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部活とセクハラ。グロテスクな現状を変えようとする学生たち|MBH座談会 #004

 あらゆる差別の根絶を目指す学生団体Moving Beyond Hateのメンバーは、ジェンダー問題をどう考えているのか。# 004からはしばらく、人種差別から離れてジェンダーにかんする問題を取り扱っていきます。今回は部活におけるジェンダー、そしてセクハラ問題について話し合いました!(編集:ピエール🦄・たっちー🦢)

⚠️この記事ではセクハラや女性差別、LGBTQにかんする不適切な発言についての話が出てきます。具体的な体験談も紹介されますので、フラッシュバック等が懸念される方はご注意ください。⚠️

・今回登場する人
トミー長谷川🦒 Moving Beyond Hate代表
ロ🍳 デザイン担当メンバー
ハル🐟 広報担当メンバー
ナノ🐴 広報担当メンバー
たっちー🦢 編集担当メンバー
(司会:あかとんぼ🦊)

あかとんぼ🦊:まず、たっちー🦢さんの話からお願いします。

たっちー🦢
 自分は、ある男子運動部に所属していまして。選手は基本男子なんで、男は7〜8割で女性が2割ぐらいの組織の中なんですけど。最近ある女性スタッフが勇気を出してセクハラ、まあセクハラだけじゃないのですけど、男性諸君にたいして告発をしてくれて、改善していこうという動きになりました。
 そのなかで.....とはいえ部活でしかなく、MBHでやってるようにいきなり差別とはこういうもので、と説明しても理解を得られない[ように感じられた]ので、主導してどうやって改善できるかを話し合いのかたちでやってみたんですけど。自分が3年生ということもあり発言力もある立場なので。どういう話をしたかというと、根本的に差別とはなにかって話はできなかったのですけど、なるべく受けがいいというとあれですけど、聞きやすい、受け入れやすい[理解されやすい]ような形で説明しました。

たっちー🦢
 説明したなかで重要なのはとりあえず組織の中で、権力勾配があって、好き放題できる人がいて、その上下関係の中でセクハラなどが起きて、その関係の下では抑圧されている側はなかなか声を挙げれないからそれに気づいて発言力ある上のひと、選手とかが、それはダメだってお互い注意しあおうと言った。ひとまずそういう形で話し合いをやりました。
 でも、そのなかでセクハラとはなにかという話をしたとき、それはなかなか理解されなかった。やっている男性側としては、練習中に新しく入って来たスタッフの誰々がかわいい、と言うのはポジティブなことだからいいじゃないか、とか、相手にわからなければ自分たちが陰で言ってる分にはいい。相手も言ってるからいいじゃないのかとか。なかなかそれがセクハラだと認めなかった。

たっちー🦢
 女性スタッフとも話をしたのですが、あきらめと言うか、そんなのは改善できないんじゃないのかとか(まあそれは[部活内のジェンダーの非対称性から]言わせてしまっているんですけど)、やっぱり改善できないというあきらめの感の印象が強かったですね。それがちょうど一昨日とかの話でまだ現在進行中なんですけど、男子の部活動で女性スタッフがいるところに入ったことがある人は結構わかると思います。聞いててここがわかんない、とかありましたか?

ハル🐟
 僕もたっちー🦢さんと同じく[かつて]部活に入ってて、自分の場合は男子校だったので、女子のマネージャーがいたとかはないんですけど、めちゃくちゃ共感できました。
 ただ、自分もどちらかといえばそういうのに加担してきた立場なので、ちょっと、今はこうやって学んでそういうのがダメなんだとようやくわかり始めた時だと思うんですけど、過去にしてきたことの申し訳なさを今の話を聞いて改めて感じました。

たっちー🦢
 ありがとうございます。部活ってやっぱ実力主義で、それは競技の場面で実力主義が出るのはいいんですけど、それが全て、それのためならなにをやってもいいみたいな。スタッフは支えるものだから本当にもの扱いみたいな感じで偉そうにふるまったりとかあって。それが普通に見過ごされてしまっていた。
 差別をみつけたら通報しようとかの話に繋がると思うんですけど、それ[第三者介入]に似たような対策をやってみましたけど、セクハラに対する理解がなく、そもそも問題意識も、モチベーションもない。スタッフが告発してくれたことは大事にしよう、仲間として。そういった仲間意識は生まれてくるんですけど、根本的に背景にある女性への差別的な意識とか歪んだ女性観みたいなのにどこまで切り込めるのかなあと、それは今後次第ですね。

あかとんぼ🦊:ありがとうございます。そうですね。告発した女性側に味方が全然いないし、味方になろうとしても立場上なかなかなれない。で、ハル🐟さんが先ほど言っていたのは自分が加担した経験がある、そういう風に過去を振り返るのもすごく大事だと思うんですけど、男性が女性に対して立場が弱い風に扱う背景には実力主義のすごくストレスなものがあって、勝ち抜いていかなければならない、みたいな風潮が強いのかな、って思います。

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あかとんぼ🦊:ロ🍳さんに話を振りたいんですけど、よろしいでしょうか?

