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もやブロ#50 湯沢町観光計画とパブリックコメント(書いた内容大公開)

こんばんわ。越後湯沢のローカルベンチャー起業家・きら星の伊藤綾です!

普段は、地域づくりという文脈で、移住支援を中心とした事業に取り組んでいるのですが、私の住んでいる新潟県湯沢町は人口8千人の町ながら、コロナ禍の前までは400万人/年以上の観光客を受け入れしていた観光立町です。

そんな町の次の10年における観光の指針・方針を決める「湯沢町観光計画」策定に向けたパブリックコメント(パブコメ)を募集していたので、超絶滑り込みセーフになりましたが提出してきました。

そもそもパブコメって何?

湯沢町におけるパブコメとは、以下の通り定義されています。

パブリックコメント制度とは、町民参加の代表的な手続で、行政機関が一定の政策等を策定しようとするときに、政策等の趣旨、目的、内容等広く町民に公表し、これに対する町民からの意見の提出を受け、町民から提出された意見とこれに対する行政機関の考え方を公表する手続です。

出典:湯沢町Webサイト「パブリックコメントとは」

・町民参加の代表的な手続き
・町民から提出された意見と、対する行政機関の考え方を公表する手続き

ということで、まちづくりの基本と言いますか、市民参加の第一歩とも言えることです。計画は、後々に出てくる細かい戦略や具体的な政策などの礎になってくるものです。後出しジャンケンで、各政策を是々非々の議論をする前に、上位のところから道筋を作った方が建設的ですよね。

まぁ、大抵意見を出したところで・・・と言う現実はあるのですが、出さないで後で文句言うのもフェアじゃないじゃないですか。

本編の紹介

観光振興計画およびパブコメの募集は、下記のようなページに表示されています。
皆さんのお住まいの町でも、定期的に「●●計画」「●●戦略」などは策定していると思いますので、自分の住むまちでこういったパブコメを募集しているかどうか「(自治体名) パブリックコメント」等で検索してみてくださいね。

湯沢町観光振興計画案 目次

1.計画の背景と目的 ・・・2
 (1)計画の背景と目的 ・・・3
 (2)計画の期間 ・・・4
 (3)計画策定の意義 ・・・7
 (4)前計画の検証 ・・・8
2.湯沢町観光を取り巻く現状と課題 ・・・12
 (1)内部環境の変化 ・・・13
 (2)外部環境の変化 ・・・29
3.湯沢町が目指す観光の目標像と基本方針 ・・・41
 (1)目標像 ・・・42
 (2)基本方針 ・・・46
 (3)ターゲットの考え方 ・・・47
 (4)各主体の特徴と役割分担 ・・・48
4.目標像実現のための戦略 ・・・50
5.エリア別の方針 ・・・69
6.成果指標(KPI) ・・・74
7.計画推進の仕組み ・・・76

上記のような構成になっております。
ちなみに、こうした計画などは、役所で内製することもありますが、大抵はコンサルに委託しているところがほとんどです。

伊藤のパブコメ紹介

さて、私がどのようなパブコメを出したのか、実際の提出内容と、それに対応する計画(案)の抜粋とを比較してご紹介してみることにします。

意見方針

今回の観光振興計画は、結構「戦略」の部分が具体的なものが出てきていると思っていて、良いか悪いかは評価が分かれるところではないでしょうか。

私個人的には、10年の計画なのだからここまで具体的な戦略を書かずとも、もっと重要なのは根幹となる「ビジョン」や「基本方針」だと考えています。
ゆえに個別具体的な戦略についてのコメントは控えて、全体方針に関わるところのみコメントをつけることにしました。

意見1:町が目指す観光の目標像の変更提案について

P42 湯沢町が目指す観光の目標像

ここで示される目標像は、湯沢町の観光振興のための具体的な行動計画を導き出し、町民及び観光事業者が一体感を持ってその具体的な行動計画を実践していくためのビジョン・指針・羅針盤というべきものです。

しかしながら、目標像「あたたかい”雪と人”が出迎える、世代を超えて記憶に残るまち・湯沢」は、スローガン、キャッチコピーといった印象のもので、上記のビジョン・指針・羅針盤として弱く、目標像としてふさわしくないと思います。また、P46の4つの基本方針との関係性も曖昧であるように思います。
例えば、46Pの基本方針②や基本方針④を意識し、「百年先も続く持続可能な観光地」など、より町民にとって求心力があり、行動を起こさせるようなものであって欲しいです。基本方針によりリンクするような目標を設定する必要があると思います。

現状の計画案の目標像では、町民及び観光事業者が一体感を持って観光振興に取組むことができるのか、疑問が残ります。

意見2:基本方針の重みづけの変更提案について

P46.基本方針

基本方針に挙げる順番として、④次世代に継がせたい観光産業、を最初に挙げていただきたいです。他の基本方針①②③は、持続可能な観光産業の仕組みづくりを抜きにしては語ることができず、基本方針④が4つの中で最も重要なものだからです。

