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一歩、深く見るために。「ようこそ映画音響の世界へ」
公 開:2019年
監 督:ミッジ・コスティン
上映時間:94分
ジャンル:ドキュメンタリー
見どころ:音の為にゴリラと仲良くなる。
![](https://assets.st-note.com/img/1655622933261-MEuwV8V5zf.png?width=800)
地面を埋めるほどの大量の兵士が、鎧のこすれる音をガッシャガッシャと鳴らしながら大行進する。
それを実際に撮影したら、すごい光景と迫力でしょう。
しかし、現実とは切ないもので、実際に大量のエキストラを雇って、リアルな鎧を着せて撮影しても、実際の音は、カシャカシャと迫力の無い音しか鳴らない、なんていうのはよくある話だったりします。
見た目の割に、なんか軽いな、と思うわけです。
じゃあ、いまいちだから、音の為にもう一回撮影できるか、というと難しいですし、撮影したからといって満足したものになるかはわかりません。
しかし、「音響音楽へようこそ」で紹介されるスタッフは、自宅や車のカギの束をもってきて、その音を録音。
ガシャガシャ鳴らして、兵士の画と併せると、あら不思議。
実際の撮影音よりもはるかにそれっぽく、迫力がでるのです。時には、道端の松ぼっくりを踏んで音にしてみたり、動物園に行って録音した鳴き声を合成して怪物の声に使ってみたり。
映画は、監督・プロデューサー以下数多くのスタッフで作られていますが、映画音響にスポットを当てて、実際に、こんな工夫があったのだ、ということをこれでもかと語ってもらうと、映画を見るときの解像度は、圧倒的に高くなります。
また、テクノロジーの進化が表現の幅を広げるということもわかる点も面白いところです。
スピーカーが一つしかなかったところから、ステレオ、5.1CHサラウンドと変わっていき、現場で使う機材も良くなっていくにしたがってできる撮影できる範囲も広がっていく。
物事には歴史があるわけですが、映画の歴史が、音響という観点から、しかも、実際の有名作品を、実際に携わった人たちに語らせるという、映画好きにもたまらない構成の作品となっています。
つい意識からはずれてしまいがちな音声ですが、何が欠けても成り立たない複合芸術としての映画の特徴をよく表しています。
映画のみならず、普段何気なく日常で聞く音も、映画に使われているのかもしれない、と思うだけで、聞こえる音は色づいてくるから不思議です。
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