ロ🍳
 はーい!私は高校生の時に男子部活のサポーター・マネージャーだったので、そっち側の視点からはなしを加えたいと思います。
 もちろん高校と大学で目にしてるもの、学んできたのものは違うので、一概には言えないんですけど、私が高校生の頃は女性がサポート側に行くのが当然、当たり前という固定観念ていうか社会で「普通」とされているものに染まって生きてきたので、高校一年生の頃はそういういわゆる青春みたいなのもありだな、と思って入ったんですけど、[その部活も]似たような状況で。

ロ🍳
 大学生となった今ではそれが女性差別だな、おかしいな、って思うところがあるんです。
 これは(結構過激な)例ですけど。渡り廊下のところでみんなで体幹[トレーニング]をすることがあるんですけど、渡り廊下の中央をあけて人が通れるようにしていたんですが、中央を通る女の子のスカートを[男子部員が]下から覗いてたわけですね。「今見えた」とか。すみませんこんな生々しい話。
 それを見た時に、[なんで]そんなこと言うの、って思ったんですけど、私はその時それを上手に言葉にできなかったので、そういうことをする人にたいして睨みつけることしかできなかったんです。
 けれど、その件を勇気をもって告発できたたっちー🦢さんの話の女性スタッフ、素晴らしいなと思います。もちろん、一回きりの話し合いで改善するものではないと思うんですけど、(睨みつける段階から)話をする段階まで持っていけたのは結構大きな進歩じゃないのかと思いました。

たっちー🦢
 ありがとうございます。自分としてはもともと問題意識はあったんですけど、きっかけがないとなかなか、そんな話をするのは受け入れてもらえないほど硬直化している組織なんで。
 あとさっき、権力関係の話をしたと思うんですけど、部活には男女しかいないとされている環境なんで、実際にいるであろう性的マイノリティの人とか、なんていうか、シスジェンダーだけが部活の前提になっているという問題もやりたかったんですけど、それほど柔軟な組織じゃなかったですね。今後やっていきたいです。

あかとんぼ🦊:今のたっちー🦢さんの話を受けてなにか質問とか意見があればお願いします。

トミー長谷川🦒
 僕もたっちー🦢さんの話を聞いて、部活っていうのもありますし、僕の大学[東京大学]の場合とかはやっぱり男子校の問題もありますよね。大半の男子は中高一貫男子校から来ていて、そこではすごく男性中心的なノリがあって、それが大学にも輸入されている。大学でもそのままそのノリで生きてる。で、そのまま社会に出ていく。

トミー長谷川🦒
 僕が経験した話なんですけど、初めて会った女性の容姿についてコメントしたり。あと、本当に中学生のノリみたいなので、「あいつホモだな」って言って笑ったり。一番気持ち悪いのは、誰も反対しないということですよね。ちょっといやだなって思ってる人でも笑ってすまして、みんなきつい、笑いのノリだからなにも言わないですし、それは男子校の問題ともすごくつながるな、と思いました。

👉編集🦄による補足
 MBHのメンバーがその意味を理解しつつ批判的に用いているこの「ホモ」という表現は「レズ」と同様、基本的には侮蔑語です。ただし、当事者間の戯れあいとしてそうした用語が用いられることがあるため文脈次第という側面も持ちます。
 しかしながら、公的な場で中立的なニュアンスで話すには「ゲイ」「レズビアン/ビアン」と表現するのがよいのではないかと思いますし、このように他者のセクシュアリティを「ネタ」にすることが不適切であるのは言うまでもありません。

たっちー🦢
 本当にその通りですよね。自分高校共学だったんですけど、男同士でつるんでたら結局男子校のノリと似たような感じでした。「お前ホモか」とか平気でいったり。初めて会う女性の容姿についてその場で言ったり、本当にあるある。

ナノ🐴
 いいですか?私も中高一貫の共学の高校[出身]で、私は海外に出ていて、それがいかにひどかったかを考えらるけど、当時はなんとも思ってなくて、それが当たり前だと思っていて、誰も批判しないというか。日本の同調主義とかいろんな理由があると思うんですけど、私もその中の一人で今思うと本当に怖いなって。

ナノ🐴
 あと、相手の容姿を言葉ですぐ言うってのは男性にも限らないかなと思います。女子も普通にしますし。英語でいうとmasculinity=男らしさっていうのか、そういうのにしばられている男性ってたくさんいると思う。筋肉!みたいな。最近思うけど筋肉!とか言ってる雑誌とか、そのゴールの先にあるのが男性らしさみたいなものだったら、もっと生きにくい社会に繋がってるのかな、って思ってしまうことはあります。

あかとんぼ🦊:たしかに。女子同士の間でも見た目で異性を判断したりする人とか結構いるなって、私は女子校にいた経験から感じます。海外の方が生理の話とか、女性らしさ男性らしさ関係なく、その人の個性を大事にしてくれる感じはしますけど、実際留学してみてどうですか?

ナノ🐴
 そうですね。そう思います。たぶん長谷川🦒くんも同じだと思いますが、どこからはじめていいのか....。

 →部活におけるセクハラ、なにより日本社会におけるジェンダーやセクシュアリティの扱いにモヤモヤしている人も増えてきている昨今。問題に気付く人が増えたとはいえ、それを変えていくことは一筋縄ではいきません。
 今回はそうして「社会を変えていく」ということを考えさせられるテーマでしたが、Moving Beyond Hateのメンバーがひとつひとつを改善していくしかないという途方もない現実を前に行動することを選んでいることが伝わったのではないでしょうか。もちろん、行動することは強制できることではないですが、こんな人たちもいるんだなと思ってもらえれば(いち編集🦄として)うれしいです。
 さて、次回はケア(!)とジェンダーにまつわる問題をテーマに座談会が続きます。Z世代の大学生たちが何を考え、どう行動しているのか、ぜひご覧ください!

(画像:Pixabay

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