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【読書感想文】他責性の表現は一読の価値がある【仮想人生】

ドーモ、織田牛奈(noteのすがた)(@butakichi3hide)です☆三(ゝω・)vキャピ

SNSのスラム街ことTwitterは毎日色んな所で諍いが発生しております。そんなTwitterを舞台にした小説がある!それがこちら。

はあちゅう作「仮想人生」です。


「仮装人生」じゃないぞ!!

ユカの夫・恭平は、人材派遣会社を経営しており、いつも帰りが遅い。一人で過ごす夜に耐え切れず作った、ツイッターの裏アカウント「人妻の美香」。そこから覗く世界には、表では聞けない欲望と愚痴がうずまいていた。ネットでナンパを繰り返す「圭太23歳」。ツイッターにアップした絵が突然注目を浴びる大学生「ナオ20歳」。情緒的な恋愛ツイートが人気の「暇な医大生21歳」。童貞食いを繰り返す「ねね42歳」。彼らがツイッターの中で少しずつ交わるとき、表の世界では恭平が姿を消す―。失敗も、成功も、人生はふとした出来事で変わる。ネットを知り尽くす者にしか描けないSNSでむき出しになる人間の素顔。衝撃の裏アカウント小説!

Amazonから引用

ということで今回は「仮想人生」の感想を書いて行こうと思います。

それではどうぞ。



「裏アカウント小説」として読むと思いっきり肩透かしを食らう


まず「衝撃の裏アカウント小説!」と銘打ってますが、帯の宣伝で謳ってるほどの裏アカウント要素を期待すると肩透かしを食らいます。

正確には裏アカウント要素がないというよりも「表アカウントの描写が殆ど無いから裏も表も無い」なんですよね。
「現実世界を「表アカウント」とし、SNSを「裏アカウント」とする」のであればある程度理解出来なくは無いですが、それでも言うほど現実世界の話もあまり多くないしな…。

私が想像する「裏アカウント」は例えば「表垢では仲良くしてるけど、裏垢でメッチャ貶してる」とか「嫌いな芸能人等に対して複数アカウント作ってひたすら攻撃的なリプを送ったり嫌がらせする」とかでしょうか。「表立って応援出来ないが裏垢を作って別人として応援する」みたいなのも想像できますね。ブラックジャックの「海賊の腕」とかまさにそれですよね。

上記は個人的に好きな話なので是非読んでほしい。太めの女の子が献身的でいいのだよ…。
まあ仮想人生にこの展開は無いんだけどな!!

そして登場人物たちがやってることと言えば「イラスト投稿」「疑似無料出会い系掲示板」「有象無象のツイートを見て安心orバカにする」で正直Twitterである必要なくね?って感想の方が強いんですよ。「他人の発言を剽窃して炎上」に関してはいかにもTwitterだと思いますけども。


登場人物に全く共感できない

きっと私がこの小説に向いてないせいだと思うのですが、登場人物たちに全く共感できない…と言うか読みながら「いや、そうはならんやろ」とついツッコんでしまうのです。

旦那とセックスレスで女としての自身を取り戻すためにTwitterで出会い系を試みる「ユカ」やそれを勧める友人「美香」の倫理観と貞操観念の無さにドン引きし、「裕二」のTwitter炎上で見せる自己中っぷりにドン引きし、「工藤直人」の芸能界への怨嗟の声には同情するものの俯瞰視の出来なさに唖然とする。
逆にナンパ師と童貞喰いの二人は共感こそ出来ないものの上記三人に比べれば相対的にまだマシとなるのが少し面白いところ。ただ上記三人が強すぎて印象は空気だけども。

ついでにキャラクター達が全体的に「上から目線」なのも何となくモヤモヤしました。ユカが顕著で有象無象の裏垢たちを見ながら蔑むシーンがチラホラ出るのですが、私からしたら「お前もほぼ同じ穴のムジナだろ!」とつい思ってしまうんですよね。

