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もやブロ #11 ワーケーションin熱海〜後編〜

こんにちは。ヤルヤル詐欺で、熱海ワーケーション記の後編をしばらく放置していました、もやです。(前編・中編)

予告していた通り、熱海と湯沢という2地域の比較から少し街のことを掘り下げてみようと思います。

今回主に基礎調査に使ったツールはコレ。経産省の所管で作られている地域経済分析システム「RESAS(リーサス)」と言います。3年前くらいから使っていますが、ダッシュボード機能が追加されたり、地域比較ができるようになったり(私のMac環境では使えず)と毎年機能アップデートされています。経産省さんが出しているので、主に地域経済周りのデータは簡単に取れます。

熱海と湯沢の共通点

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簡単にまとめてます。あくまで主観ですので、他にも思いついたらぜひ教えてくださいね。

・新幹線駅がある
・首都圏の玄関口である
・温泉地である
・観光地である
・山がち
・リゾートマンションが多い
・ショッピングモールなどがない

交通の特性と産業の特性が類似しているのが大きな特徴です。あとは海に面しているか否かというところもありますが、山間地というところもまちづくりの上では共通点になります。平地のまちづくりと山間地のまちづくりは全然違うので。平地であれば、道路や集落、田畑なども形成しやすいためスプロールになる傾向がありますが、山間地では街中を結ぶネットワークの作り方が変わって来るためコンパクトシティになりやすい。
あとは観光地の中でも、リゾートマンションがあるというのも珍しく、ポイントです。同じ温泉/観光地でも那須塩原や道後温泉にリゾートマンションはありませんよね。
ショッピングモールみたいなものがないというところも、個人的にはポイントです。食品/日用品以外は町外での購買をする傾向につながります。

データで見る熱海と湯沢

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先んじて申し上げると、RESASから取っているので(大元が国勢調査だったりします)データの年度が若干前のものになります。また、RESAS以外からの出典は、統計方法が異なることもあり単純比較ができないデータがあります(観光/宿泊数)。あくまで参考値として、ご笑覧いただけると幸いです。

基礎自治体の人口は首都圏に近いこともあり、かなり違います。ですが、熱海は周辺の真鶴町、湯沢は南魚沼市と同じ生活・経済圏にあるとも考えられますので、近隣も含めた経済圏だと同じくらいの人口を擁しています。

65歳以上の老年人口比率は、熱海の方がはるかに高いです。全国的に見てもかなり高く、高齢化の先進地域とも言えます。かつて熱海がハネムーンの聖地だった時代に熱海の観光産業で働いていた方々が、そのまま歳を重ねたこと。中編でもさらっと触れた中銀ライフケアのように気候や環境からシニアが住みやすいというイメージで、セカンドライフの場所として選択されていることなどの要因が考えられます。一方、湯沢町も全国平均の老年人口比率よりは高いです。例えば新潟市では2015年時点での老年人口比率は22%ですから、それと比べると11ポイントも高い。

企業の売上高や企業数は、参考までにご覧ください。データを見ていく上では付加価値額が大事だと思っているのですが、そもそもまちの大きさが違うのであえて載せていません。どちらも、主力の産業は「宿泊・飲食業」の観光サービス業です。これが売上高の約半分の割合を占めている。全国的にも珍しい産業構造モデルなのではないでしょうか。
相違点は、宿泊・飲食の次の産業。熱海は、小売・卸売業が来ています。湯沢は建設業が来ています。熱海では、駅を降りてからすぐ、駅ビル〜商店街が所狭しと並んでおり、目玉の商品として様々な土産物の製造・販売をしています。商店街から少し外れると、自家製の干物を作っている工場があったり。近隣の小田原と連携して練り物屋さんも多いです。あとは前出の熱海プリンだったり、流行り物の開発にも余念が無い。湯沢も駒子もちなどの美味しい銘菓や、最近では(株)いせんさんが店舗や商品開発を積極的にされていますが、COCOLOのがんぎ通り・ぽん酒館の単独集客が大きいように見受けられます。湯沢の建設業が2番目に大きな産業という理由は、単純に工事だけでなく冬季の除雪という需要があります。冬でも湯沢が快適にドライブできるのは、消雪パイプ&除雪で建設業の事業者さんが頑張っているから。
こんな産業構造の違いからまちを見ていくと、面白くないですか?

さて、次に観光を見ていきます。
湯沢の年間観光客数は425万人。昨今、中国・香港からだけでなくタイ・ベトナムなど広くアジアからのお客様が増えています。特にスノーシーズンの平日なんかは、日本語よりも外国語が多く聞こえてきます。あとは、雪国観光圏というDMOがあり、湯沢町だけでなく周辺7市町村での観光マネジメントをしている組織があるというところも特徴です。もちろん、各地域には観光協会があるのですが、地域を横断してエリアで魅力を高め合う取り組みにチャレンジしています。

熱海の年間観光客数は335万人。インバウンドが少ないというのが市でも認識をされているとのこと。ゴールデンルートにかかっているのに、通過されてしまうんですね。東京から1時間以内に着ける地の利を生かしてこれからどのように集客していくかが楽しみです。

最後に、自治体の経済力を示す2指標をデータとして取り上げてみました。財政力指数と将来負担比率です。さて、それぞれの言葉はなんぞやと。

【財政力指数】地方公共団体の財政力を示す指数で、基準財政収入額を基準財政需要額で除して得た数値の過去3年間の平均値をいう。(総務省より)
→財政力指数が高いほど自主財源割合が高く、財政力が強い団体ということ。1を超えると地方交付税の交付がなくなる。
【将来負担比率】地方公共団体の借入金(地方債)など現在抱えている負債の大きさを、その地方公共団体の財政規模に対する割合で表したもの。(総務省より)
→比率が大きいほど、将来の負担額が大きくなる可能性。

小難しいですね。
ともかく、お伝えしたいことは、財政力指数において熱海は0.92、湯沢は0.99と自主財源での割合が高い(自前で稼げているまち)ということです。過疎で産業のない自治体では、0.4代なんてのもざらにあります。つまり、地方税で稼げるところがあまりないから、国税を注入してもらって自治をしているということです。予算において国への依存度合いが高い、とも言い換えることができます。
一方、将来負担比率は熱海6.3%、湯沢41.6%と結構違います。簡単にいうと湯沢の方がこのままの経営をするとジリ貧になるよということです。これは、現在リゾート施設などの固定資産税が税収として多く入っているのですが、固定資産税は年々減少していくもの。そういった背景も踏まえて、新たな食い扶持を見つけていかないといけないでっせ。という分析です。

最後に

アカデミックな内容を期待された方には物足りなかったかもしれませんが、こうして色んなまちを歩いて感じてデータで見て考えてをすると、まちづくりが身近で面白く感じませんか?
まちづくりは、難しくない、楽しいものだということが1mmでも伝われば幸いです。
需要があれば、比較シリーズ作りたいと思いますので「スキ」をポチしてもらえると大変嬉しいです。Twitterでもリクエストお待ちしておりますw


「魅力的なまちで溢れかえっている世界を」作り「地方で暮らす人を増やし消滅可能性都市をなくす」ことをミッションに動くまちづくり会社社長。湯沢町で暮らす2児の母でもある。