若しくは、前述の通り、基本方針の④を目標像として格上げしていただくのはいかがでしょうか。

意見3:ターゲットについて

P47. ターゲットの考え方

ターゲットが不明確だと思います。幅広く取るのは良いのですが、目標像(P42)が曖昧であることから幅広く取らざるを得ないのではないでしょうか。国内なのか、国外なのか、または国内なら特にどこからなのか、目的はなんなのか等によってもっとターゲットを選別・取捨選択されないと、今後10年の打ち手であるP50以降の戦略が全てぼやけてしまいます。

例えば、「次世代に継がせたい観光産業をつくる」が目標像であれば、方針として、「観光事業者が持続的に稼げる仕組み・観光資源づくり」のような方針が追加でき、富裕層をターゲットにした高単価な旅行商品づくりと磨き上げなどの具体的なターゲット及び戦略に結びついてくると思います。(これは、富裕層をターゲットとすべきという意見ではなく、ターゲットの具体化の一例です。)

計画案では、「例えば初めてのスキーや初めての子供連れの旅行、3世代旅行等に強みが発揮できます。子供からご年配の方まで幅広い世代が一緒に楽しめるデスティネーションとして磨き上げをおこないます。」と記載がありますが、このような形でぼやけさせるのではなく、複数でも良いのでターゲットを特定して明記する必要があるのではないでしょうか。(国内富裕層、首都圏の30〜40代ファミリー層、アクティブシニアのスキーヤー等)

意見4:環境負荷の少ない観光地づくり挿入の御礼

P51. 目標像実現のための戦略 目次

環境負荷の少ない観光地経営を盛り込んでいただきありがとうございました。「雪」を守るためにも、「次世代に継がせる」を実現するためにも、環境まちづくりをどうしていくか真剣に湯沢町として優先的に取り組んでいただきたいと思います。

P61. 町内外が一体となっておこなう自然環境の保全

※本内容については2019年のDMO設立検討のためのワーキンググループの際や、コンサル事業者さんからの事前ヒアリング等の際に再三「環境負荷の少ない観光地経営」を項目に入れてほしいと伝えておりました。
雪室冷房等の活用や、化石燃料に頼らない暖房設備の導入、温泉排熱やバイオマスなどを取り入れたエネルギー政策を実施したり、廃棄物・生ごみなどの排出を減らす仕組み(公共コンポストなど)を取り入れたりと「観光立町だけでなく環境立町としても成り立つ湯沢町」に。というのが私がこの町で成し遂げたいことの1つです。

意見5:成果指標の設定方法について

P75. 成果指標(KPI)

意識調査等で得られる客観性に欠ける数値(湯沢町の若者の定住意向、観光客におもてなしの心で接している町民の割合 、自然環境に配慮されていると感じている人の割合)は、成果指標として採用すべきではないと思います。

例えば以下のような指標を代替として提案致します。若者の転出率の変化、町民(生産年齢人口)の平均年収、観光事業者の平均年収、脱炭素化に向けた再エネ補助金の活用件数、等。

意見6:全体を通して(課題と現状)

P13-P40が「湯沢町観光を取り巻く現状と課題」となっている

2.湯沢町観光を取り巻く現状と課題、についてですが、こちらの項に記載されている各資料は「現状」に関する事実やデータばかりで、そこから導き出される「課題」について明示されていないのではないでしょうか。各データや事実に対する、町として認識している課題を、再度有識者を交えた上で洗い出した方が良いかと思います。

パブコメを出し終えて

私はほんの2枚ほどではありましたが、AllYouthYuzawaの仲間たちの中には9枚も書いた!という猛者もいたようです。

国の計画に対するパブコメは出したことがあるのですが、町の計画に対するパブコメを出したのは実は初めてです。というのも「出しても何も(どうせ)変わらない」という勝手な諦めがあったからです。
ですが、今回、みんなでパブコメを出してみよう!というイベントがあり、同年代の仲間達8名程度であーだこーだと議論ができたので、パブコメを出すという機会を通じて皆と興味関心の目線を合わせる。という経験は非常に有意義に感じました。

正直、この計画策定に関わっている職員の方々の顔が見えるが故に、好き勝手辛辣に書くこともためらわれたのですが、こうした市民参画の活動を通じてまちづくりに興味を持つ方が増えればいいなと思い、パブコメ提出・そしてそれをnoteで公開をさせていただきました。

じっくり計画を読んで、フィードバックを作ること自体は2〜3時間あればできると思うので、まずはみなさん取り組んでみてはいかがでしょうか?
(そして、調べようと思えば、どんどん沼にハマっていくので際限なく時間を使ってまちのことを考えることもできます!)

▼そんな観光のまちで、交流拠点・ワークスペースの運営をしています。

▼民営コワーキングを2年ちょっと運営したノウハウnoteが40本以上売れています。

それでは!きら星のもやでした。
また次回の更新までお楽しみに!

この記事が参加している募集

「魅力的なまちで溢れかえっている世界を」作り「地方で暮らす人を増やし消滅可能性都市をなくす」ことをミッションに動くまちづくり会社社長。湯沢町で暮らす2児の母でもある。