きっとこういったアブノーマリティ溢れる登場人物が沢山出てくる小説を読みなれていれば「ヒャッハー!!面白くなってきたぜー!!もっとヤベーのは出ないんか!?」となるのかもしれませんが、ちょっと私にはまったく共感出来ませんでした。まだまだ修行が足りませんね。
もしかしたら私が同じ境遇で且つ同じくらいの倫理観なら「あ〜分かる分かる!不倫したくなるよね!!」ってなるかも…いや、ならないか。


「他責性の発露」の表現には光るものを感じる

登場人物たちに全く共感出来ずドン引きした私ですが、この作品内で光るものはいくつかありました。


「他責性の発露」です。


特に「裕二」の「他人のツイート剽窃で炎上」と「工藤直人」の「芸能界における扱いの悪さへの怨嗟」、やってること自体は違うのですが両者とも基本思考が見事なまでに「俺悪くない」「アイツらのせいだ」なんですよね。醜悪過ぎて清々しいまである。

ここの表現がとてもリアルで悍ましいほどの呪詛的な魅力を放ち読者を惹きつける文章となってます。この箇所に私は筆者の才能と言うか光るものを感じました。「他責性の発露」の表現に関しては私が自信をもってオススメしたい。


違和感のある夫婦関係

この小説を読んでて強く感じたのが「ユカと恭平夫婦に対する違和感」なんですよね。その違和感の大半は「恭平の本当の職業をユカに伝えてない&恭平に聞かない」なんですよ。

作中で「聞くと関係性が壊れそうで怖い」とユカが思ってるのが分かるのですが「お前その脆弱すぎる関係性でよく結婚したな!?」と思っちゃうんです。いや、力関係云々どころの話じゃないじゃないですかやだー!!

一方恭平に関しては作中で何故ユカに本当の職業を明かさないのか?は明かされません。と言うか恭平に関してはちょっとセリフがあるくらいでほぼモブなんですよね…。

デリホス(しかも業務上禁止されている女性と性行為も営業としてしてる疑惑有り)を結婚する前からやってるのか、それとも結婚してから転職されたのかは私は読み取れなかったのですが、どちらにしても結婚相手に言わないのは不誠実の極みではありませんかね。「結婚相手が職業を偽ってた」って相当ですよ。
作中では色んなキャラが割と「夫婦だからって全ての秘密を明かす必要は無い(要約)」的発言をするのですが、私の考えは逆で「取るに足らない秘密なら共有する必要は無いが、どう考えてもデリホス(+女性と性行為営業してる疑惑)ならパートナーに伝えるべき」だし「関係性が壊れるかも…と質問することを躊躇するなら既にその関係は破綻してる」と思うんですよね。

後半で恭平が謎の失踪した後にひたすらユカが恭平への愛を語るシーンがあるのですが、上記があってどうも私には「私は恭平から愛された(愛されてる)はず」と自己暗示のように感じて何とも薄ら寒く見えてしまいました。
そして失踪したときに恭平の心配と同時に家賃や生活費・自分の将来を心配したのは専業主婦の立ち位置からしたら非常にリアルだなと思うのと同時に「やっぱそこなんだなw」となってしまいました。
ただ不倫を試みた事がバレた時点で同様の事例が発生するんですが、そこに関しては何も考えなかったんですかね…


まとめ

ここまで割と批判的に書いてしまった気がしますが、私は割と本気目に「他責性の発露」で才能があると思っています。
是非次回フィクションを書かれるのであれば是非「他責性の高いクズたちばかりが登場し破滅していく作品」を書いてみてもらいたい。はあちゅうさんの才能をもってすれば絶対に面白い作品になると思うのです。

私は「他責性の発露」の表現の箇所が気に入ってますが、全体的にかなり癖が強く読み手を選ぶ作品だと思ってます。
そのため「光るものは感じるがオススメはしない作品」とさせていただきます。

そういえば2月10日に文庫版として「仮想人生」改め「特別な人生を、私にだけ下さい。」が発売されました!今から「仮想人生」を読みたい方は「特別な人生を、私にだけ下さい。」を購入された方が多分、お得です。

ところで何故改題したんでしょうね…不思議だわ。


以上、参考にされたし。


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