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ロンドンのクリスマス ー 心躍る英国ファンタジーの世界

クリスマスの時期になると、毎年ピカデリーサーカス界隈を歩きたくなる。目的はクリスマスショッピング、でもあるけれど、別の楽しみがある。街頭に飾られたイルミネーションやショウウィンドウを見にいくこと。

ピカデリーサーカスは、エロスの像を中心に円形広場のようになっており、その周りに数々の通りが走っている。

ピカデリーサーカス

優雅なカーブを描く建物が魅力的なリージェントストリート。人気のアパレルショップや高級デパートのリバティ、アップルストア、おもちゃのデパートハムレーズなどが並び、世代を問わずお買い物を楽しむ人たちが行き交っている。

リージェントストリート

この通りには、大きな天使の装飾がほどこされており、夜になってライトアップされると通りを天使が舞っているように見える。

同じく大きな通りのピカデリーには、観光客にも大人気のデパート、フォートナム&メイソンがある。紅茶などの食料品を中心に扱っており、店内は常にたくさんの人で賑わっている。クリスマスの時期、ここにはショッピングを楽しむ人たちだけではなく、建物の装飾を楽しむ人たちも集まってくる。私もその中の一人。

まずは、道路の反対側に渡って建物を見渡すことをお勧めする。なぜなら、この建物全体がアドベントカレンダーに様変わりしているからだ。

フォートナム&メイソン

窓に数字が描かれ、赤くライトアップされる姿は童話の世界に迷い込んだような驚きに包まれる。結局同じような写真ばかりになってしまうのに、わき起こるステキな高揚感をおさめたい気持ちから、何回も写真のシャッターを切ってしまう。

それから、信号を渡ってお店の近くへ行き、今度はショウウィンドウに注目しよう。

ここには、毎年様々なテーマでかわいいオブジェが並んでいく。今年はウィンドウごとに違った動物が主役になってストーリーができていた。

リスの世界

リスがクルミやクリの中に入って遊んでいたり、ウサギが玉ねぎやニンニクがバルーンになった飛行船に乗ってブロッコリー、にんじんなどの野菜に囲まれていたり。

ウサギの世界

そして最後のウィンドウでは、スカンクがシャンパンの瓶を開けて、パーティーを開いていた。

スカンクの世界

おや、このウィンドウの右下にはスカンクの人形が寝ている。そこから吹き出しが出ており、ウィンドウの中のストーリーに繋がっているようだ。どうやら、それぞれの動物たちが寝ている間に夢を見ている物語が描かれているということなのだろう。

一つ一つのウィンドウの前で立ち止まり、じっくり眺めていると自然と顔がにやけてくる。

なんだかロンドンのクリスマスは、夢があるなあ、そんな気持ちになりながら通りを進んでいくと、レスタースクエアに出た。

この辺りは劇場街となっており、この広場には映画や舞台の登場人物たちの像がある。ハリーポッターやパディトン、Mr.ビーンなどを見つけて楽しむことができるのだ。

そして、クリスマスの時期になると、ここはクリスマスマーケットの舞台となる。

マーケットの入り口にいるのは、傘をさしたメアリー・ポピンズ。

「メアリー・ポピンズ」は、英国の女性作家による児童小説であることはご存知だろうか? 傘をさして風に乗り、子供たちの家庭教師としてバンクス家にやって来たメアリー・ポピンズ。彼女の周りでは次々と不思議なファンタジーの世界が繰り広げられていく。ディズニー映画では、「チムチムチェリー」や「お砂糖ひとさじで」などの曲が有名になり、日本人の私たちも子供の頃から親しんでいる。

「メアリー・ポピンズ」が、ロンドンを舞台とした児童小説なのだということを知り、読まずにはいられなかった。

本の中に登場するメアリーポピンズは、なぜか子供たちに対する態度が冷たくいつも厳しいのだが、ジェインとマイケルはメアリーポピンズのことをすぐに大好きになる。そして、一緒に不思議な体験をしていく。読んでいるだけで、こちらまで夢の中の世界に紛れ込んだような気持ちになり、楽しくなってくる。

本の中で、ジェインとマイケルがメアリー・ポピンズと一緒に、ロンドンのデパートへクリスマスショッピングに行くお話がある。ショウウィンドウを楽しみ、広いお店の中をはしゃぎながら歩き回り、家族へのプレゼントを探す子供たち。お父さん、お母さんへのプレゼントと言いながらも、自分たちが欲しいおもちゃを選んでいるところが子供らしくて微笑ましい。お店の中のクリスマスツリーの飾りが話しかけて来たりと、ここにもファンタジーが溢れている。

そして、買い物を終えて、お店を出ようとすると、ほとんど何も着ていないような薄着の格好で女の子が回転ドアをグルグル回り、お店の中に入ってくる。その不思議な女の子は、いつも空からジェインとマイケルのことを見ていて、よく知っていると言う。その子は、プレアディス星団のマイアだったのだ。プレアディス星団とは、ギリシア神話に登場する7人姉妹からなる星のこと。日本ではすばる星と呼ばれている。そう、つまりマイアは星なのだ。クリスマスショッピングをするために、このデパートにやって来たのだ。うれしそうに6人の姉妹たちへのプレゼントを選び、ジェインもアドバイスをする。けれど、マイアはお金を持っていない。

「クリスマスでだいじなことは、ものをおくるっていうことじゃない? 私は空にいるからお金なんか持っていないわ」

不思議なことに、お店の人もお金はいらないと言いながら、一つ一つをラッピングしていく。姉妹たちへのプレゼントを手にしたマイアは満足して外に出る。そして、爪先立ちをすると、両手を上にあげて空中に飛び上がり、空へ向かって歩いて行ってしまうのであった。いつも冷静な態度を装うメアリー・ポピンズでさえも、お別れ際にお気に入りの手袋をプレゼントし、涙すら浮かべる姿を、ジェインとマイケルはちゃんと見ている。

レスタースクエアのクリスマスマーケットでは、大きな木々に星の飾りがつけられている。それはまるで、空から星が降って来ているように見える。ここでもメアリーポピンズのお話が教えてくれた温かいファンタジーが創り出されていた。

人間の世界では、ものを手に入れるためには当然お金が必要だ。けれど、こうしてロンドンのクリスマスに輝くイルミネーションやかわいいショウウィンドウを見ていると、それだけで心がポカポカになっている自分に気づく。ロンドンのクリスマス、マイアのように街のあちらこちらでファンタジーの世界が舞い降りて、温かいプレゼントを贈り合っているのかもしれない。


ご訪問いただきありがとうございました。
皆さまもどうぞ心温まるクリスマスをお過ごしください!

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