。すると、大切にしているものだけじゃなく、避けるべき行動や禁止事項もバリューに必要なんじゃないかと思う。

細かすぎるミッション・ビジョン・バリュー

こんな細かいことまで規定したら、自由な動きがなくなりそう。DNAに基づいて規則正しく制御される細胞の観点で考えると問題なさそうだが、会社に当てはめると違和感がある。

本来は、会社のミッション・ビジョン・バリューも、かなり細かいところまで決めるべきなんだろう。しかし、現実的に困難。市場ニーズや技術革新、従業員の感情変化があるから。なので、ある程度の柔軟性を持たせておきたい。ストレートな言い方をすると、細かすぎるところまで決めていたら、ミッション・ビジョン・バリューのメンテが追い付かない。

曖昧なミッション・ビジョン・バリュー

ある程度汎用的なキーワードにせざるを得ず、ミッション・ビジョン・バリューを受け取った側が、咀嚼して行動に反映させる。この役割分担になっているんじゃないだろうか。

結局のところ、ミッション・ビジョン・バリューの粒度や、見直しまでの期間は、どのくらいが望ましいのだろうか?という企業個別の課題に行き着く。

じゃあ、どうする

定期的に企業文化の浸透度や適用状況を評価する。めんどうな話だが。これをうまく評価するためには、どのような具体的行動が必要だろうか。例えば、従業員にミッション、ビジョン、バリューに関する質問をする。「ミッション、ビジョン、バリューを自分の言葉で説明してください」「ミッション、ビジョン、バリューがどのように関係していたかを具体的におしえてください」など。

この答えによって理解度や関係度を数値化。どのように数値化するのか?管理職が、回答を読んでスコアを付ける方法がひとつ。特定のキーワードが入っているか否かで判断することもできる。文字数をカウントするかもしれない。言語解析ソフトに突っ込むことかもあり。とにかく、定量化して、関係性を読み解くしかない。なにがハマるか、企業によって異なるだろうし、だれも分からない領域だろう。

従業員の行動や意思決定の観察、360度評価、1on1、アンケート調査などを活用する手もある。互いが互いを見て、ミッション、ビジョン、バリュー的なものとマッチしているかを、個々が判断するってこと。主観的な評価だが、複数からのフィードバックを集めることで、客観的な結果をめざすしかない。

こんな感じの人事分析、ピープルアナリティクスというものは難しく、おもしろい。ピープルアナリティクスの導入ガイドをUdemyで、私自身で動画化、リリースしました。もしよかったら、見てってください。3分の1くらいは無料でみれるので。もうアナリティクスやってるよって方は、見る必要のない動画です。


この記事が参加している募集

人事の仕事

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?