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SPI問題で論理的思考能力を育てる

新型コロナウィルスの影響で、全国の小中学校は卒業式も入学式もないまま新年度へと突入しています。子どもに与えられる宿題も前年度の復習を目的としたものから、新年度のカリキュラムを自習する内容のものに切り替わってきています。
この緊急事態宣言の長期化に伴い、家庭学習の重要性は高まり、この期間の使い方が今後、個々の学力差に大きく影響することは間違いないでしょう。

「家庭学習で差が出る」という焦り

「家庭学習で差が出る」と思うと、親としては、ついつい目の前の予習復習教材の量を増やそうと考えてしまいがちです。
特に、こんな休みでなければ朝から夕方まで学校で学んでいるわけですから、早々に宿題を終わらせてYoutubeやゲームに興じている子どもを見ると、不安な気持ちになるのも仕方ありません。
ただし、子どもの気持ちとしては完全にお休みスイッチが入っているので、「学校に行っていたら…」といくら言われても、モチベーションが上がりません。さらに家の中は学校に行くのと違い誘惑がいっぱいですので、勉強モードへ切り替えたり集中力を維持するのが大変です。
いくら理性に働きかけても、兄弟が遊んでいたり、親がテレビを観ていたりしている中で自分だけ長時間勉強を続けることには限界があります。
ですので、我が家では、あまり多くを望まず、学校から出ている宿題にプラス5分〜10分程度何かに取り組んでくれたら良しとすることにしました。

プラス5分の有効活用

プラス5分とはいえ、毎日の積み重ねは大きいです。
漢字のプリントや計算のプリントを毎日1枚行うでも良いでしょう。
ただ、せっかく1ヶ月も期間があるのですから、日々の予習復習では習得しにくい資質の育成に充ててみてはいかがでしょうか?

論理的思考能力を試されるSPI総合試験

皆さんはSPI試験を受けたことはありますか?
就職や昇格の選考要素の一つとして企業や自治体で導入されており、言語(国語)、非言語(算数)に分かれています。
小学校高学年から中学生レベルの国語と算数の問題を短い時間の中でどれくらい正確に解けるかというタイプの試験で、知識よりも読解力、思考能力、論理性を問う構成になっています。
特に非言語(算数)は、方程式で解くような問題ではないため、四則演算さえ出来れば年齢に関係なく回答することができます。むしろ、小中学生の方が頭が柔らかい分回答率も高いかもしれません。
実際の問題はこんな感じです。

P、Q、R、S、Tの5人で徒競走をした。
5人の順位について次のことが分かっている。
ⅰ)Rの順位は、Sより上である
ⅱ)Tの順位は、Rよりも上だが、1着ではなかった
ⅲ)Qの順位は、Pより上である
ⅳ)同着の順位の者はいない

(1)次のア、イ、ウの推論のうち、必ず正しいものはどれか。
 ア Qは1着である
 イ Sは5着である
 ウ 2着はPまたはTである
引用:https://saisokuspi.com

これは推論の問題ですが、集合や場合分け、割合や割引といった要素で構成されています。割合や割引などの計算が必要となる問題も、計算力より、どの値を分子や分母として扱うかという、問題を分解して組み立て直すプロセスのところを重視する内容となっています。

こういった能力は、学習過程で所々取り組むことはあっても、体系立てて取り組むプログラムはありません。今後大学入試自体も知識を問うものから読解力や論理的思考力、証明能力を問うものへと変わっていくことは間違いないため、今からその素養を身につけておくことは決して無駄ではありません。

小学生向けのSPI教材

上記の理由から、我が家では上の娘に対して、この長期休みにSPI問題を使って論理的思考能力を育てるカリキュラムを組むことにしました。
3月の終わりに急遽学校が休みになったタイミングで早速書店に行き、小学生向けのSPI教材を探してみたものの、残念ながら全くそういったものはありませんでした(小学生が受けるSPIが無いので当たり前といえばそうなんですが)。
ですので、論理的思考を養うドリルを中心に類似した教材を当たったところ、ボリューム的にも内容的も小学校中学年の娘にちょうど良さそうだったのがこちらです。

Vol.1というのもあったのですが、小学校低学年以下レベルの問題も多かったため、小学校中学年以上にはVol.2が適当と判断しました。
中身はこんな感じです。

数独みたいなものから、逆算式までパズル的要素の強い問題が並んでいます。
我が家ではこれを1日1ページやることにしました。
もちろん、宿題以外で課題を課すわけですから、我が家のいつものルールに従って、1ページごとに1スタンプを付加する報酬としました。

「どのページから進めても良い」の意図

進め方についても、最初のページからではなく、好きなページの好きな問題からやって良いことにしました。我が家では小学校2年生くらいから毎日百ます計算もやらせていますが(※)、それも好きなマスから書き込んで良いとしています。
それは、そういった要領の良さも実社会では重要だと考えているからです。

言われたことを言われた通りにやる力
と同じかそれ以上に
言われたことの目的を理解して、一番目的に近いやり方を見つける力
が必要だと考えているからです。

※百ます計算に関する記事はこちらから

やらせる上で大切にしたいこと

まずは、あれこれ言わずやらせます。
そうすると、1ページ1問なので、簡単そうなところから着手し、サクッと終わらせます。ですので最初の頃は大した負担ではありません。また一度コツを掴めば、似たような問題はどんどん早くなります。
普段の学習プリントと異なり、解けていく快感のようなものもあるので、パズル感覚で取り組んでもらえると思います。

やらせる上でのポイントとしては、1問あたりの時間を計測させることです。
我が家では百ます計算を毎日時間を測ってやっているので、ストップウォッチを使って測ることには慣れています。大体1問2分くらいで解け、早いものは数十秒です。ただし、一度詰まると4,5分掛かるものがあります。
もう一つのポイントは、親がきちんと答え合わせをして、その時間を見ながら思考のボトルネックを見つけることです。
思考のボトルネックといっても、足し算ができないとか掛け算ができないというレベルではなく、こういった問題を解く上で必要となるテクニックとセンスのどちらでつまづいているかを確認する作業になります。

テクニックとセンス

実際に娘にやらせてみて分かったことは、こういった論理的思考を試す問題においては、つまづくポイントはセンスかテクニックのどちらかが不足しているということです。センスと言っても生まれつきのものではなく、問題のルールや傾向を理解して「当たりをつける」能力のことです。
例えば、下のナンバープレイス(数独)タイプの問題を例にして説明すると、

まずルールとしては、

1. 開いたマスに1〜9 の数字を入れる
2. 縦横それぞれの行や列にもそれぞれ1〜9の数字が入る
3. 太枠で囲われた範囲にもそれぞれ1〜9の数字が入る

といったものになっています。
まずどこから着手するかという時に、早速センスが必要になります。
この問題であれば、空欄の少ない行や列に着目できるかどうかがそれに当たります。
ゲームのルールをよく理解して、ゲームを有利に進めるための戦略を見出すことは、実社会においても重要な能力です。例えば、入試から始まり、就職活動や入社後の競争など、一見横並びのルールの前で、何も考えず正面から取り組むのか、その歪みに着目し競争優位を獲得しようとするのかでは、長期的な生存能力に大きな差が出ます。

話を戻すと、この行と列に着目が出来れば、空欄に入る可能性がある数字が見えてきます。

さらに右下の9マスの正方形に絞って考えれば、既にその中に5と9があるため、残りの4マスには5と9が入らないことが分かります。

ここでは、可能性のある数字をメモとして書き込むというのがひとつのテクニックです。頭の中だけで考えていると、記憶に漏れが生じ、途中まで進んだ段階で不整合が起き、手戻りになるケースがあります。きちんとメモをすれば、そのリスクを減らせます。

そんなことはテクニックというほどのレベルでは無いのかもしれませんが、意外と社会に出るとこれが出来ずにつまづくことが多いです。特に学生時代の成績が良かったにも関わらず、入社後に結果が出ない子において、素早く処理をしようとしてこういった手順を割愛する傾向が見受けられます。そういったタイプはPCのデスクトップにファイルがたくさん置いてあったり、ブラウザやEXCELがたくさん立ち上がった状態で仕事をしているという傾向もあります。
時間の限られたテストであれば、書く手間を省いて頭の中で処理をする方が競争優位を獲得することができますが、実社会の課題においては、処理が複数日に跨り、関係者との調整も発生するため、ひとつ処理をしている間に違うタスクがどんどん積み上がり、自分のペースで処理ができなくなります。それを克服しようとメモやファイリングといったプロセスを省いて、マルチタスクで色々やろうとすることで返って全てが中途半端になり、悪い方に転ぶ流れになってしまっているのです。
メモを取らないとかメモの取り方が分かっていないという人材も同じタイプの可能性が高いので要注意です。
そういった実体験もあり、欲張らず一つ一つ手戻りが無いよう自分の思考過程を残しながら処理をすることは非常に重要なテクニックと考えています。
ただメモの仕方についてお話しすると、そこはテクニックに加えセンスも必要だと感じる部分もあります。メモは記憶のバックアップ装置であると同時に記憶を呼び出すための鍵になります。どこにメモするかも含めて、自分の思考傾向や記憶能力を客観的に把握出来ている人ほど無駄のない補完関係が築けていると感じます。

もう一度、問題に戻ると、一番下の行に注目すると同じ行に7があるため、右から2番目のマスは2で確定します。

同じように一番右の列に注目すると同じ列に2があるので、下から2番目のマスは3か7になります。

同じように行列の関係を見ながら可能性を整理すると、右下の正方形の中は、以下のようになります。ここまで埋めたところで、次どこに着手するかが、またセンスになります。

センスと表現していますが、私の中のそれは閃きのように無から生まれるものではなく、パターンの集積によって判断の速度と精度が上がっている状態を指します。
優秀な人工知能でも、膨大なパターンデータ無しには機転の効いた回答が出来ないのと同じです。そういった意味でもこういった問題に継続的に取り組むことがセンスを磨くことに繋がると考えます。

今回は、ナンバープレイスタイプの問題をベースに説明しましたが、天才脳ドリルには多様な問題パターンがありますので、その答え合わせを通じて、子どもにきちんとセンスとテクニックについて解説していくプロセスが一番重要だと考えており、幸いなことに今回はそうやって手を掛ける時間も確保しやすくなっていると思います。
勉強を教えるというスタンスではなく、社会で必要となる論理的な思考能力に関して、ビジネスでの実体験などを交え、子供に伝えるには丁度良い機会ではないでしょうか。

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